Idea4U+

お客様の「感動」を「つくる」ことを目的とした、
旬の情報満載の販促・マーケティング系コンテンツです。

Idea4U コンテンツ

イノベーション NEW2022年7月 6日

新規事業開発のフレームワーク 無駄をなくし短期間で新規事業開発を成功に導くためのリーンスタートアップとは

新規事業開発とリーンスタートアップ

 社会環境が急激に変革していくなか、既存ビジネスだけでは行く先が不透明になっている企業も多いのではないでしょうか。そんななか、新たな収益源を確保するために新規事業に投資するケースもあるかと思います。また、デジタルが急速に進展するため、その波に乗り遅れないようにと、DX(デジタルトランスフォーメーション)に着手する企業も増えているのを耳にします。そのDXの先に、ビジネスモデルの変革、イノベーションの創出、新規事業開発といったステップを見据えて取り組まれているケースも多いようです。
 新規事業を開発するにあたって、よく取り入れられる手法にリーンスタートアップというものがあります。リーンスタートアップとは、コストを抑えて最低限の機能を持ったMVP(= Minimum Viable Product)を短期間でつくり、顧客の反応を的確に捉えて、顧客がより満足できる製品・サービスを開発していくマネジメント手法のことです。大きくは、構築→計測→学習といったプロセスで行なわれます。
 まずは、MVPすなわち製品やサービスを立案する「構築」です。ここでは市場の課題やターゲット顧客のニーズについて、アイデアを練り仮説を立てるところからはじまります。そして、スピード勝負でもあり、極力コストをかけることなく開発していきます。その次に、仮説に基づき顧客の反応を検証する「計測」です。ターゲット層のアーリーアダプターにMVPを試してもらい、実際にどれくらいのニーズがあるか、どこまで成長しそうか、どこで衰退するかなど、様々な検証を行ないます。よく見落とされるのは、このMVPが「本当に長く必要とされるかどうか」です。ここを見落とすと継続性が全く無かったり、仮にスタートしても環境変化で必要性が持続しない場合があるからです。そして計測フェーズによって得られた検証結果をMVPに反映する「学習」です。反応が悪かった機能を改善したり、反応が良かった機能を拡大したり、MVPを本リリースに向けてブラッシュアップしていきます。ここでの注意としては、計測での「声を聞きすぎていないかどうか」が挙げられます。大事なことは、揺るぎない戦略ありきであることを忘れないでください。
 ちなみに弊社でもこのリーンスタートアップ(当時はそれほどこのリーンスタートアップを意識はしていませんでしたが・・・)で始めた新規事業があり、それは2016年5月にローンチした「DMステーション」(https://fujiplus.jp/dm/)です。当時は単判のDMハガキだけに特化して、従来ビジネスとは少し違うターゲット層を想定して、非常に低予算でWebサイトを構築してスタートさせました。そこから数年かけて運営しながらブラッシュアップを行ない、今では弊社のDMビジネスの基礎部分となっております。

事業アイデアを明確化しやすいリーンキャンバス

 リーンスタートアップは、弊社DMステーションのようなWebサービスやセミオーダーメイド、プロフェッショナルサービス、通販ビジネスなどの分野と相性がいいとされています。そのリーンスタートアップを取り組むにあたり、考えている新規事業を整理しやすいフレームワークとしてリーンキャンバスがあります。
 リーンキャンバスは、一般的に広く用いられているビジネスモデル・キャンバスから、よりスタートアップ時に考えておくべき9つの項目に絞って設計されております。

①市場や世の課題
新規事業で解決しようと考えている課題や仮説。なぜ(WHY)この新規事業をするのか。

②ニーズやターゲット
①の課題に対して、具体的に誰(WHO)に提供したい新規事業か。またどんな人がアーリーアダプターになってくれそうか。

③独自の価値提案
MVP(製品やサービス)のどこに独自性や価値があるか。何(WHAT)の価値を提供するか。

④解決策
具体的で有力な解決方法。どのように(HOW)実現するか。ここに自社の強みが含まれているか。

⑤ニーズやターゲット(顧客)との接点
顧客と自社が接点を持つための経路。どこ(WHERE)で認知してもらえるか。それをしてもらうために、どのような流れ(行動)が考えられるか。

⑥提供価格や売上/利益など
具体的にいつ(WHEN)から、どんな項目で、どれくらいの収益が得られるか。

⑦必要なコスト
かかるコストの項目。システム開発費、制作費、印刷費、広告費、人件費、管理費、維持費など。

⑧中間目標値、撤退値
KPI(中間成果)として取得できる指標。顧客化されるまでの経路における数値。会員数、SNSフォロワー数、リード数、問い合わせ数など(BtoBとBtoCとで少々異なる)。逆に、最低限これだけは達成しないと継続できない数値。

⑨圧倒的な優位性
競合他社(技術的に異なっていても同じカテゴリ)は誰か。ポジショニングはどうなっているか。④の解決方法や強みに対して、確信できるところ。

 このリーンキャンバスを作成しておけば、構築→計測→学習の過程においてブラッシュアップもしやすく、新規事業を俯瞰的かつ網羅的に可視化できます。かつ、A4・1枚程度にまとめられる事からシンプルで、メンバー間でも目線が合わせやすくなります。

新規事業開発でリーンスタートアップが取り入れられた事例

 まず有名なのは、誰もが使っているレストランのユーザーによる5段階評価が掲載されるグルメサイトのリリース例です。当初はグルメ本の情報をもとにした手打ちのデータベースで、想定の30%程度の開発段階でリリースされたようです。初期段階ではユーザー数も少ないサービスでしたが、改善要望により事業の方向性をピボット(方向転換)した結果、今のようなシステムに変化を遂げたようです。現在は月間20億PV、月間利用者数も1億人以上と言われています。
 他にも世界的に有名な事例としては、スマートフォンで写真投稿をシェアできるSNSサービスの例です。元々は位置情報アプリとしてスタートさせたようですが、構築→計測→学習の結果、その中でも写真投稿・コメント・いいねの3つの機能に人気が集中していたため、位置情報にフォーカスされていた部分をピボットし、SNSに特化させるサービスに転換したと言われています。
 もう1つ挙げるならば、大人も子供も楽しく利用している老舗の動画投稿サービスの例です。こちらも元々は、相手の年齢や性別を元にデート相手のマッチング機能として動画投稿ができる仕組みだったのが始まりです。当時は写真だけだと信憑性に欠けたため、自身のプロフィールを動画投稿できるようにすることが狙いだったようです。ただ、徐々にプロフィールとは関係無い動画投稿が増えたため、動画の共有を主目的にピボットしたとのことです。


 さいごに、実はこの "リーン" の語源は、トヨタの生産管理システムの「リーン方式」に由来します。かんばん方式による必要なときに必要なものだけを調達・生産する生産効率性の向上と、異常が発生したらただちに停止して問題を顕在化し不良品を作らないとしています。すなわち、今回ご紹介した「リーンスタートアップ」が、"無駄を無くし短時間で急激な成長を狙う事業" という位置づけであるということが、よりご理解いただけるのではないでしょうか。

(株式会社フジプラス)

まとめ

■新規事業開発に有効なリーンスタートアップは、構築→計測→学習というプロセスを経て短期間・低コストで製品やサービスを開発する手法である。
■リーンキャンバスは、新規事業開発のリーンスタートアップにおいて内容を俯瞰かつ網羅しやすいフレームワークである。
■様々な新規事業開発がこのリーンスタートアップを取り入れているが、早い段階で事業の本質をピボット(方向転換)できているのが共通点である。

あなたにオススメのコンテンツ