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「今」に対応し提案し続けるエキスパート ハイブリッド施策でお客様に寄り添い 給食事業で社会課題を解決する!
名阪食品株式会社 代表取締役社長 清水克能氏
社会の変化とともに、「給食サービス」分野に求められるものは多様化の一途をたどっています。そんな中、創業以来、半世紀以上にわたって、お客様満足の探究を大切にしながら、給食委託事業というフードサービス事業に取り組まれている企業に注目しました。地域に根差し、新たなことにも積極的な姿勢で臨む原動力とは?さらにその実現の過程とは?等々お話を伺うべく、名阪食品株式会社 代表取締役社長 清水克能氏を訪ねました。「総合力の名阪食品」として、常に挑戦し続ける姿勢について語っていただきました。
現在に至る歩みと御社の特長について
1968年に奈良で創業した先代の時代を経て、2013年春に私が経営全般を引き継ぎましたが、財務関係も全て見始めたのは2006年のことでした。当時、こんなことを思いました。大企業は社長交代を機に、時代や価値観の変化に対応し組織の一新もあり得る。生き残りを賭けて時代を読み取り経営政策も変える大企業に対して、小さな会社は社長が変わろうが、そう変わらない。それでいいのか?と自問自答した結果、社長就任を機に、企業として生き残るための課題から着手しました。最優先は、「私たちは何を目指すのか」の明文化です。企業として目的を果たすにあたって「考え方」の整理に1年かけ、理念としてまとめました。(※資料1参照)。

浸透させるために取り組んできたことは、当社にとって重要な歴史だと思っています。それまで各自がいろんな方向を向いていた状態から、お客様満足の探究という同じベクトルを得たのは大きな進歩。事業戦略に関しては、茶道や武道等の修行プロセス「守破離(しゅはり)(※A)」に当てはめ凡事徹底を心がけ、少しずつでも進化することを目指しています。正しい現状認識と目標を持つことも大切なのです。
※A 「守」は型を忠実に守り、「破」は発展させ、「離」は独自のものを確立する3段階。
事業展開で大切にしていることは?
理念の中にもある「おもてなしの心」については、相互作用による好循環からプロフィットが生まれることから、顧客満足度(CS)と従業員満足度(ES)はイコールに近いと考えます。お客様からの感謝が社員に良い影響を与え、喜んでいただく努力につながり、また感謝されます。大切なのは、お客様を取り巻く社会、業界、環境が変化する中、自分たちの独自領域を作ること。給食事業は、高齢者施設、学校、保育園等、社会問題と直結し、変化も激しい分野が対象なので、お客様と信頼関係を築き、ニーズレベルでの正しい状況把握ができて初めて社会の一員としての役割が果たせます。以前はスペック情報中心でのアプロ―チや、アンケート調査も行いましたが、「まさに今」への対応としては不十分なので、現在では、お客様の「まさに今」を知り、未来予測のためMA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)・CRM(顧客関係管理システム)などのデジタルツールも活用しています。顧客接点を作り育成する中で、価値観を理解していただけるようになりました。ビジネスの始まり方も様変わりし、最近は新しい引き合いの大半がネット経由です。デジタルツールの導入だけでいきなり成果は出ません。使う側が肝心で、どう使えば効果的か、リレーションシップによって現状をいかに良くできるか考え続けることで、次の時代を作っていけるのです。2007年から積極投資してDXを進める中で、当たり前を見直し、効果を確かめながら、進化させてきました。やや抽象的ですが、部分最適ではなく全体最適の中の部分最適を作るような、組織のあり方を模索しています。
給食エキスパートとしての「強み」とは?
