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イノベーション NEW2023年10月 4日

地域密着にこだわり続ける意味 「しごとぎや」としての信頼を糧に 「人」とのつながりから広がる未来

株式会社たまゆら 常務執行役員 兼
株式会社ショップたまゆら 代表取締役社長 神口敬之氏

 仕事をする際に、いわゆるユニフォームを着用する職種も様々ですね。そのユニフォームを中心に「しごとぎや たまゆら」というコンセプトで、地域密着にこだわり丁寧かつ細やかな視点でビジネス展開を行い、地域から着実に信頼を得ながら現在の地位を築き上げた企業があります。今回は、大阪・枚方の地に本社を構える、株式会社たまゆら常務執行役員(兼 株式会社ショップたまゆら 代表取締役社長)神口敬之氏を訪ねました。印象的な社名の由来から、広くアイデアを出し挑み続ける背景、地域密着の根底にある考え方まで、じっくり語っていただきました。

- 創業から現在までの歩みをお聞かせください。

 先代の岡本好明(現会長)が、大阪・枚方市で「衣料品店たまゆら」を創業したのは1965年ですので、もう58年目です。小さな衣料品店としてスタートしましたが、枚方の工業団地ができて企業からの問い合わせが増えました。作業に欠かせない軍手は、和歌山にある島精機の最先端の編み機を借りて製造販売を始め、リクエストに応じて安全靴や作業着等の販売へと広げ、法人営業の基礎となりました。社名の通り、お客様とのつながりを大切にして良い音色を奏でたい思いから、ユニフォーム・仕事着に特化し現在に至ります。一般アパレル商品との違いは、「今年限りのデザイン」でなく翌年も販売できること。企業独自のユニフォームなら、同じものを継続して提供することが必要なので、市場は大きくないですが安定性が強みですね。店舗としては、2019年9月に、プロ仕様のWorkerスペックにファッション性をプラスしたアパレルセレクトショップ「Tamayura Athle」のブランド展開を始め、今年4年目です。新たな分野への挑戦にあたって、商品としての基準を明確にしました。培ってきたノウハウを活かし、作るにせよ仕入れるにせよ、何かしら機能性特化の素材や耐久性、さらに安価であることは必須だと肝に銘じて挑み続けています。

- 販路開拓や販促について取り組みの要点とは?

 現在、販売チャネルとして、①個人客が中心の店舗、②担当者が付く法人営業、③オンラインを通じたEC の3種類があります。①は「待ち」のスタイルなので、来店者層に合わせた品揃えが必要。例えば「Tamayura Athle」のショッピングピングモール出店で、新たな層へのアピールも実践中です。個人の財布から出す①に対し②は企業の経費なので、当然販売方法から違います。企業のユニフォームの場合、営業担当がヒアリングして、例えば作業効率を上げるストレッチ性や快適性を優先する場合、意向に沿った素材も含めた提案で信頼を得ることが重要です。③は、本来の地域密着展開の中で、コロナ禍を機に一つの可能性として始めたもの。まだまだこれからですが、情報を届ける新たな方法としての動画配信と相性も良いので、期待大ですね。
 また、リアルイベントの代わりにできることは?と考えて、社員自ら出演しYouTubeで情報発信したり、「たまいろLIVE」という商品紹介のライブ配信番組を始めたり、お客様との接点づくりで試行錯誤し発信ツールとして活用しました。それが今や動画配信からリンクでECサイトに誘導し、販売への「入り口」に成長。商品特徴など説明動画が中心なので、店舗のモニターで流していると、お客様から「この商品ないの?」と声をかけられることもあります。「伝える」という話で言うと、お客様のためにも、カタログで細かく伝えるべき情報と、動画でわかりやすく伝えるべき情報の使い分けが求められる時代がきたなと実感しています。


「Tamayura Athle」ショップ

- 地域貢献がもたらすビジネスへの影響とは?

 地域あってこそ!の思いは、社員にも脈々と引き継がれています。ドミナント化(特定地域への戦略的・集中的出店)を意識していたわけではありませんが、結果的に枚方近辺では、車で少し走れば「ここにもたまゆらが」という感覚です。地域に根差してきたので、何かしら地域貢献を!と、できることから始めています。例えば、コロナ禍でのマスク不足をうけ地元自治体へのマスク寄付、枚方の病院で深刻だった手術着不足には、自社の縫製工場にて緊急対応をしました。
 また、枚方陸上競技場のネーミングライツ(命名権)については、社員のご家族(特にお子さん)が陸上競技に参加した時に、照れくさいながらもうれしそうなのです。うちもそうでした。たまゆらという名前を聞く機会が増え、企業名として知名度が上がると、社員もご家族も誇りに思えますから。地域貢献の先にあるのは、事業的には当然知名度アップですが、実はそれ以上にインナーブランディングの効果が大きかったですね。ご縁があって積み上げてきたものを地域に認めていただいたからこそのネーミングライツパートナーです。企業として信頼された、という評価の部分が社員とご家族の心に響いたわけですが、それを思うと営業活動にも自信が出る、という良い連鎖があるのも事実です。

- オリジナル商品開発やSDGs等に積極的な理由は?

