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世代を中心に設計するマーケティングの終焉 多様性が普通の現代でどうターゲティングするか

従来のマーケティングは、「ミレニアル世代」「Z世代」といった属性セグメントを中心に設計されてきました。しかし、デジタル社会の進展により、情報や価値観がボーダーレスになり、世代間の境界はかつてないほど曖昧に。これまでのターゲティングでは、多様化する個々のニーズや行動を捉えきれません。では、マーケティングはどのように時代の変化に対応すべきでしょうか?本記事では、個を深く理解する「N-1マーケティング」 と、共通の価値観や関心を持つ人々のつながりを促進する「コミュニティマーケティング」 の2つの手法に注目し、進化する現代のマーケティングに迫ります。
属性ターゲティングの限界
マーケティングでは長らく「世代」や「性別」といった属性を基準にターゲットを分類し、広告やプロモーションを展開する手法が一般的でした。「若者向けのSNS広告」や「シニア向け健康食品キャンペーン」などがその典型例です。ところが、こうしたターゲティングは実際の消費者像と乖離するケースが増えてきました。
その背後には、デジタル化の進展があります。かつては、テレビや新聞などの「マスメディア」から一方向に情報を受け取る時代でしたが、今や個人が自ら情報を選び、発信する「ソーシャルメディア」が主流に。SNSを通して多様な価値観や主張に触れることで個人の行動パターンが細分化し、世代といった固定的な分類では正確に捉えきれなくなっているのです。
総務省の「令和5年通信利用動向調査」によると、SNSの利用率は10代後半で90.3%、40代で89.5%、60代でも76.7%に達しており、5年前と比較すると、40代で18.9ポイント、60代では38.1ポイントも増加しています。このデータからも、SNSが世代を超えて広がり、共通の興味や価値観でつながることで、世代間の差異が薄れていることがわかります。
あいまいになった世代間の境界
音楽、ファッション、エンターテイメント、ライフスタイルなど、あらゆる分野で世代を超えた共感が生まれています。例えば、かつて音楽の嗜好は世代ごとに明確に分かれていましたが、近年は昭和の楽曲が若者に再評価され、リバイバルヒットが続いています。また、従来、マネジメントや経営はキャリアを積んだビジネスパーソンがその対象の中心でしたが、現代の若者は積極的に経営についても学び、それらの知識をもとに自ら起業することを現実的な選択肢として捉えています。
また、「推し活」はもともと若年層が中心でしたが、近年では老若男女問わず全世代に広がっています。推し活は単なる娯楽ではなく、自分の感性や個性を表現する手段。人物や作品を応援することで「自己実現欲求」を満たし、コミュニティを通じて一体感を持ち、「所属欲求」が満たされます。さらに、推しに関する知識を共有し、共感を得ることで「承認欲求」が満たされます。これは、世代を超えた共通の心理メカニズムと深く結びついているのです。
個に注目するN1マーケティングの可能性
多様性が重視される現代、人々は他者との違いを肯定し、自分自身を大切にするようになりました。近年、「自分らしさを大切にしたい」、「周りの人と同じである必要はない」と考える人がどの世代においても増加し、同じ年齢層や収入層での価値観や消費行動の多様化が進んでいます。その結果、一律のアプローチでは効果的なマーケティングが難しくなっているのです。
そこで注目すべきは、市場の最小単位である個人(N=1)です。実在する個人を起点に、背景や言動を徹底的に理解し、潜在的な欲求やインサイトを導き出すのが「N-1マーケティング」です。架空のペルソナではなく、実在の人物を深く分析することで、より具体的な課題や行動パターンが見えてきます。そして、N-1から得られる深い洞察は、実は多くの人に共通する本質的なニーズを探る手掛かりにもなるのです。
例えば、缶ビールの蓋が全開し、ジョッキのように泡が立つ「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」。その成功を支えたのが「これ、生じゃん!」というキャンペーンです。このフレーズは、あるYouTuberが動画内で思わず発した言葉を引用したもの。リアルな反応が視聴者の共感を呼び、キャンペーンの核となりました。アサヒビールは、実在する人物の言動を観察し、「働いた後自宅でリラックスしたい」「ちょっとした贅沢を楽しみたい」という心理に着目。「居酒屋の生ビールのような体験を自宅で楽しめる」というコンセプトをリアルな言葉を使いながら潜在欲求を刺激したのです。1人の実体験を深掘りし、多くの人に共通するニーズへと昇華させたこの取り組みは、まさにN-1マーケティングの成功例と言えます。
