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「作って捨てる」から「使い続ける」へ 資源を循環させるこれからのビジネスモデル「サーキュラーエコノミー」とは?
リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ
現代の資本主義経済は、18世紀後半のイギリスで起きた産業革命をきっかけにはじまったと言われています。新しい技術を発明し、それを取り入れ、世の中や人が便利なモノで潤う経済です。しかしそれは、資源を大量に消費し、利用し、そして廃棄される一方通行のリニアエコノミー(直線型経済)になってしまっております。これは企業の経営においては、モノを売り切り、コストと利益を回収するビジネスモデルを生みましたが、あくまで供給者側の視点で成り立っているモデルであり、資源における活用に立ち返ってみると実に非効率な仕組みなのです。
その結果、非効率に資源を使った「大量生産・大量消費・大量廃棄」の経済活動はさまざまな環境問題や社会問題を生み出すことになり、もはやこのままでは解決できないことが見えてきました。そこでいま注目されているのが、サーキュラーエコノミー(循環型経済)です(図1)。サーキュラーエコノミーは、資源の活用において循環を図り、廃棄物を出さない仕組みを実現することが主軸となっております。そのためにもリサイクルやアップサイクルを推進し、廃棄物を資源として再利用することで、資源の廃棄ゼロを目指します。

サーキュラーエコノミーは、国際的な推進団体であるエレン・マッカーサー財団が「サーキュラーエコノミーの3原則」を提唱しております(図2)。

①Regenerate natural systems(自然のシステムを再生する):
有限な資源ストックを制御し、再生可能な自然フローの中で収支を合わせることにより、自然資本を保存・増加させる。そのためには、自然への負荷(マイナス)を減らすのではなく、自然にとってプラスになる仕組みをつくる。
②Keep products and materials in use(製品と原材料を捨てずに使い続ける):
技術面、生物面の両方において製品や部品、素材を常に最大限に利用可能な範囲で循環させることで資源からの生産を最適化する。例えば金属やプラスチックは地下資源を採掘して製品化されるが、環境を破壊しないようにリユース、リペア、リプロダクト、リサイクルなどを通じて経済の中で何度も繰り返し使い続ける必要がある。
③Design out waste and pollution(廃棄と汚染を出さない設計):
負の外部性を明らかにし、排除する設計にすることによってシステムの効率性を高める。それは、素材の選択から、製品の使用後、誰と協働するか、製品を標準化できるか、それこそ使用済みの製品に対してどのような規制があるかなど、システム全体をデザインし、初期段階から考えておく。
またコンサルティング企業のアクセンチュア・ストラテジーが、次の5つのビジネスモデルを提言しております。
①循環型サプライ:
例えば生分解性のある100%再生可能な原材料を使用するなど、製品の設計・製造段階から回収・再利用しやすい素材を選ぶ。
②シェアリング・プラットフォーム:
デジタル技術を活用し、モノや資産の共同利用を促進し稼働率を最大化する取り組み。
③製品のサービス提供:
必要なときだけモノを使い、使った分の利用料を支払えば、モノを所有する必要がなくなる。
④製品寿命の延長:
デザイン、修理、部品の調整、アップグレード、二次使用での再販など、長期にわたって利用できるようにして、継続的な価値を創出すること。
⑤回収とリサイクル:
製品の寿命が切れた後のことを考慮し、回収後には速やかに原材料に戻し、製造サイクルに戻す。
ちなみに、廃棄物問題への対応として掲げられた3R(Reduce・Reuse・Recycle)は廃棄物の抑制が前提ですが、サーキュラーエコノミーはあくまで廃棄物や汚染を出さないこと前提であり、似ているようですが、根本的には考え方が異なります。
製造業が取り組むサーキュラーエコノミー事例
実際の事例を見ていきましょう。例えば、アディダスが作るランニングシューズ「FUTURECRAFT.LOOP」は、100%リサイクル可能なものとなっていて、返却された製品は分解され、新しいランニングシューズに生まれ変わるといいます。従来のシューズには接着剤による貼り付けを必要としましたが、接着剤を使用しないことで再生できる設計となっております。
他にも、イケアが手掛けるのはサーキュラーデザインです。これはデザインをシンプルにすることで、従来のソファ製品にあったプロダクションパーツ120個を13個に減らしています。パーツが減ることでサプライチェーンの無駄を減らし、組立も解体も簡単になります。ネジやクギを一切使わない接合方法にも取り組んでいるといいます。
また、弊社に身近な「紙」の事例を挙げると、エプソンが提供する乾式オフィス製紙機「PaperLab」があります。本来、製紙に使われる木材パルプを一切使わず、使用後のコピー用紙などを再生し資源を完全にサイクルさせます。一般的な用紙は水を大量に使って製紙されますが、その1%程度の水しか使用しないそうです。
仕組みで課題解決するサーキュラーエコノミー事例
実際のモノを製造する製造業だけにとどまらず、仕組みで解決するようなサーキュラーエコノミー事例もあります。例えば、テラサイクル社が立ち上げたショッピングプラットフォーム「Loop」には、"捨てるという概念を捨てよう"というミッションがあります。従来使い捨てにされていた食器や容器などの一般消費財を繰り返し利用可能な耐久性の高い素材に変え、使用後は消費者の自宅から容器を回収し、洗浄、補充したうえでリユースする仕組みになっております。これにより賛同するメーカーは各ブランドのパッケージを優れたデザインと機能を備えたものへと進化させることができ、短期的には高価になるものの、長期的にみるとコスト削減が期待できます。使い終わった容器をLoop専用のバッグに入れて回収してもらうことで、ライフスタイルを変えることなくより環境にやさしいサステナブルな消費を実現できます。
他にも、ストックホルムのショッピングモール「ReTura」は、リサイクル品やアップサイクル品を取り扱う店舗だけで構成されております。衣類、家具、家電製品、玩具などの店舗があり、買い物だけでなく不要になったものをモール内に戻すことができ、それらの一部はリサイクルされて新たな商品に生まれ変わり再びモールで販売されるといいます。
ここまでいくつか事例を挙げながらサーキュラーエコノミーについて考えてきましたが、我々のような「紙」を多く取り扱う企業はどのようにすべきか。何よりもまずは「無駄な紙は使わない」という覚悟だと考えます。そのためには既成概念を大きく変える必要があります。まだまだバラマキ型販促が存在するなか、必要な情報を必要としている人に届けるパーソナライズメディアに置き換えることで、最低限の使用量に絞ることができます。近い将来「内容間違いによる大量再生産」なども無くなり、改めて本来のビジネス目的に向けた議論が始められるのではないでしょうか。
(株式会社フジプラス)
まとめ
■サーキュラーエコノミーは、リサイクルやアップサイクルで資源の循環を図り、廃棄物を出さないビジネスモデルである。
■製造業では、元の製品を完全に分解して再生できたり、パーツを減らしてシンプルにしたり、廃棄せず循環させる前提で製品開発が行なわれている。
■確実に回収する仕組みがあれば、環境にやさしいサステナブルな消費を実現できる。
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