お客様からの直接的要望(ウォンツ)に沿った過剰なサービス設計より、お客様自身は意識していないニーズに対し解決策を示すほうがCSも上がりますので、最近は特に「ハイブリッド給食」を強化しています。異なる給食サービスの組み合わせで効果を最大化する、つまり、各領域の「最適」を活用する方法です。材料から調理して提供する給食もあれば、一般製品を提供する給食もあります。冷凍技術が進んだことで、お客様にとっての全体最適を一括して創り上げることも容易になりました。デジタル化の導入コストが下がって、可能になったことも大きいですね。変化に対し、デジタルマーケティングのKPIとして重要なコンバージョンを、どう設定するか考えながら対応しています。ツールや仕組みを使いこなすには、使う人の成長が必須です。よく鬼と金棒に例えるんですが、金棒はツール、仕組みで、鬼が人間力。金棒があるから鬼が力を発揮できるのですが、大きさが違いすぎると機能しません。両者を良いバランスで成長させる必要があります。会社の中の文化、空気感も大事なので、若手と中堅中心の部門横断的な委員会という組織をいくつか作っています。会議では、始まりも終わりも時間はきっちり守り、意見の言いやすさが最優先です。私も参加はしますが、自主性を育てるためにも、最後まで発言しませんし、数字は一切言いません。質のないところに成果の量はない、という考え方です。最初から数字を言うと、数字を上げることだけ考えるようになりますから。良い施策でお客様に満足していただき、結果としてついてくる数字のほうを浸透させたいのです。社内では、「ゆっくり成長していこう」「量より質だ」と繰り返しています。あとは、心理的安全性。ここが保障されないと、CRMレポ―トにも本当のことは書かないでしょう。ツールを使った分析と、現場感覚を照らし合わせ、会社が成長できる方法を選びながら、なかなか追いつけない仲間にも寄り添って一緒に成長していくのが理想なんです。
新規事業「そふまる」について
「そふまる」(※資料2参照)という介護食の新事業誕生に至った背景は主に二つ。一つは、2005年ぐらいまで、ミキサー食(※B)や再形成食(※C)の改良に取り組んだがうまくいかなかったこと。もう一つは、介護保険制度が始まった2000年以降、地元自治体から高齢者向け施設開設のご要望をいただき、地域への恩返しとして動いたことです。2000年時点の高齢化率は17.4%。2023年には29.1%ですが、当時からもう急速な進行予測が出ていたので、2003年には新たに社会福祉法人を設立しました。2005年に、社会福祉法人 清光会「秀華苑」など介護施設を2軒オープン。こうした施設を作ったことで理解したのは、現場と自分たちの認識とのギャップです。嚥下・咀嚼が困難な方に提供される、食材を細かく刻んだ「きざみ食」は、誤嚥性肺炎につながる危険もある重要課題でした。一方、食べて得られる脳への刺激にも注目。本来の食材の形があるものを食べると目の輝きが違いました。再形成でなく、元の形のまま柔らかくできないか、日本中の会社を探し回りましたが見つからず、自社で研究開発をスタートします。現場から知見を得ていたからこそ、可能性を信じて踏み切れました。最初は茨の道でしたが、3年ほどで成果が出始め、世のため人のための技術だとの思いに背中を押されて突き進みました。ただし、スペックに寄りすぎて顧客目線を忘れ、良いはずの商品も売れず、商品企画のやり直しも経験。どう魅せるか、のプロモーションも重要でした。地域への恩返しというところから、もともとあった新しいものにチャレンジする精神のDNAが加わって、ここまで来たような気がします。
※B 咀嚼や嚥下機能低下に配慮したペースト状の食事
※C 同じく咀嚼や嚥下機能低下に配慮し、素材をなめらかにした後に再度元の形に成形する食事。

今後目指す方向性、未来展望等について
「いい会社」を作りたい、というのが最終目標です。「良い会社」でなく「いい会社」です。これは私の定義ですが、「良い会社」は、売上、利益、品質など数字的、スペック的な話。「いい会社」は、周りから「いい会社ですね」と言ってもらえる会社のことです。私が、「何年までに『いい会社』にします」と発信しなくてはならないのですが、それには会社の継続が欠かせません。せっかくなら良い状態で継続できる会社でありたいと常々思っているので、実現のためには、お客様に必要とされるサービスや商品を提供し続けることです。具体的には、ハイブリッドスタイルをさらに進化させる技術の向上や、繰り返しになりますが、お客様の今まさに起きている状態をマネジメントすることで自分たちが戦うべき市場を決めること。経営層の背中は常に見られているので、部下が間違ったらそれは自分たちの責任です。明確な軸をもっておかないと、ブレた時にブレたことに気付けません。戻すべき「軸」を明確にして、間違った判断をした際にもやり直すために。これは自戒を込めて言っているんですが...。人材が一番大事ですから、近くの仲間がしんどそうにしていたら、「どうした?」「なんかあった?」と声をかけ合える職場の文化は何より大事です。寄り添うとか、見守るような感覚でもいいんです。これも、「いい会社」の条件だと信じています。
おわりに
時代に合わせて変化し続けることの本質は、新たな仕組みやツールを導入することで、お客様はもちろん、従業員の信頼関係をさらに深めていくことなのだと理解しました。決してこれまで大切にし続けてきた「軸」を変えることではありません。厳しくもあたたかい目で見守る清水社長が繰り返し熱く語ってくださった「寄り添う」という発想は、ビジネスにとっても不可欠なのだと感じました。
(株式会社フジプラス)
まとめ
■「軸」がブレないようDXを追求し「顧客満足度=従業員満足度」という思考が基本。
■チャレンジ精神を大切にする社風が、新しい事業分野への挑戦を後押ししている。
■給食のエキスパートとして、お客様の思いに寄り添うサービス提案・提供に徹している。
株式会社名阪食品については、こちらからご覧いただけます。
https://www.meihan-shokuhin.co.jp/
※所属及び記事内容は、2024年4月当時のものです。
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