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マーケティング NEW2021年8月 4日

個客識別マーケティングの重要ポイント⑤(最終回) 顧客の差別化で売上を増加させたスーパーの実例

顧客データから重要なことが判明

 オーストラリアのメルボルンに6店のスーパーを持つA社は、ポイントカードを使って顧客のデータを管理して、顧客ごとにサービスの対応を区別するプログラムを実施した。
 導入のためにはまず顧客にカード会員になってもらう必要があるため、明るく社交的な従業員が店頭で楽しい雰囲気を盛り上げながら、来店客に声をかけて入会を勧めた。

 このカードをレジの端末で読み込むと購入日時、購入した商品、金額等が記録される。その情報から以下のことがわかる。

・日、週、月ごとの合計購入金額
・主要10部門の部門別購入額内訳
・各月ごとに発生した買物1件ごとのデータ(店名、来店日、時間帯)
・その年の累積即時割引提供額

  これにより約4万世帯の購買行動に関して幅広く、非常に価値のある情報が集まり、そこから重要なことがわかった。
 毎日更新されるこれらのデータから顧客のセグメンテーションを行ったところ、店の売上に貢献している、ロイヤリティの高い顧客が20%弱、週平均購入額が9ドルしかなくてあまり貢献していない顧客も20%、そしてその中間の顧客が60%いることが明らかになったのである。
 この60%の顧客はいわゆる「かけもち顧客」である。定期的に来店するが、全体におけるこの店での購入比率は高くなく、あちらこちらの店でバラバラに買い物をしている。この「かけもち顧客」をロイヤリティの高い顧客に格上げすることが重要であった。

「かけもち顧客」をロイヤリティ顧客に

 そのために、A社はいろいろな方策を行った。

■ポイント・プレゼント
 カード会員は購入金額1ドルにつき1ポイントが付与され、ポイントを貯めるといろいろな景品と交換できる。
 各店舗には「クオリティ・ギフトショップ」と名付けられた、ガラスとクローム製のイルミネーションがついた豪華なショーケースがあり、景品が交換ポイント表示とともに並べられている。ショーケースは入り口付近に置かれ、必ず来店した顧客の目に留まる。景品交換に必要なポイントを意識させ、買物を促進することが目的だ。
 購入額の多い顧客ほど、豪華な景品を獲得できるため、他の店でも買っていた「かけもち顧客」もその店で購入するようになった。

■レターや電話で顧客とつながる
 ロイヤリティの高い顧客を増やすためには、他店への流出を防止するとともに、来店を促す必要もある。そこで、A社はカード会員のデータを使って、さまざまなシーンに合せたレターの形式をつくり、特定の顧客層に送付した。たとえば次のようなレターがあった。

・トップクラスの顧客向けの感謝レター
・6週間来店していない顧客向けレター
・よく来店するが、特定の部門の商品を購入しない顧客向けレター
・新規加入のメンバー向け歓迎レター

 レターを郵送する際には、来店を促すため、あるいは、顧客が買わない部門の商品を試してもらうために、ギフト券を同封する。その内容は、使わないと損だと感じるぐらいの魅力があるものだ。
 また、毎日、各店舗で前日に購入額の多かった顧客5人に電話をかけて、感謝の意を伝える。その際に買物の感想や店に置いて欲しい商品の希望、店に要望する改善点を尋ねる。もし買っていない部門があれば、その理由もそれとなく探り、後でその売り場の商品のギフト券を送る。
 同じ顧客に何度も電話をかけると迷惑なので、一度電話した顧客には一定期間が過ぎるまでかけない。
 このように顧客に接することで、ロイヤリティ顧客を獲得することができた。

会員限定のサービスで顧客を離反させない

 このプログラムを実施してからA社では単純な割引セールはほとんど行わなくなり、カード会員向けの割引を実施するようになった。商品棚には一般価格とメンバー向け価格の両方を表示し、カード会員になることのメリットを強調した。割引商品はパッケージ食品や雑貨類が多いが、一部の酒類や果物、野菜、肉なども対象にしている。
 また、客に渡すレシートには商品の金額のとなりに節約額、一番下の部分にトータルでいくら節約できたかが印刷されている。それによって、どれだけ得したかを明示しているのだ。
 これには、顧客がポイントカード会員になることで受けられる経済的なメリットを示すとともに、顧客に節約した額を認識させ、自分は支出を合理的に管理しているという満足感を持たせる意味もある。
 他にもA社は様々なユニーク・サービスを展開している。

■他の店でもポイント付与
 顧客から、景品交換に必要なポイントの蓄積に時間がかかり過ぎるという不満の声があった。そこで、競合しない業態の地元店にパートナーとしてプログラムに参加してもらい、他の店で買い物をしてもポイントが貯まるようにした。

■優良顧客を特別扱い
 顧客のカードをレジで読み取ると、キャッシャー側の画面にその会員の名前が表示されるようになっていて、店員は名前で呼びかけて挨拶している。これにより、その顧客は店にとって特別のお客様であるとアピールしていることになる。
 さらに、ロイヤリティの高い顧客の維持のために、優良顧客の声を直接聞き、店側の考え方を伝える意見交換会を開催している。

来店頻度も購入額も増える

 一般的な傾向として、顧客の来店頻度が増えると、1回あたりの購入額は減少する。しかし、A社では、カードプログラムの導入により、顧客の来店頻度も、1回あたりの購入額も増加し続けている。ある週と前年の同じ週を比較すると、売上が40%増えているし、年初からの累積売上げを比較しても、前年より20%以上も伸びている。さらに、利益率も著しく改善している。
 個客識別マーケティングで長期的な成功を収める条件とは、内部的には情報を理解し、効果的に活用することであり、外部的にはシンプルでわかりやすいプログラムを打ち出すことである。顧客が受け取るバリューの差別化に力を注ぎ、特にトップクラスの顧客に対しては、魅力的な特典を提供する。そのためには、顧客とのコミュニケーションを密にし、顧客のニーズを正確に予測することが必要である。

まとめ

■売上に貢献する顧客が20%、あまり貢献していない顧客が20%、残りの60%は他の店でも購入する「かけもち顧客」である。
■この「かけもち顧客」をロイヤリティ顧客にすることが重要。
■そのためにはポイント特典やレター、ギフト券などが有効な手段。
■カード会員を一般客より特別に扱うことで、顧客の離反を防げる。

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