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イノベーション NEW2022年9月 7日

遺伝子を切り口に「予防」意識改革 ゲノム解析というソリューション提供で日本の健康課題を解決に導く!

 遺伝子という言葉は、頻繁に耳にするものの、一般感覚からすると「説明できないけれど会話の中には使いがち」という位置付けでしょうか。それがゲノム解析ともなると、「なんだか難しそう」「ちょっと怖い気がする」等、事実とは別にイメージ先行で印象も様々です。そんな中、このゲノム解析が、身近なところで注目され始めているのをご存知ですか。今回は、株式会社Zene 取締役 有地正太氏に、現在の日本が抱える健康課題との向き合い方、BtoBビジネスモデルでの展開に至った背景を含め、ゲノム解析活用の可能性について語っていただきました。

株式会社Zene 取締役 有地正太 氏

ヤフーヘルスケアにて遺伝子検査サービスに従事し、Health DataLabビジネス開発や研究開発をリード。「ガイアの夜明け」等メディアの取り上げ多数。

高精度なゲノム解析による疾病リスク情報の提供を手掛ける

 アメリカでは既に一般化している一方、日本では普及には程遠いゲノム解析(遺伝子解析サービス)。Zeneは、ゲノム解析技術で疾病リスクを見える化し、日本の健康課題を解決すべく設立されたスタートアップ。ヤフーのデジタルヘルス分野で遺伝子解析サービスに携わっていたメンバーを中心とした、真のプロフェッショナルで構成されています。「個々人のDNA情報を読み取り情報を解析することで、それぞれ体質や、どんな病気になりやすいかの傾向がわかるようになりました。最終的には、日本の健康課題解決と医療費削減を目指してサービス提供しています」と有地氏。
 誤解のないようお伝えしておくと、例えば何かの病気になりやすいとの結果が出ても、生活習慣を見直し、リスクを把握し正しく対処すれば防げることも多いのです。ゲノム解析でわかるのは、絶対的に決まっている将来ではなく、将来のリスクにどう備えるかの対処法。病気のなりやすさも、「遺伝子要因」と日々の生活による「環境要因」が、複雑に影響を及ぼし合って変化するそうです。
 「つまりこれは、知り得たリスクの高さから個々人の生活習慣で特に気を付けるべきは何なのか、課題を抽出するプロダクトです。どこにどうアプローチすれば、社会的意義を持たせて日本の社会構造の中で遺伝子検査ビジネスを発展させることができるのか?行きついた答えは、予防に対し最も価値提供できる健康保険組合でした」。しかも、そこには技術的なこだわりも欠かせません。例えば、多因子疾患(様々な要因が複雑に絡み合って発生する疾患)の一つである2型糖尿病のリスク予測はかなり困難。1つ2つ遺伝子を見ても予想できないため、最新AI技術を使った最も高精度な方法を取り入れたそうです。ほかならぬ受益者に対する価値ある情報提供が、新たなビジネスモデルの軸になったということです。

健康保険組合が抱える課題その解決に向けた切り札として

 日本国内のヘルスケア事業は、アメリカに比べ伸びにくい環境にあります。主な原因は、医療保険制度の違い。国民皆保険制度で医療福祉が充実していて自己負担額も少ないため、「病気になったら病院に行けばいい」との考え方が一般的なのです。 厚生労働省の調査でも、予防意識が希薄な日本人像が明らかに。とはいえ、2030年まで医療費が膨張し続ける試算もある中、日本の財政を圧迫する状態を解決するには、病気にならない仕組みの構築が喫緊の課題なのです。
 毎年の健康診断で数値が悪くても、何度か続くと慣れて気にしなくなる方も少なくありません。例えばメタボ検診と呼ばれる特定健康診査の対象項目で問題があった方は、特定保健指導プログラムで生活改善施策を行う流れですが、指導を受ける方は全体の20%程度と言われています。血圧やBMIが少し高め等、現時点では病気とは言えない方が大半で、リスクを自分事としてとらえにくいわけです。「結果を見ても生活改善の動機につながらない状況で、将来を予測できるゲノムの強みを活用していただけたら、という思いです。遠い将来の『もしかしたら』という漠然とした可能性の中から、自分にとって最もハイリスクなところを知ることができるのです。具体的なリスクを知ったら、日々気を付けようと思いますよね。だからこそ、課題に直面しながら具体策が見つからず困っている健康保険組合に対して、ゲノム情報という今までにないソリューションを提供することで、日本の医療費の最適化に貢献していきたいと考えています」との説明に納得しました。

