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DX NEW2021年6月 9日

双方のビジネスを成功させるための契約書 ITサービスを支援するデジタル印刷連携におけるSLAの意義とは

合意無きビジネスにならないためのSLA

 世の中のビジネスには、まだまだ口頭の合意だけで業務を委託をされるケースが少なくありません。口頭だけの合意でビジネスを進めてしまうことで、サービスに重大な欠陥があった場合の双方のリスク、そして当事者間での合意内容や解釈のズレ、しまいには「言った」「言わない」の水掛け論になってしまうなど、大きなリスクに発展してしまう可能性も否定できません。ビジネスは、双方が同じ思いで協力し合いながら収益を上げていこうとするのがあるべき姿だと思われます。このようなトラブルを避けるために、双方が誠実に協議できるパートナーとしての業務提携や業務委託といった契約書を締結し、リスクを事前に洗い出して回避すべきリスク、負うべきリスクなどを明確にしておきます。
 その中で、保証するサービス内容や責任範囲を定める1つの手段にSLA(Service Level Agreement)というものがあります。直訳するとサービス水準合意、国内では「サービス品質保証」や「サービスレベル合意書」などと言われています。SLAに含まれる要素としては、契約で合意されたとおりにサービスを顧客に提供する点になります。主にはIT系の分野で使われ、通信やクラウドサービス、アプリケーションなどに対して取り入れられ、その品質を保証します。保証されるサービス内容や責任範囲、もし維持や達成ができない場合の対応やペナルティが科せられるかを定めておきます。特にIT系ではシステムやサーバーに何らかの障害が発生したとき、責任範囲において双方の見解がぶつかることが多いものです。そうならないためにも、サービスにおける内容・範囲・品質・運用ルールなどを規定します。
 サービスの提供者、供給者、それぞれにメリットをもたらすのもSLAの良いところです。提供者にとっては、一定の品質が確保できますし、万が一の場合にも損失補填が可能になります。また、契約する相手方を比較する基準にもなり、より良いパートナーと協働できる点です。一方、供給者にとっては、責任範囲が明確になり、トラブル発生時の説明責任の根拠になります。それと、SLAを締結できることで、競合他社との差別化も図れ自社サービスとしても優位になります。

コネクテッドプリンティングにおけるSLAとは

 最近、弊社のビジネスにもSLAを取り入れる場面が増えてきました。クラウドサービスを支援するための印刷連携サービスを"コネクテッドプリンティング"とも呼ばれますが、これはクラウド上で印刷版データを生成されたものを適切な印刷物製造拠点で生産される概念やプラットフォームを指します。印刷物製造においてもクラウドサービスやアプリケーションが絡むため、サービス側(提供者)と製造側(供給者)とで定義や役割分担を明確にしておく必要性があります。大まかには、印刷物仕様、データ仕様、提供方法、管理方法、製品の品質基準、梱包、配送、納期などにおける双方の約束事が明記されます。
 具体的には、サービスの提供者と供給者それぞれに対して、具体的な約束事を決めて記しておきます。提供者は、データの仕様が取り決めしたルールどおりのものであるかどうか、適切な方法やタイミングでデータが提供されるかなどを約束します。また供給者は、営業日の設定、データの受信方法やそのバックアップ、運用ルール、各種法制度、行動規範の徹底などを約束します。また、サービスの一部(配送など)は協力会社がいて成り立つ部分なので、協力会社が起因するトラブル対処方法などは綿密に決めておきます。SLAは明確な判断をするために、具体的な数値を定義しておく必要があります。例えば、時間であれば何時までであるとか、数量であればいくらまでとか、その数値が守れない場合はどのように対処するかまで決めておきます。
 このようなSLAの締結は、お互いに適切なレベル、適切な範囲で合意することが望ましいです。その中には人によって監視されるべきもの、システムによって監視できるものなどを分け、双方にとって作業負荷が高くならないようにします。

デジタル印刷とSLA

 嗜好の多様化に応えることが強みである無版のデジタル印刷は、いわゆる一般的な印刷ビジネスとは全くの別物になりつつあります。たとえ個別に営業し、あらゆる方法でデータを入稿され、受け取り側の希望に沿った出荷対応であったとしても、絶対に一貫したシステム上で、そしてルール上で行われなければなりません。いま徐々に向かっているアフターデジタルの社会では、デジタルを前提にオンラインありきで世の中が変化しております。そう考えると、もはや人力で制御する部分は殆ど無くなり、システム上、ルール上でビジネスは進みます。人の介在が無くなればこれまでの口約束は全く通用しなくなり、ここで本題のSLAは欠かせないものであることはご理解いただけるのではないでしょうか。
 デジタル印刷は、プリントマネジメントサービス(=企業の印刷物作成のプロセスを合理化し、コストを適正化するサービス)でもよく活用されておりますが、必ずSLAの締結をしております。そこには、日本ならではの慣習などは通用せず、持ち込まれる受発注システム上での手続きや、制作・生産工程におけるルールに沿った運用になるためです。


 このようにSLAは、単にルールで縛るためのものではなく、互いのビジネスにおける利益を最大化するためのものと理解できます。一言に契約と言っても、主従関係を結ぶためではなく、双方の信頼関係を築きパートナーであるためのツールであることがSLAの大きなメリットだといえるでしょう。

(株式会社フジプラス)

まとめ

■保証するサービス内容や責任範囲をSLAで定め、双方の信頼関係を築くためのツールであると理解する。
■コネクテッドプリンティングのSLAは、サービス側と製造側の定義や役割分担を明確にし、具体的な約束事を決めて明記しておく。
■デジタル印刷のビジネスは一貫したシステム上、ルール上で行なわれることが増え、ますますSLAの締結が重要になってきている。

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