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個客識別マーケティングの重要ポイント② 顧客の差別化とその重要性
ビッグデータやICTなどの利用で、マーケティングは進化を続けている。その進化に対応するためには、具体的な手法をチェックするより先に、データベースマーケティングの基本を押さえておく必要がある。そのためには、「個客識別マーケティング」の知識が欠かせない。前回、その意義について述べたが、今回は実践するにあたっての原則を説明する。
すべての顧客は平等ではない
顧客は、一人ひとり異なる商品を購入する。使う金額も様々だ。頻繁に来店する人もいれば、たまにしか来ない人もいるし、1回きりという場合もある。広告の特売日に魅かれて来店する人もいれば、たまたま近くを通りかかっただけの人もいる。顧客の状況はさまざまで、一人ひとりが異なる利益を店に与える。
ところが、小売店はすべての顧客に同じ商品、同じ価格で同じ扱いをしてきた。なぜならば、一人ひとりの顧客に対して個別に、コスト効率の高いシステムがなかったからである。
しかし、その状況は今や一変した。情報テクノロジーが、私たちに新しいツールを与えたのだ。小売業のツールが変化したからには、ルールも変わらざるを得ない。「すべての顧客は平等である」というマスマーケティングは、「すべての顧客は平等ではない」と置き換えられるべきである。
歓迎される顧客の差別化
すでに、顧客を平等に扱わない「差別化マーケティング」は行われている。アメリカ・オーククリークのスーパーでは、カード・メンバーが来店するとまず店内のキオスク端末に行き、自分のカードを読み込ませる。すると、一人ひとりの顧客に24品目が割引になるクーポンが印刷されて出てくる。買った物に割引対象品目があれば、レジでその客に対してだけ自動的に割引される。どの顧客にどの品目のクーポンを発行するかは、店側で自由に設定できるようになっていて、顧客ごとのさまざまな商品の購買サイクルに基づいた特別な割引を企画している。
日本の大手スーパーでは、顧客の購入履歴からレジで次回の買い物で使
えるクーポン券を発行するサービスを行っている。このような差別化について、顧客自身も理にかなったやり方だと認めている。
アメリカの大手食品小売業の会社が行った顧客意識調査の結果、顧客の意見は以下の2つに集約されている。「たくさん買う人に、たくさんサービスするべきです」「私はこの店で年に3000ドル以上も使っているのだから、その分、優遇してもらうのは当然!」このように顧客の多くは、すべての顧客が平等ではなく、顧客ごとに値段が異なるという考え方に賛成しているのだ。
あるスーパーのマーケティング担当役員は語る。「お客様は、一個人として扱われることが好きなのです。お客様一人ひとり、隣に住んでいる人とでも違う値段で買うことに対してまったく不満を感じていないという事実は、私たちにとってうれしい発見でした。お客様は、自分自身の購入額に応じて値段が決まるという仕組みを受け入れてくれました」
すべての顧客は平等ではない。店は顧客の多様性を認め、最大の利益をあげるために顧客を識別し、それぞれに応じた販売条件を適用することで、この事実を事業戦略に取り入れて行くべきである。顧客の差別化をためらってはいけない。すでに受け入れられ、歓迎されてもいるのだから。
顧客差別化の第一段階 真のメリット
利益を上げるために顧客を識別し、それぞれに異なる販売条件を適用するには、個客識別マーケティングが必要になる。その導入後に求められるのは、実際の差別化である。差別化の意味するところは、すべての人にすべてのものを与えるのではなく、ある人たちだけにある特定の物を与えるということだ。すべての顧客が平等ではない以上、一人ひとりの顧客に異なる対応をするのは、まったく理にかなっている。
顧客差別化の第一段階は、会員カードを持っている顧客全員に対し、買物の際に割引やその他の特典を与えることである。これにより、実質的に価格条件がカードを持つ顧客と持たない顧客の二階層に分かれることになる。しかし、購買件数全体の55~60%がカードを提示して行われるようになり、売り上げ全体の8割を占めるようになったとすれば、これはもう残りの2割の売上をもたらす顧客には別の条件があるとしても、大方の顧客にとっては、一つの同じ条件を提示しているのと同じことになる。
ただし、この第一段階の差別化でも、粗利の改善は見られる。なぜなら、カードを持っていない顧客も対象にした一斉割引は行わなくなるからだ。それにもちろん、効果を定量的にみるのは難しいが、この段階における真のメリットは、顧客の購買情報が得られることにあると言える。
大幅な利益増は二段階の顧客差別化から
大部分の買い物がカードを提示して行われるようになったら、次の第二段階へと進む。この段階では、それぞれのカード・メンバーとの関係の重要性に応じた差別をするが、この段階こそが大きな利益増を生む。この第二段階の差別化を進めるほど、企業の利益は増加するのである。その理由は、広告と特売の2つの主要なマーケティング・コストが顧客の利益性に応じて配分されるようになるため、これによってマーケティング活動の投資回収が改善されるからだ。これが、顧客の差別化が重要な意味を持つ理由に他ならない。
「すべての顧客は平等ではない」という前提を受け入れるならば、顧客の差別化に基づくマーケティング戦略をとるのが、当然の帰結だろう。最優良顧客でさえ競合店に行くこともあるのだから、自店の吸引力をさらに強めることは不可欠だ。すべての顧客をつかまえておこうとするのは無理である。それより、自分たちにとって最も重要だと考えられる顧客に限られた資源を集中し、こうした顧客との特別な関係をいっそう深めるような方法で、対応を差別化しなければならない。
差別化により、繰り返し利用してくれる常連客だけに報いたい。だとすれば、大胆かつ堂々と、店内でそう宣言すればよいのである。それはきっと、好意的に受け取られるだろう。
まとめ
■顧客は購入する商品も使う金額も、来店頻度もさまざまである。「すべての顧客は平等ではない」といえる。
■顧客が平等でない以上、その顧客に合せたサービス、つまりたくさん買う人にはたくさんサービスをするべきである。
■顧客側は、顧客の差別化を受け入れている。
■顧客の差別化は、カードを持っている顧客に対して割引や他の特典を与えることで行える。
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