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現場から生まれるアイデアを大切に 人に寄り添い課題と向き合う! 車いすを通じて社会を見つめ創る未来
(写真右)株式会社カワムラサイクル 代表取締役社長 真鍋克則氏 (写真左)CS営業グループマーケティングSEC課長 轟木有希氏
車いすと聞いて、どのような情景を思い浮かべますか?超高齢化社会となった日本において、「車いすを見かける機会が増えた」と感じる方も多いでしょう。商業施設や公共施設等には必ず置かれているもの、という認識をお持ちかもしれません。もちろん、高齢者だけのものではありませんが、利用者としての存在感は圧倒的ですね。関西を代表する街のひとつ神戸に、車いす専門メーカーがあるのをご存知でしょうか?ある出来事をきっかけに大きなかじ取りをされたことで生まれたパイオニア企業です。その「今」と「これから」について、代表取締役社長 真鍋克則氏とCS営業グループマーケティングSEC課長 轟木有希氏にお話を伺いました。
事業のあゆみについてお聞かせください
カワムラサイクルの前身は、神戸市須磨区にあった創業80年の老舗高級自転車メーカーです。自転車業界が不況に陥っていた1995年、追い打ちをかけるように、阪神淡路大震災で壊滅的な被害を受けました。そんな中、当時の売上の10%にも満たない車いすに将来性を見出した村山民生が、車いす部門を継承する形で独立し創業者となりました。10名弱のメンバーによる再スタートでした。当時、他の車いすメーカーは、家族経営が中心で、地域も中部地方に偏っていたこともあり、異業種からの参入、しかも中部以外の地域はかなり珍しいことでした。現在は車いすの素材として多く採用されているアルミですが、アルミ製車いすを作るのが決して主流でなかった時代に、自転車メーカーとして培った技術を活かしアルミ製フレームを使いました。技術者が誇りをもって臨んだ大きな挑戦で、かなり画期的なことだったと思います。
基本的に鉄素材のフレームが多かったので、素材をアルミにすることで、30%以上の軽量化ができました。車いすはどちらかというと医療機器として認知されていたので、持ち運びや車への積み込みなどを前提とした、軽量化需要を拾う文化がなかったわけです。当時、私たちが「重さ」という課題の改良に着眼したことも、当時は発想として「新しかった」と思っています。

オリジナル商品開発にあたり大切にしていることは?
商品開発に対する姿勢、としてまずお伝えするとしたら、座り心地にも注目し、標準仕様でクッションをつけた商品展開は、業界初だったということです。当初は、医療用、つまり病院での移動等に使うイメージから、掃除などお手入れが楽なデザインが主流でした。もともと車いすは、日本国内での小規模生産が中心でしたが、私たちは早い段階から、中国に会社を作って量産化に乗り出しました。さらに追い風になったのは、2000年の介護保険制度(※1)のスタート。これを機に、私たちがこの市場にうまく入っていくことができたのです。具体的に言うと、新たな制度によって、車いすのレンタルが可能となったこと。それ以前は、車いすは購入するものだったので、そう簡単に買い替え出来ないのが実情でした。それがレンタル可能となったため、より便利な機能を備えた新商品が発売されたら、新たな車いすに切り替えやすくなりました。つまり、車いすとの関わり方の仕組み自体が変わった、ということです。介護保険制度によって、福祉用具が市場に伝播しやすくなり、市場規模が急拡大しました。
(※1)高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして、介護保険が創設されました。
1997年:介護保険法成立/2000年:介護保険法施行
こうした段階を経て、今では車いすという概念で特別視するのではなく、「一般用品として使いやすいのかどうか」という観点で見るようにしています。数値的データからだけでは見えない「日常感覚」という視点が必要だとわかったからです。例えば、介助者が持つ車いすの押し手部分は、スーパーの買い物カートの高さを参考に設計しています。普段から使い慣れているものの高さのほうが、感覚的に馴染みがあるのでは?という発想を設計に落とし込みました。また、ブレーキは、車いすの利用者ご自身が操作する場合もあれば、介助者が操作する場合もあります。どなたが操作するかで、握る角度も変わります。そこで、角度が変わっても握りやすいブレーキを設計するために参考にしたのは、工具のドライバーなんです。どんな角度で握っても、手にフィットするように設計されているのがポイントです。
営業的視点で重視していることは?
これまで蓄積してきた知見や理論によるマーケティング分析も、決して万能ではありません。そうした理論も、どこかで矛盾が生じてくるものですし、実際にはお客様が求めていないケースもあります。利用者の思いを汲み取り、そこから本当に必要な快適さにたどり着くと、納得感や安心感が違うんだと思います。ただ難しいのは、車いすを巡っては、関わる登場人物がすごく多いという点です。ご利用者であるご本人に「どういったものが良いですか?」と質問しても、かなりご高齢だと、なかなか的確にご自身のお話を伝えにくいわけです。一方で家族の方は座り心地はわからない。また、販売店様や取扱店様の視点としては、商品として扱いやすいものを選択される、というそれぞれの事情があります。つまり、ニーズが散見してしまうところが特徴でもあるのです。だからこそ営業メンバーも、客観的な視点ということで観察を重視しています。営業メンバー自ら、「こういう問題があるんじゃないか?」という仮説のもとで、直接関係者の方々とコミュニケーションしながら、「ここが妥協点だ」と思われるところを探っていきます。あらゆる当事者のところに出かけていって、観察とヒアリングを繰りかえし、そこで得た情報が全ての土台となっています。