N-1マーケティングを実施する際には、いくつかの注意点もあります。1人の深層心理に深く入り込むという作業において、データ収集には倫理的な配慮を忘れず、個人情報の管理やプライバシーの保護、透明性の確保が不可欠です。また、発見したインサイトがどれくらい広がるかは予測が難しいため、ターゲット市場全体に適用できるかは慎重に分析し判断しなければなりません。さらに、社内の合意形成も課題の1つです。従来の大規模調査に慣れた企業では、N-1アプローチに懐疑的な声もあるため、実際には、N-1から得た情報と、定量調査から得られるメタ情報を組みあわせて組織全体で共有し、理解を得ることが必要です。
絶対的ファンの力で拡大するコミュニティマーケティング
一方、「コミュニティマーケティング」は、製品やサービスに魅了されたファンが交流する場を形成し、そこから得られた洞察を施策につなげます。主役はあくまでメンバーで、企業はサポート役に徹します。企業との関係強化に主眼を置く「ユーザー会」や報酬を受けてブランドを広める「アンバサダー」とは異なり、ファン同士が自発的に情報を交換します。この会話を深く観察することがコミュニティマーケティングの要です。
コミュニティの形成と育成には、3つのステップがあります。第1段階は「着火」、つまりコミュニティの立ち上げです。熱心なファンの中からリーダーや初期メンバーを見つけ、彼らを中心に活動を開始します。効果を図る指標は「リーダーとコミュニティメンバーの数の拡大」です。第2段階は「増幅」、コミュニティの活性化です。メンバーがSNSで知識や経験を積極的に発信することで、多くの人が参加しやすくなります。ここでは「リーダーとメンバーのソーシャル発信数の拡大」を効果指標とし、交流の活性化を図ります。第3段階の「拡大」では、コミュニティの規模を広げ、特定のテーマや地域ごとにサブグループを形成することで、各々が独自の価値を生み出し、より多様なつながりを構築します。
コミュニティの成長には、コミュニティリーダーとなり、ブランドの価値や熱量を発信してくれる「絶対的ファン」が不可欠です。彼らはコミュニティに影響を与え、活性化の原動力となるため、SNSの発信力やリテラシーを見極め、適切な役割を与えることが成功の鍵となります。
AWS(アマゾンウェブサービス)は、認定資格を持つ技術者からコミュニティリーダーを発掘。熱心なナレッジ共有者を「AWSヒーロー」として表彰し、技術情報の先行提供やイベント登壇の機会を提供、SNS発信や技術ブログの支援を行いました。その後、JAWS(日本のコミュニティの名称)の活動を全国規模で展開、さらにテーマごとにサブグループを形成。グローバルサミットではリーダー間の交流を促し、コミュニティをさらに拡大。AWSの価値を広めるファンを増幅し、大きな広告宣伝投資をせずに新規顧客の獲得に成功しています。
また、アウトドアブランドのスノーピークは、キャンプイベント「THE SNOW PEAK WAY」の参加者からコ
アメンバーを発掘。優良顧客をアンバサダーに任命し、新製品の先行利用やキャンプ場の提供を通じてSNSでの発信を促しました。さらに公式SNSでのシェアやキャンプテクニックの動画制作支援を行い、活性化を促進。地域別キャンプミーティングやオンラインコミュニティの運営を支援することで拡大した結果、「スノーピーカー」とも呼ばれる熱狂的なファンを拡大し続けています。
これからの時代のターゲティング
B2C、B2B問わず、その深層心理まで含めて顧客を深く理解することは現代のマーケティングに不可欠です。B2Cでは顧客の声や行動から潜在的なニーズを汲み取り、B2Bでは、意思決定者の価値観や課題はもちろん、その組織を深く理解することからすべてが始まります。
顧客理解とは、行動や嗜好だけでなく、彼らの課題や求める解決策、価値観や文化的背景までを捉えること。例えばキャンプ用品なら、商品の機能や特性において好まれている点だけでなく、「日常を離れ、自然に癒されたい」「家族と特別な時間を過ごしたい」といった感情や心理を理解し、発信するメッセージへと転換することで、より深い共感を生みます。
「ターゲティング」という行為は、属性によるセグメンテーションと親和性が高い一方、N-1マーケティングやコミュニティマーティングにはあまり適していません。むしろ、「真の顧客」や「ブランド愛好者」を探すという行為がターゲティングに置き換わっていくのです。
世代という枠組みが意味をなさなくなった今、属性に頼るのではなく、個々のニーズや購買行動を深く理解することが求められます。そのためには、N-1マーケティングやコミュニティマーケティングなどを従来のマーケティング手法に組み合わせて活用、継続的で組織的な顧客理解をしていくことが重要です。顧客のニーズや期待は変化し続け、競合や社会情勢の影響も受けます。だからこそ、定期的な接点を持ち、価値観や行動を把握しながら得たインサイトをマーケティングに反映させることが重要なのです。その積み重ねが、これからの企業の競争力を支える力となるでしょう。
(アイデアウイルス編集部)
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