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アフターデジタルを考える コミュニケーションの変化によるメディアの再定義と求められる提供価値とは
アフターデジタルとコミュニケーションの変化
新型コロナウイルスの影響の長期化で私たちの行動は大きく変わり、もはや元の状態には完全には戻らないであろうという共通認識が広がりつつあります。リモートワークやオンライン授業が継続的な選択肢となり、外食を控えデリバリーや中食・内食を楽しもうと様々な工夫が日々提案されています。それもこれも、今やデジタルの力が無ければ、実現しないことも多いのではないでしょうか。
最近「アフターデジタル」という言葉をよく聞くようになりましたが、これは藤井保文さん(株式会社ビービット東アジア営業責任者)の執筆による『アフターデジタル』(日経BP社刊)がきっかけとなりました。アフターデジタルとは、デジタル化する世界の本質を示した概念であり、データ化できないオフライン行動が無くなることで、私たちの身の回りのリアル(オフライン)が完全にデジタル(オンライン)に包含される世界を表しています(図1)。

私たちの生活は、徐々にこのアフターデジタルへと突入していますが、それはオンラインとオフラインが共存する「ビフォアデジタル」とは異なるものです。リアルを軸にデジタル利用を考えるのではなく、常にデジタルを前提にオンラインありきで世の中の変化が進んでいきます。
では、リアルに存在したコミュニケーションは今後どう変わっていくでしょうか。これまでもリアルに対面する以外にも、電話があり、SNSがあり、Eメールがあり、そして映像付きのWeb通話といった複数の手段がありました。それらは、場面に応じて使い分けることができ、とても便利に感じるものでした。しかし、リアルでのアクセスが困難な状態では、デジタルを基本とした手段に不安や戸惑いを感じながらも慣れ、少しずつ置き換わっている現実を受け止めなければなりません。決してリアルは無くなりませんが、より重要かつ貴重な手段として位置づけられるようになり変化していきます。
アフターデジタルが及ぼすメディアの再定義
デジタルにより人々の行動が変わると、これまで想定されていたシナリオにも大きく影響します。コミュニケーションの一部には少なからずメディアが関わってきますが、そのメディアの使い方や存在そのものも再定義する必要が出てきます。
いくつか例を挙げてみると、これまでBtoBの企業が、定期的に展示会出展や自社セミナーの案内をダイレクトメール(封書やハガキ等)で行なってきました。しかし、大手企業やIT関連企業などでは完全リモートワークを実施している場合もあり、ダイレクトメールに気づいた時には既に終了していたという話を聞きました。他にも、とあるメーカーでは、カタログを使った対面での営業活動が出来なくなったことで、画面共有用のデジタルブックを活用したり、新たにWebサイトを構築することで間口を広げる動きに変わったと聞いております。
そうなると、ダイレクトメールやカタログといった紙メディアは、これまで本当に費用に見合った使われ方がされてきたのかという疑問が浮かんできます。紙メディアは決して安価なものではありませんが、これまで予算があって続けることができました。ただ、リアルメディアの弱点は、人へのリーチや反応がすぐには分からない(取得できない)ところです。誰がいつ反応したかは、何らかの手段で必ずデジタルに戻すシナリオを用意しなければ、予算に対する効果(間接的効果などの中間成果)を測ることはできません。
これだけデジタルシフトしつつあるいま、アフターデジタルを想定した人の行動シナリオを改めて見直す必要があるでしょう。多くの人がスマートフォンを持つようになり、ここまでインターネットを使った双方向のコミュニケーションが発達しているので、アフターデジタルを考えると一方通行とも言えるプッシュ型のメディアが淘汰されるのは当然かもしれません。
アフターデジタルで求められる提供価値
コロナにより非接触な日常に対応する時、ビジネスにおける業務や営業、サービス、開発などあらゆる面での変化を求められました。いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが急務とされるなか、単にデジタルへの置き換えだと機能しないこともお気づきではないでしょうか。アフターデジタルでの顧客との関係構築のためには、必ず新たな提供価値が必要になります。
スマートフォンアプリなどは、何らかのメリットがあるからインストールしますが、例えば単にポイント付与やクーポン配布だけだと、よほど使用頻度が高くない限りすぐにアンインストールされてしまうでしょう。他にも、単にカタログ削減のためのスマホアプリによるデジタルカタログ配布であれば、よほどの利便性が無いと定着は難しいかもしれません。このように、単に「モノ」への置き換えでは難しいのです。
では、いかに提供価値、すなわち価値ある「コト」(しかも連続的な体験)を提供できるか。例えば、デジタル上では色々なデータを取得し蓄積しやすいですが、それを利用者にも何らかの形で還元できて「気づき」や「利益」をもたらすと良いかもしれません。具体的な例として、健康を気にする人に向けた配食サービスがアプリで提供されるとして、そこに健康状態等を登録できるようにしておくことで状況に合ったメニューが提案されたり、良い状態が維持・達成できれば賞が贈られたりする等、双方向でのコミュニケーションにもなるし利用者にとって大きな価値があります(図2)。他にも、デジタルカタログの配布の例だと、事業者側にとっては従来のカタログ印刷・配送コストの削減になるメリットがある一方、利用者にはコスト削減による還元は勿論のこと、商品やサービスなどにより利用者が思わぬ課題に気づき常に寄り添った形で解決しやすい工夫があるとそれが提供価値になります。

このように、アフターデジタルでは、最適なタイミングやコンテンツで顧客とコミュニケーションをとったり、自社やパートナーなどを巻き込んだ形での利用者との密接な顧客接点の構築などが求められます。それは、これまで顧客が味わったことのない体験をいかに価値として提供できるかが鍵となるでしょう。
(株式会社フジプラス)
まとめ
■アフターデジタルでは、リアルよりデジタルのコミュニケーション比率が高くなり変化していく。
■コミュニケーションが変化することで、人の行動シナリオも変わり、これまで使われていたメディアも再定義しなければならなくなる。
■単にデジタルの置き換えではなく、これまで味わったことのない顧客体験を価値として提供できるかが重要である。
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