社会課題解決の視点から見た車いすの可能性は?
私たちが、社会課題解決のため何ができるのか?と考える時、車いすの機能自体に注目するだけでは、解決できないと捉えています。ご承知の通り、介護業界の人手不足が言われて久しく、多様な働き方の従業員をはじめ、多様な文化的背景の人材が介護現場を支えています。時間に制約のあるパ―トタイマーや、海外から来日する外国出身の人材も多くなりました。これは、体系的な理論と言いますか、いわゆるアカデミックな領域まではカバーしきれない状態で現場対応する方が増えてきた、ということです。そこで必要なのは、シーティング(※2)のような専門知識がなくても扱える車いすでしょう。より簡単に扱える車いすがあれば、ふさわしい人材の幅も広がり、介護業界が抱える人材不足という課題を解決できる可能性が広がるからです。これからますます「対応しやすい介護」といった観点で、社会全体を助けるツールの存在が重要となります。介護現場に大きな影響をもたらすカギとも言えるでしょう。「こういう人材でないとダメです」という条件面、制約部分が強調されすぎると、採用の難しさにつながってしまいます。私たちが開発した商品について、「この車いすならば、専門知識がなくても正しく対応できます」と発信できれば、まさに社会課題解決手段のひとつとなるはずです。
(※2) シーティング
車いすを利用する方の個々の心身や生活環境等の事情を考慮し、最適な状態に調整する専門技術のこと。
これから何をどのように変えていきたい?
最近の新商品で「モダンリッチスタイル」という商品に関するお話からお伝えしておきます。このコンセプトは、介護の現場と、レンタル先の利用者の方々のお困り事を解決するというところです。リクライニング機能付きの車椅子とはこういうものだ!という思い込みを捨て、「でもそれ、本当は不便ですよね。じゃあ解決しましょう」という視点で作った商品です。調べて分かったのは、「こういうものだ」と捉えられ、意外と問題意識がなかったということ。わかりやすい例で説明すると、美容院や歯科医院でリクライニングしたときに、「もう少し上にお願いします」と言われますよね?あれは、背中の位置がズレているんです。実は、車いすもリクライニング機能のあるものは、同じ現象が生じます。車いすの場合、本人がそう簡単には動けないので、ズレたら介護者が調整するか、本人が気付いてない場合はズレた状態で過ごすことに。長時間の無理な姿勢は、体調にも悪影響をもたらします。私たちはこれを無視せず解決し、新商品として世に送り出しました。
このように、まだまだ発掘しきれていない課題も数多くあるはずです。車いすでの不便や不具合といった困りごとを1つずつ対応しながら、利用者本人だけでなく、介護する側の課題も一緒に解決して、だれもが快適な毎日を送ることができる社会づくりに貢献できればと思っています。

おわりに
オフィシャルサイトには、KAWAMURA PRIDEとして、これまでの歩みについて、このように表現されています。「(一部抜粋)車いすの最後発メーカーして、使用されるお客様が、何に困っておられるかを徹底的に考え、その最初の答えが軽量化でした」と。そうしてスタートした歴史は、時代が変わり、例え車いすへのニーズが変化していくとしても、お客様の課題に寄り添って、その都度最適な解決策に向けてひたむきに努力されるのでしょう。現場の感覚を大切にする姿勢、それがまさに、KAWAMURA PRIDEという誇りなのだと確信しました。
(株式会社フジプラス)
まとめ
■阪神淡路大震災を機に神戸の地で始まった車いすメーカーとしての使命がある。
■関係者それぞれの課題に真摯に向き合ってこそ、真の社会課題解決となる。
■これまでの「当たり前」を見直し、現場を理解することでイノベーションを実現。
カワムラサイクルについては、こちらからご覧いただけます。
https://www.kawamura-cycle.co.jp/
※所属及び記事内容は、2026年1月当時のものです。
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