 オリジナル商品開発において、どれだけSDGsに貢献できているかと言われたら、まだまだだと思っています。ただ、セレクトショップ「Tamayura Athle」の展開を考えた際に、オリジナル商品として「GushForce」「SUPPACT」というブランドがあるので、せっかくならエコ素材を使い、機能性も重視した低価格のスーツをつくろう!と取り組んだのは好事例となりました。
 ビジネス的には、どうすればCSRからCSV経営に変えていけるか、も課題です。CO2削減を反映する素材で商品価格が高いことにご理解いただけるお客様はまだ多くありません。だからこそ、良い意味でお客様を巻き込む方法を勧めています。「環境保全活動としてヨシ刈りに参加しませんか?琵琶湖や淀川のヨシを刈ると、トラック一台がこの距離移動で排出すCO2分を削減できるというストーリーができますよ(※1つの例えです)」といった提案です。ユニフォーム全体をヨシ由来の素材にするのはコスト的に難しくても、一部なら現実的だと思っていただけます。
 2022年に開催したサステナブル展を期に、中小企業様からの問合せが増えました。エコ対応ユニフォームを作るにはどうすればいい?エコ商品を紹介してほしい等。営業対応時に、お客様の希望の本質をヒアリングで明らかにし、希望に合うものにしていくわけですが、こちらから参考情報として、ヨシ素材、海洋プラスティック由来のボタン、反毛(はんもう)等の選択肢も伝えるようにしています。また、お客様(特に社員の方々)を巻き込んでできることを考えるようにしていて、ここは儲けより、人と人を結ぶ信頼構築優先ですね。ちなみに、反毛について補足しておくと、古くなったユニフォームを回収して糸にして軍手に編み上げて自分たちが作業時に使う、といったことも可能です。こうして、お客様からの相談を受け事情を理解した上で、SDGsへの取り組みのサポートも行っています。ちなみに、自社としては、反毛を圧縮して板状にしてお店の什器の棚板として活用しています。

※CSV経営
企業が社会のニーズや問題に目を向け課題に取り組むことで社会的価値と経済的価値をともに創造しようというアプローチの経営方法のこと。
※反毛(はんもう)
布をもう一度ワタ状態に戻し、糸の原料を作る技術のこと。
 


環境保全のため刈り取ったヨシを一部ユニフォームの材料にも活用する活動

- 目指す方向性、未来展望等についてお聞かせください。

 2023年9月に、UNIFORM EXPO2023として、第3回たまゆらフェスタが開催されます(取材時点では開催前)。当イベントは、ある意味「現在のたまゆらの集大成」であり「これから目指す方向性」を示すもの。メイン会場には作業服メーカー約60社が集結するため、トレンドがひと目でわかります。別フロアにはSDGsに特化した展示スペースも設けました。また、得意先の企業様にも出展いただいているので、ビジネスマッチングの場にもなるんです。お客様がお客様を呼ぶ、というこれもまた人のつながりです。各地域の団体ブースもあるんですが、一企業のイベントに、自治体や経済団体といった各種団体を応援していただいけるのは、ありがたい限りです。
 時代が変わり「売り方」のバリエーションが増えても、お客様との接点を大切にするという軸だけは変わりません。根本的な考え方は変えず、時代に合った方法を取り入れ、選択していくのみです。対面での営業手法もいずれは変わっていくはずなので、現在はBtoC主体のECをBtoBにも広げて、きっちりご満足いただける方法を考えていきたいですね。例えばオンラインでコンシェルジュ対応や、即座の見積もりなど、他分野では進んでいても、ユニフォーム業界でまだ追いついていないことで、まだまだ模索しながら挑戦すべきことも多いと思ってます。

おわりに

 本社には店舗やショールームも併設され、「しごとぎや」としての誇りあふれるスペースという印象でした。インタビュー後に訪問し、商品のこだわりとして伺った内容もすっと理解できた気がします。「しごとぎ」を求めるお客様の視点でセレクトされた季節商品やオリジナル商品の数々を見て、創業時から受け継がれた、人と人とのつながりを大切にする姿勢を改めて感じました。

(株式会社フジプラス)

まとめ

■地域貢献やSDGsを実践することで、インナーブランディングへの効果も大きい。
■ユニフォームという特化したアパレル分野での可能性はまだまだ広がっていく。
■時代が変わっても基本姿勢は変えず、手法を工夫。「人」を起点に考えることが大切。

株式会社たまゆらについての詳細は、こちらでご覧いただけます。
https://www.tamayura.co.jp/

※所属及び記事内容は、2023年10月当時のものです。

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