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DX NEW2023年6月21日

「分散型社会」に対応する 誰もが参加可能な自走型コミュニティを実現させる 自律分散型組織DAOとは

 以前、『「デジタルアート」だけではないNFT ビジネスで幅広く活用できる NFTの新たな「体験」や「価値」とは』という記事をお届けしました。その際、Web3(ウェブスリー)は「分散型」であり「デジタル共有」といったデジタルにおけるエンゲージメント(繋がりの強さ)重視のコミュニケーション環境であることをお伝えしました。今回はその概念に密接に関係し、Web3を形成する仕組みの1つであるDAO(「ダオ」と読みます)が今後の社会や組織、我々の生活にどのような影響を与えるかを掘り下げてみたいと思います。

DAOはブロックチェーン技術が作った新しい組織形態

 DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの頭文字をとったものであり、直訳すると「非中央集権的で自律的な組織」となります。元々は、過去記事にもあるようにブロックチェーンと言われる分散型台帳の技術として取り上げられており、仮想通貨のビットコインやイーサリアムなどは、特定の管理者がいなくてもブロックチェーン上で一定のルールに従って運営されているシステムとしてDAOはフォーカスされてきました。
 ただ、ここ最近では、DAOはそのブロックチェーン上で世界中の人々が協力して管理・運営する組織として、改めて理解されつつあります。その組織の特徴の1つが、一般的な会社組織のような代表者や上層部がトップダウンで意思決定や伝達するといった中央集権的な管理とは全く異なるということ。DAOは参加者同士で管理され、意思決定も参加者同士で行なわれます。このDAOの意思決定に関わるためには、ガバナンストークン(株式のような購入や貢献などにより持つことで付与される権利)を保有する必要があり、トークンを持っていることで提案や投票といった権利を得ることができます。
 また、DAOはルールに基づいて運営されており透明性が高いことも特徴です。一般的な会社組織と比較すると分かりやすいですが、殆どの場合、組織のルールが外部には非公開で完全には明文化されておりません。一方、DAOはそのルールが閲覧可能であり、完全にルールに基づいてスマートコントラクト(自動販売機のような定められたルールに沿って自動的に実行されるプログラム)で実行されます。そもそもブロックチェーン自身はオープンソースであり、ソースコードを見ればそのスマートコントラクトの内容を確認できます。
DAOによる組織は、実際に「Aragon」などのツールでブロックチェーン上に簡単に作ることができます。作成したい組織の形態に応じてテンプレートが用意されており、ガバナンストークンの作成や配布、投票と集計、あと資産管理機能などが備わっています。ただ、大切なのはこれらの機能の詳細ではなく、DAOの中身やミッションなどの概念を理解することです。
概念に戻って話を整理すると、DAOは権利さえ持っていれば誰でも出入り可能な参加型組織であり、議論は全てルールに基づいて決定されるものと理解できます。そしてそれはインターネット上で管理され、あくまでミッションドリブンで組織が運営されます。よってこのDAOの概念は、有志が集って自走させるべきプロジェクトやコミュニティの枠組みなどにはマッチするかもしれません。

分散型社会に必要とされるDAOへの理解

 ここから少し、DAOが生まれた背景などを確認していきます。DAOはブロックチェーン技術から生まれた新しい集合体の発想とも思えるのですが、実はこれは私たちの生活環境でもある「分散型社会」とも密接な関係にあります。
 日本は高度経済成長により都市へ人口が集中し、特に地方の小さな市町村では人口減少による人手不足が深刻化しています。一極集中する効率の良さがある反面で、地震や台風などの自然災害により中枢機能が麻痺してしまうデメリットもあります。昨今のパンデミックなどにより過密化の脆弱さがさらに浮き彫りとなったことから、人口や経済をバランスよく分散化し、国全体のダメージを小さくする分散化社会の対応が求められています。
 ただ、現実的にはこの分散型社会への対応が思うように進んでいないのも事実です。例えば、労働集約的な産業構造が変わらず、行政などの仕組みもまだまだ中央集権型です。これは高度経済成長期のままの"昭和的"な価値観や行動様式が変わらないため、そもそも前段で説明したようなDAOを立ち上げられるような周辺環境が整っていないからです。
 この状況を踏まえて改めてDAOを考えると、いくつか気づきがあります。①DAOの進化が新しい技術から起きているので、DAO型組織も、ミッションを小さくでも明確にしたうえで従来型組織とは分け「参加型」で「独自」に立ち上げること、②最初から中央集権型としないリーダー不在のDAOの立ち上げは難しくとも、徐々にリーダーが居なくてもルールベースで意思決定できるようにしていくこと、③継続・発展を考えるとDAOの参加者が自律的に成果を出し、参加者やDAOそのものに利益が還元される仕組みにすること、などが言えるかもしれません。

DAOで実現する「美しい村」や「地方創生」

 「美しい村を、美しいままに。」をキャッチフレーズとする「日本で最も美しい村」連合(https://utsukushii-mura.jp/)は、全国61の地方自治体・地域と、66社の企業サポーター(正会員)、230の個人・企業・団体(準会員)で構成されるNPO法人です。この連合がDAOを制度設計するための「準備室」を開室したのが2022年10月で、組成後は加盟村が抱える社会課題の解決方法を自走しながらDAOで取り組めるようにしているそうです。取り組み例としては、①地域資源NFTの事業化、②独自トークン(地域通貨)の検討、③メタバース商店街の検討、④ネットワーク活用で100の事業づくり、⑤海外ネットワークの活用などが挙げられています。また、自走するために各構成員それぞれが取り組みたい事を提案し、その提案はクラウドファンディング上でマネタイズと同時にはじまります(※)。
 また「地方創生」においても、DAOが注目されつつあります。これまでは返礼品にNFTが活用されたり、観光地へ訪問するとNFTがもらえたりと、NFTが中心でした。しかしそのNFTによる個々のインセンティブ(個々の権利)の延長線上には、プロジェクトへの参画権などDAOでの取り組みに結びつくケースが増えているようです。これが広域DAOとして地域どうしの連携となると、縦割りの存在しないDX的コミュニティとして地方創生がより効果的に進化していくことが期待できます。


 このようにDAOはまだまだ事例も少なく、周辺環境が整っていないことからまさに発展途上です。ただ、DAOの民主的かつルールに基づいた意思決定ができる枠組みは、複雑な社会課題や企業課題などであっても力を合わせて解決できる、大きな可能性を秘めているのです。

(株式会社フジプラス)

(※)合同会社美しい村づくりプロジェクト・2022年9月1日のPR TIMES「『美しい村DAO準備室』参加権付きクラウドファンディング、本日より募集開始!!~日本で最も美しい村まつり~」より参考
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000101482.html

まとめ

■DAOは、ブロックチェーン上で運営される誰でも出入り可能な参加型組織であるが、有志が集まって自走させるべくプロジェクトやコミュニティの枠組みなどにマッチする。
■分散型社会に対応できない原因は、いまの社会に中央集権的、"昭和的"な価値観、行動様式などが残りDAOとは全く異なるためである。
■DAOで実現する「美しい村」や「地方創生」は、広域になるとDXコミュニティとして進化が期待できる。

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