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デザイン NEW2024年7月10日

「いいデザイン」を生み出すコミュニケーション① デザインは対話で磨かれる! 広がるアイデアと世界観

 「デザイン」と聞いて、何をイメージしますか? アーティスト・スタイリッシュ・敷居が高い...など、いわゆる「アート」に近いイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかし、デザインは美しいビジュアルを作ることだけを指す言葉ではありません。デザインとは要するに課題解決のための手段のひとつです。「冷蔵庫にある具材で夕飯を考える」「友人のプレゼントを選ぶ」といった普段の何気ない行動もデザインであり、実は誰にとっても身近なのです。  それでは「いいデザイン」とは一体何なのでしょうか?「いいデザイン」をつくり上げるために、クライアントはデザイナーにどう依頼すればよいのでしょうか?幅広い視点で深堀していきたいと思います。

「いいデザイン」のカギを握る「世界観」

 「おしゃれなコーヒーショップの看板」「誰もが手にとりやすいシンプルな生活雑貨」など、街中には素敵なデザインが溢れています。デザインソフトやアプリケーションが目まぐるしい進化を遂げたことで、ある程度のクオリティを保ったデザインは比較的誰でも簡単に作ることができる時代となりました。これは一見喜ばしいことのように思えますが、デザインで差別化を図るということが難しくなっているという側面もあります。そんな中でも多くの人の目に留まり、心を惹きつける、つまり「いいデザイン」を生み出すにはどうすればよいのでしょうか。
 デザインにもトレンドがあります。近年では生成AIを用いた先鋭的でスタイリッシュなデザインを目にする機会も多くなりました。しかし、流行やトレンドが全て正しいというわけではありません。どれだけ美しいビジュアルであってもデザインの目的、すなわち「伝えたいこと」と表現がマッチしていなければいいデザインとは言えません。むしろ伝えたいことと相反するビジュアルになっていた場合、見る人に誤った印象を与えてしまう可能性もあります。まずはデザインの目的や伝えたいことを明確にしてから、コンセプトに沿ったデザインを作っていくことが大切です。そして、その過程の中で「世界観」をどれだけ作り込むことができるかどうかが「いいデザイン」を生み出すための重要なポイントです。
 ここで言う「世界観」は、本来の意味とは異なり、俗に言う、その作品がまとう「雰囲気」や与える「印象」のこと。デザインにおいて世界観が作り込まれている状態とは、「フォント」「色」「空間」「音楽」「プロダクト」など、ありとあらゆる要素すべてに一定の法則性があり、誰が見ても同じ印象を持つことです。"アート"は一つのビジュアルに対して複数の解釈が生まれることが醍醐味のひとつですが、"デザイン"の場合、伝えるべきことは明確で唯一なので、見た人全員の解釈が同じであれば、世界観が作り込まれている、すなわち「いいデザイン」であると言えるでしょう。

「対話」がデザインをつくる

「世界観」が伝わる「いいデザイン」を生み出すためには、デザイナー本人の力量も勿論ですが、クライアントとデザイナーがいかに良質な対話(コミュニケーション)を重ねられるかが重要です。対話の目的は、デザインで伝えたいことを明確にし、双方の認識を合わせることです。
 しかし対話をするといっても、具体的に何をどのように伝えるべきなのか分からないという方も多いのではないでしょうか。「デザインの専門知識もないのにどうすれば?」と悩むお声も時折耳にしますが、はじめから完璧な指示をする必要はありません。例え具体的なイメージが定まりきっていなくても、まずは何を伝えたいのか?今回のデザイン制作の目的は何か?ということについて、掘り下げるところからはじめてみましょう。自社の立ち位置や現場の熱量など、文面だけではだけではなかなか伝わりづらい感覚的な部分も含めてありのままデザイナーに伝えてみることで、互いに理解が深まり、デザインの方向性がぶれることは少なくなります。「言葉で伝えるのがどうしても苦手」という方は、自分の中のイメージに近いデザインを参考資料として集めておき、打合せの際に共有するというのもおすすめです。

架空のビジュアルを例に考える

 もし、ことばの解釈や認識にズレがある状態で、対話を十分にしないままデザイン制作を進めると一体どのようなことが起きるのか、架空のビジュアルをもとに検証してみましょう。
 クライアントからの依頼の概要は「夏のハワイ旅行キャンペーンバナー」、具体的な要望は「いろんな色を使ってカラフルに」「支給したコピーを使って欲しい」「20%オフを強調したい」の3点であると仮定します。この情報を受け取り、そこから対話をしないまま制作したデザインがBefore、対話を重ねてから制作したデザインがAfterです。

 Beforeは、クライアントの要望をデザイナーが資料の文面のみで解釈して進めています。要望通りカラフルな色合いで、支給されたコピーも全てきっちり入っている状態ですが、全体的に情報量が多くてまとまりがないため、何を伝えたいのかもはっきりしない印象です。
 対してAfter は、資料から得た情報をデザイナーが自分なりに解釈したうえで、クライアントと対話し、深堀してから制作したものです。「いろんな色を使って欲しい」というクライアントの当初の要望は、対話によって「20代女性に刺さる楽しげで華やかな雰囲気にしたい」が本意であると分かり、デザイナーはイラストや写真を加えるというデザイン的判断をとることができました。コピーも、クライアント支給の文字数をそのままデザインに落とし込むと情報量が多く伝わりづらい、と認識を予め擦り合わせられたため、実際の制作時には情報を取捨選択してすっきり見せることができました。
 文面からだけでは汲み取れない意図や情報が対話で浮き彫りになることで、「それなら当初とは違うけどこっちの方向で進めよう」と、デザインを洗練させていくことができますよね。あくまで一例であり、この方法が正解というわけではありませんが、大事なのは対話でのブラッシュアップを重ねてデザインの解像度を高めていくことです。こうした過程を経て、ビジュアル面におけるクオリティだけでなく、「売上の向上」や「認知度の拡大」といったデザインの本来の目的である「課題解決」を叶えるデザインが生まれます。

終わりに

 「いいデザイン」づくりは、クライアントとデザイナーの双方がそれぞれの立場で話し合いを重ねることで生まれるコミュニケーションから始まります。何気ない一言や些細な疑問をきっかけに話が広がり、ありそうでなかった発想に近づいた...というように、根底にある「課題」を双方が正しく捉えた状態で重ねた対話は、既存の考えにとらわれないアイデアが生まれるきっかけになるでしょう。こうした柔軟な発想で調整したデザインが人の心を動かし、行動を起こすきっかけになり、「商品が売れる」「サービスの利用者が増える」といった目的の達成に繋がるのです。

(株式会社フジプラス)

まとめ

■デザインとは課題解決のための手段のひとつ。
■「いいデザイン」を生み出すカギは「良質な対話」にある。
■対話を重ね、柔軟な発想で作り上げたデザインが人の心を動かし、課題解決に繋がる。

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