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「わかったつもり」が一番コワい!解決ポイント解説② ビジネスの新常識として知っておきたい 「多様性」への正しい理解と適切な配慮の話
世界規模で、ビジネスを取り巻く環境も急激に変化し続ける中、ビジネスにおける常識にもアップデートが欠かせません。年数を重ねた経験値に基づく判断が、残念ながら、必ずしも正しい判断にならない現象は、「これまでの常識にはなかった初めての事案」が増えたのが主な要因でしょう。つまり、過去の「当たり前」だけでは判断しきれない、それどころか、過去の「当たり前」が障壁になって誤った判断になりかねない昨今。年齢やキャリアに関わらず、新たな情報を収集し、新常識として自分なりに落とし込んでおく必要があります。その一つが「多様性」という切り口でしょう。そこで今回は、「多様性」あるいはカタカナ表記の「ダイバーシティ」という表現を耳にする機会も増えつつある中、基本的な情報と、企業活動とどう関わるのかを中心に、ポイントを解説致します。
「多様性(ダイバーシティ)」=「女性活用」ではない!
「ビジネスで、もはやダイバーシティは不可欠な視点です」と言われても、具体的にイメージできず戸惑う方もいらっしゃるかと思います。正しい理解の第1関門は、この「多様性(ダイバーシティ)」という言葉。日本では、女性活用やキャリア支援のようなリソース関連の用語に勘違いされがちですが、「多様性」の辞書的定義は「相異なる要素を有する、もしくはそれから構成される状態」。つまり、性別や年齢、職歴、人種、国籍、障がいの有無、働き方、ライフスタイルなど、あらゆる属性の方々が互いに認め合い共存している状態です。例えば仕事に関連して、「多様性」を実現した職場と言えば、様々な属性の人材が、様々な働き方の選択肢を有し自ら選べる環境を示しています。これが、「良い企業かどうか」の判断基準になりつつあるわけです。
企業活動を行う限り、その企業がどんな考え方で、何を大切にし、何を目指すのか、常にウォッチされる立場にあります。社内的な姿勢(社員を大切にしているか)や、社会的な姿勢(信頼できるか)によっては「買わない」選択に直結します。生活者が、企業に対し社会的に正しい価値観を強く求める今、まずは「何が問題になり得るのか」を理解しておくことが急務でしょう。
CASE1 「ジェンダー(社会的区分に基づく性別)」の場合
CM等で、女性をめぐる表現や描写が議論になりやすいのはご承知の通りです。そこで頻出するキーワードが「アンコンシャス・バイアス(自分でも気付いていない無意識の偏見)」。関係者が後に、「まさかそれで問題になるとは思わなかった」とコメントするようなパターンです。例えば、社会構造上、「こういうもの」とされている役割の描写について、どのように感じますか?
Q.早朝から食事の支度や洗濯をこなし、笑顔で子供たちを送り出し、仕事に出かけ、帰ってきてから品数の多い夕食を用意する超人級にパワフルな女性を登場させるCM。(※架空の事例です)
この場合、問題になる・ならないはメッセージ次第です。最終的に、この過酷な状態を解決する商品やサービスが提示されたり、翌日に夫が同じ対応をするシーンが続けば、「なるほど、そのための前振りだったのか」と納得できます。でも、これを応援的なトーンで締めると「まだ女性だけに押し付けるつもり?」と反感を買うだけ。メッセージによっては、「炎上」しやすいCMの代表格です。(※資料1参照)
CASE2 「国籍」「人種」「文化的背景」の場合
日本社会は、まだまだ国際的な感覚が浸透しているとは言い難く、道半ばの状態なので、悪意はなくとも、問題に気付けないパターンもあります。個人レベルならば「デリカシーのない人」という評価になっておしまいなのですが、企業レベルだと信頼を失うことにもなり得る大問題です。さて、次のような例はいかがでしょう。
Q.企業のプロモーションサイトで、おしゃれに演出するためのイラストとして、外国人の外見的・身体的特徴を誇張して描いたイラストを使う。(※架空の事例です)
この場合、「問題なし」から「問題になる可能性あり」までのグラデーションです。表現が難しいのですが、対象属性の人々へのリスペクトがあるかどうかが鍵に。ふざけた調子が透けて見える場合は言語道断。対象属性の方たちが「私たちのことをからかってるのか?」と感じたらアウトです。ただ、例えばプロモーションに絡め、文化を尊重した肯定的なトーンで描いている場合は別の話。アプローチの仕方で全く違った判断となります。(※資料2参照)
「常識」変容の本質的意味を正しく理解する
企業の広報やマーケティング等、広く情報発信する立場だったり、自社サイトやSNSのコンテンツを作る立場の方は、ちょっとしたことでブランドイメージが傷つく可能性も理解しておきましょう。「視野が狭くなってない?」「これで傷付く人はない?」「悲しい気持ちにならない?」「不快に感じない?」等、多角的な検証が大切です。多様性の時代、違いを認め互いに受け入れるのが常識で、特定の属性を排除するような発想はご法度です。
その際、いろんな視点を持つ多様な人材が揃っていると有利ですね。AさんはOK、BさんはOKだと感じたが、Cさんが問題ありと指摘した、となれば、一旦立ち止まれます。ただし、同じような属性だったり、前例踏襲を良しとするメンバーの発言権が強い場合は要注意。他の視点からの意見を求めて反応を確認するなど、客観的判断を組み入れます。自分の周り半径1メートル以内で、地道に確実に考え方を変えるだけで、最終的には大きな進化を遂げることになるはずです。かつては、企業が発信する情報にモヤモヤしつつも心にしまい込んでいた生活者も、今や、自ら発信し広く社会に問題提起できるようになった時代。企業の姿勢にも変革が求められるようになったことは真摯に受け止めたいですね。
[終わりに]
かつての常識としての「当たり前」に接していた年月が長いほど、考え方の切り替えも大変でしょう。ただし、グローバル規模で企業活動のあり方も変容し、価値観の大幅なシフトの中で、「世界の中の日本」を意識せざるを得ません。新発想によるビジネス・プラットフォームを構築したり、多様な文化的背景をもつチームから世界に通用するビジネスの仕組みが生まれたり、画期的なイノベーションが目の前で起こっているのも事実です。冷静に目を凝らして冷静に見渡せば、すでに動き始め、進化し続けていると気付くでしょう。何も過去を全て捨てて新たに建て直そうということではなく、日本が持つ良い部分を、これまでの枠を外して、多様性を背景にした柔軟な発想でリノベーションする感覚だと考えています。正しく理解しておけば恐れることもありません。多様性の正しい理解が、新たなビジネス機会をつかむきっかけとなるという考え方が大切だというお話でした。
(株式会社フジプラス)
まとめ
■多様性の定義を正しく理解すれば、トラブルを未然に防ぐだけでなくチャンスも広がる。
■アンコンシャス・バイアスの自覚と克服が、多様性への誤解を解く鍵となる。
■「知らなかった」では済まされない!信頼を失うことが一番のリスクだと理解しておく。
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