「手ざわり感」も大切なポイント紙で届くパーソナル診断情報の意味

 そもそも、高額でも自費でゲノム解析の検査を受けたいと思うのは、健康意識が高い方だけで、全体から見ると少数派です。ただし、日本の健康課題と向き合うには、健康への関心が低い多数派への訴求が重要で、ここで四苦八苦してきたそうです。「だからこそ、検査結果レポートは、紙への印刷という形にこだわります。当然ウェブページも用意しますが、ログインして結果を見るのは健康意識が高い方だけ。郵送で手元に届き開くだけで結果がわかることが必要なのです。『手ざわり感』も大事。無関心層にも、ちゃんと結果を見ていただいてこそですので」。検査結果は、統計学的に正しい情報として、特定疾患のなりやすさも具体的に示されてレポートとして手元に届くのですが、デザイン面の責任者によると「皆さんにとってハードルが高いゲノム情報を、どうわかりやすく伝えるかが常に課題。曖昧に優しく言い過ぎると、危機感につながらず対応への動きが鈍くなるので、多少は背中を押す表現で正しく伝えたいですね」ということだそうです。
 健康保険組合サイドからは、「郵送してくれるのか?」「結果を見てもらう仕組みをどう作るのか?」との確認が多い中、印刷されて手元に届くレポートは決め手になるようです。特に、「遺伝子情報の取り扱いは大丈夫?」「健康保険組合として組合員個人の情報を受け取らないといけない?」等、管理に関する確認が多いようです。「原則、ゲノム情報は社外に出さないポリシーなので、情報が目に触れる可能性があるとすれば、協力先のゲノム解析事業者と印刷事業者の2か所のみ。前者には、唾液からのDNA抽出、後者には、個々人の住所とリスクに関する結果を含む印刷レポートをお願いしていることを伝えます。これらは現状では外に出さざるを得ず、きちんとした体制を構築できている協力会社であると説明をしています」。と強調されました。情報管理に関する懸念が一番の壁ですが、「協力会社のセキュリティは大丈夫なのか?」という声に対して、事業所の監査を行い、情報が一切外に出ない環境である確認もしていることを伝え、納得を得ているそうです。

安全安心のセキュリティを大前提としてゲノムを当たり前のように使える社会へ

 未来展望に関しては、まず乳がんを例に語っていただきました。乳がんは発症ピークが30代後半と、がんの中では珍しく早いのが特徴です。将来的には、年齢と実際の遺伝的リスクを掛け合わせ、5年発症率を出すのが目標とのこと。かかりやすいピーク年齢がある病気には、「この年齢が最も発症率が高い」との精緻情報が重要なのです。また、「遺伝子情報自体は、一生変わりません。何歳で検査しても活かせるのがメリットです。働く世代の中で20 ~ 40代は疾患リスクが低めですが、未来投資として検査を受ける世代、50代は、病気リスクが高まるタイミングなので受けるべき世代、といった事実も発信しなくてはと思っています」とも。
 あらゆるものが遺伝子の影響を受けているだけに、健康課題解決に際し、どの疾患にフォーカスすべきか、さらに解析結果をどう発信すればリスクに対する行動変容につながるかが次なる課題です。大学との共同研究も現在2つの大学で継続中。神奈川県立福祉大学とは、検査を受けた方のゲノム情報を活用し(本人同意の上)、AI予測精度のアップを目指すもの、東京大学とは、日本人の祖先と現代人でのゲノム構成成分解析という健康施策とは別分野での研究を行っています。AIもそうですが、ITの技術が発展すると、様々な分野への応用が可能になります。こうした世の中の変化も追い風となり、ゲノムをよりよく普及できる社会の素地が整ってきたのも事実です。
 「ゲノムを、当たり前のように使える社会にしたいですね。もちろん、安全安心、セキュリティ全て込みの話です。アレルギーの出やすい食品や不足しがちな栄養素も遺伝的影響があると言われているので、食品アレルギー情報のパーソナライズもやっていきたい。本人の体質に関するものは、あまねく遺伝子が影響を及ぼしています。ゲノム情報は、人生に様々な影響を及ぼすものの、十分に活用されておらず、まだ伸びしろがあります。明らかになればプラスになることも多いので、『ゲノムをより身近に、ゲノムを当たり前の世界に』とのビジョンを掲げ、より良く使われる社会にしたいと思っています」と語る有地氏の明るい表情が、未来の可能性を象徴しているかのようでした。

(株式会社フジプラス)

まとめ

■ 高精度なゲノム解析で、疾病リスクを知ることができるプロダクトを提供。
■ 個人向け分析レポートで健康意識を高め、日本の健康課題を解決に導く。
■ 将来的には、セキュリティを前提にゲノムを当たり前に使える社会が理想。

フジプラスは、パーソナライズされた情報を発信するパートナーとして、検査結果レポート印刷・発送をサポートしています。

株式会社Zeneについては、こちらからご覧いただけます。
https://www.zene.co.jp/

※所属及び記事内容は、2022年9月当時のものです。

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