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個客識別マーケティングの重要ポイント④ 顧客カテゴリとマネジメント
購入金額で分類することで顧客情報の活用が始まる
個客識別マーケティングは、顧客を識別し、割引等の優先的なサービスによって彼らを固定客化すると同時に、その割合を高めるマーケティングである。そのためにはポイントカードなどで顧客の購買動向を知る必要がある。これによって、購入額、来店頻度、顧客別粗利率、同一世帯売上などの情報が得られる。
顧客管理の最も単純な方法は、1週間の購入額に応じて顧客を分類することである。たとえば、
プラチナ:週5,000円以上購入する顧客
ゴールド:週2,000円以上5000円未満の顧客
シルバー:週2,000円未満の顧客
ブロンズ:新規顧客
と、いうように4つのセグメントに分けることができる。
年齢・性別・年収などのデモグラフィック(人口統計学的属性)要素に基づく分類は、小売業の顧客分類の主要な基準としてそぐわない。なぜなら、顧客が多様化し、同じ属性でも購入額が様々で、収益性との相関関係が低いからである。たとえば、高齢者の購入額と収益性を見ると、非常に高いところから非常に低いところまで幅広く分布していて、一貫性がない。
このような顧客カテゴリをつかったマネジメントを実行するためには、組織の管理体制を、顧客カテゴリを中心に編成することが必要になる。
従来行われてきた商品カテゴリ・マネジメントは既存の商品別の部門構成を細分化したものである。だが、顧客カテゴリ・マネジメントは、すべての商品にまたがって行われる。顧客がどの部門の商品を買ったかではなく、顧客そのものに注目する。つまり、経営の主眼を商品の供給サイドから需要サイドへ移すのである。
その測定指標として、顧客移動レポートが役に立つ。これは、新規顧客がどのカテゴリに入って来たか、カテゴリ間の顧客の移動、どのカテゴリから顧客が流出したかを記録するものだ。顧客の動きを把握することは、顧客の購買動向を監視し、それに影響を与えたいと考えるならば特に必要である。
顧客カテゴリを利用して売上を増やす
では、具体的に何をすべきか。
企業の最大の関心事は、収益性が高くて購入額の多い顧客を増やすことである。したがって、ゴールド顧客はプラチナに、シルバー顧客はゴールドに、上の段階のカテゴリに押し上げることが必要である。
一方、プラチナ顧客はいかに長く維持するかが重要だ。ブロンズ顧客については、収益性の高い固定客を上位3つのカテゴリへ移行させることが必要だ。新規カードメンバーの数が重要ではなく、そのうちの黒字顧客の数がポイントである。それらのために、各顧客カテゴリに責任を持つ、顧客カテゴリ・マネージャーを置くことも一つの方法だろう。顧客カテゴリ・マネジメントは、各カテゴリの顧客の行動と収益プロフィールがつかめるため、顧客の行動を目標達成につながる方向に誘導できるような特典の組み合わせを継続的に投入できる。
●売り場レイアウト変更にも役立つ
さらに、顧客カテゴリ・マネジメントによって誰がこの商品を買っているかわかるため、商品の優先順位の設定も、商品の品ぞろえや棚割りも容易に決められる。たとえば、あるスーパーで売場レイアウトの見直しをする場合、キャンディの棚が1m20cmあった。確かにキャンディの売上は好調だが、このスペースで適切だろうか。そこで、顧客カテゴリ別のキャンディの売り上げ動向を確かめてみたところ、店の売上全体の75%を占める上位30%の優良顧客は、特にキャンディをたくさん買っているわけではないことがわかった。キャンディをよく買う顧客は、中間の顧客カテゴリから多くなる。その分析結果から、キャンディの棚のスペースを半分にして、その分を優良顧客がよく買っているベビー用品に充てた。このレイアウト変更の後、キャンディとベビー用品のどちらの商品カテゴリも売り上げが増加した。
顧客カテゴリ・マーケティングは商品管理に置き換わるものではなく、商品管理と統合されるべきものである。
●カテゴリからの流出を防止
顧客カテゴリ・マネジメントを効果的に行うためには、日常のオペレーションにも組み入れられる必要がある。ある小売業では、店の各売り場マネージャーに、担当売場の新規顧客の獲得と顧客流出の責任を持たせている。
たとえば、顧客Aさんが同じ店の他の部門では従来通り買物をしているのに、特定の部門の商品を買わなくなった場合、この部門の担当マネージャーが、Aさんにクーポンを送付したり、アンケートをして原因を突き止めて解決するなど、部門外流出に責任を持つ。これにより、顧客を満足させることに重きが置かれ、各部門が以前より顧客志向になる。
プログラムの結果は次回への重要なアドバイス
顧客カテゴリごとに適切な特典を設定し、カテゴリ別のマーケティング活動を実施するためには、プログラムの成否を判断できる体系的な方法が必要である。そこで参考になるのがアメリカ・テネシー州のマーケティング会社だ。同社では行ったすべてのマーケティング活動の経過を、以下の4つの観点を含んだ報告書に記録している。
①効果
このプログラムの財務的結果はどうであったか。同社は各マーケティング・プログラム間の比較的評価ができるフォーマットを使っている。
②教訓
このプログラムから学んだこと。たとえば、10%引きは100円引きより効果があったなど。
③次回へのアドバイス
翌年も同じプログラムを実施する場合、改善した方が良い点を今回の経験を踏まえて書く。
④副産物
今回のプログラムから派生した、他のカテゴリや商品でも使えそうなアイデアなど。
このような報告書が蓄積され、参照できるようになると、得難いマーケティング資産となる。
小売業にとって顧客カテゴリ・マネジメントは、直接的に顧客を理解できるようになる点で重要である。異なる顧客カテゴリそれぞれに向けて商品を販売し、レスポンスを測定し、その変化と経済性を理解できるようになる。そして、新たに得た知識を使って、さらに個々の顧客カテゴリへの対応の効果を向上させていくことも可能になるのだ。
まとめ
■顧客の情報は、購入金額ごとに分類した顧客カテゴリを利用することで活用できる。
■上位カテゴリの離反、売上低下を防ぎ、下位の顧客を上位カテゴリに上昇させることが重要である。
■顧客カテゴリ・マネジメントは売場レイアウトから日常のオペレーションにまで組み入れられる必要がある。
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