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マーケティング NEW2020年11月 4日

海外のCRM事情 日本にも応用できる手法「トリガーマーケティング」

 昨今CRMが注目されているが、アメリカをはじめ海外では日本以上に進化しており、見習うべきものが多い。新規顧客獲得のためのDMなどで個人情報の規制が厳しい日本では、海外の手法をそのまま活用できないものもあるが、工夫次第で応用できる手法は多い。最近筆者が訪問した海外企業の中から、日本にも応用できる事例を紹介する。


海外に見るCRMの成功モデル

 海外企業がCRMに成功している要素は2つある。「トリガーマーケティングの徹底」とそれを実践できる「テクノロジーの導入」だ。この2要素により、複雑なCRMが「ほぼ自動化」できている。
 トリガーマーケティングとは、拳銃の引き金(トリガー)を引くと弾が出るように、顧客がある動作(行動)をしたら告知という弾が出るようにするマーケティング手法のこと。日本でも導入企業はあるが、海外企業はより徹底している。
 もう1つの要素はテクノロジーだ。何十万人という顧客の行動を個別に管理するにはアナログ方式では不可能であり、顧客の行動を自動検知し、引き金も自動的に引くテクノロジーが必要である。この2つにより「ほぼ自動化」が成立する。

トリガーマーケティングの成功例

 トリガーマーケティングの先進例を紹介しよう。注文住宅販売会社Rは、モデルハウスに訪れた見込客の刈り取りに苦労していた。従来の営業手法は、モデルハウスに来た顧客に個人情報を記載してもらい、営業社員が後日アウトバウンド(電話でフォロー)して住宅購入を薦めるというやり方だった。その後、R社は営業手法を4ステップのトリガーマーケティングに変更することで、大きな成果を上げられるようになった。
 その仕組みは図の通りだ。見込み客に対して最大3通のDMを出すことになるが、ステップ毎にDMを出すか出さないかはトリガー(顧客の動作や行動)に基づいて判断している。
 住宅は高額商品で、条件が合えば短期間で購入が決まる場合があるが、購入の意思がない人に多額のDMコストをかけ続けられるほど利幅に余裕があるわけでない。無駄なコストをかけず、紙と電話のクロスコミュニケーションを実践できるというのがこの仕組みの利点だ。

STEP1:サンキューDM
 STEP1のトリガーは、モデルハウスで見込客が残した個人情報。この情報をもとに、来場者全員にサンキューDMを発送。DMには担当営業の顔写真や、営業担当が入力したメッセージを掲載。
STEP2:リマインドDM
 トリガーは、サンキューDMに対して「反応ナシ」という見込客の行動。反応しなかった見込客全員にリマインドDMを送付。サンキューDMに問合せがあった人は、営業マンがフォローする。リマインドDMには、モデルハウス来場時に営業マンが知りえた見込客の趣味嗜好性に合った写真を3点掲載。
STEP3:購入意欲の確認
 STEP3のトリガーは、見込客によるリマインドDMの受け取り。送付者全員に対して営業担当が電話をかけ、購入意欲を確認。「他社で購入済み」「購入を延期」という回答があれば、ここで接触を終了する。
STEP4:強力なオファーDM
 トリガーは、営業担当がアウトバウンドで見込客と対話する際、「まだ検討中」というキーワードをお客が発っするかどうか。このキーワードを発した人には、「あなただけ今だけ○十万円キャッシュバック」という強力なオファーで最後のプッシュを行う。

 この仕組みを成功させるには、各ステップ毎に見込客一人ひとりのトリガーをチェックして、どんな状態になっているかを把握し、営業担当とDM を担当する印刷会社がリアルタイムで情報を共有する仕組みが必須となる。R社では、この仕組みをWebシステム上で実現している。
 たとえば、STEP1で営業担当が見込客の情報を入力すると、直ちに印刷会社へ「誰にどのDMを発送すべきか」が伝わり、印刷会社がDM発送を終えると、営業担当の画面にDM発送完了のチェックが入る。また、営業担当が見込客にアウトバウンドすると、検討中ボックスにチェックが入り、印刷会社はその情報をもとに「強力なオファーDM」を発送するといった具合だ。
 このように、トリガーマーケティングのベースにテクノロジーは欠かせない。

パーソナライズWebで購入客のニーズをフォロー

 注文住宅販売会社R社では、戸建を購入したお客のフォローにも力を入れている。庭を改良したり、住宅設備を追加したり、大きなリフォームをするなど、住宅購入後にも様々なビジネス機会があるからだ。
 R社では、こうした受注機会を逸しないために、顧客一人ひとりのためにオリジナルのWebページを開設しており、画像やテキストの貼付けはテクノロジーを使ってほぼ自動化している。
 主な仕組みは以下の通りだ。

①パーソナライズWebのテンプレートは全顧客共通。

②コンテンツDBには、顧客毎の個人データが格納されており、
 「顧客Aさんは"ナチュラル好き"で"ガーデニングに興味がある"」といった個人的な嗜好情報が含まれている。

③コンテンツDB内には多くの画像素材が保存され、一つひとつの画像には「ナチュラル」等のキーワードと、
 説明用のテキストが付いている。

④個人の"好み"と画像の"キーワード"をマッチングすることで、AさんのパーソナライズWebには、
 Aさんが好む画像とテキストが自動的に貼り付けられる。

⑤パーソナライズWebには、「1の画像をクリックしたら次は3の画像を表示」等のトリガーが仕組まれている。
 「嗜好に合う自分だけのWebページ」が可能になることで、閲覧率が向上し、
 設備の購入やリフォーム工事の注文が増えているという。

 今回紹介した例は、個人情報保護法に抵触せずに日本でも実践できるトリガーマーケティングの例である。これ以外にも、顧客データを統計学の専門家が多変量解析することで精度の高いクラスタリングや購入予測モデリングを行う高度なトリガーマーケティングも実践され、成果を上げている。
 これからは日本市場に合った様々な「トリガー」を考えて、マーケティングの自動化を急ぐ必要があるだろう。

文/兼松 祐二(兼松経営株式会社)

まとめ

■海外ではトリガーマーケティングの導入と自動化が進んでいる。
■トリガーをもとに段階的なDMと電話フォローを実施することで、ムダな販促を防いでいる。
■ パーソナライズWebを活用して、購入客の新たなニーズの掘り起こしも図っている。

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