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デザイン NEW2025年1月10日

「いいデザイン」を生み出すコミュニケーション③ もう悩まない!本質からブレないデザインづくりの秘訣は「軸」の共通認識


 「いいデザイン」の定義は、連載第1回では「世界観の伝わるデザイン」、第2回では「説得力があり購買意欲をかき立てるデザイン」であるとお伝えしてきました。
 しかし、この2つの条件を満たしているつもりなのに、なぜかクライアントの社内で提案が通らない...ということはありませんか?今回は全3回の連載の総まとめとして、いいデザインを紐解くキーワードである"良質な対話"を、デザイナーとクライアントの間でどのように重ねると、クライアントが納得できる、つまり「提案が通るデザイン」ができるのか、またその過程で意識すべき「軸」について解説します。

「提案が通るデザイン」とは

 そもそも、提案が通るデザインの条件とはなんでしょうか。例えば、コンセプトが明確に伝わること、プロダクトやシチュエーションにふさわしいこと、さらに、構成する要素すべてに説得力がある、ということも大切です。いずれも前回、前々回にお伝えした「いいデザイン」を形作る要素の一つであり、これらが揃っていれば、クライアントの社内で意思決定が進みやすく、各個人の好みだけで判断されてしまうこともありません。

デザインの「軸」を見つけよう

 デザイン制作に際して「意図が上層部に正しく伝わらず、ふりだしに戻った」「案件に直接関わりのない人からの意見をやみくもに取り入れた結果、本来の目的から外れた仕上がりになってしまった」という壁にぶつかった経験がある方もいらっしゃることでしょう。この壁を乗り越えるための重要なヒントは、制作に関わる人全員が必ず「軸」を共通認識として持っておくことです。この軸とはつまり、デザインの目的と方向性のこと。何のデザインにおいても、その目的は常に"課題解決"ですが、課題の中身はとにかく売れること、SNSで話題になること、イメージの刷新など、クライアントによってさまざまです。この課題が定まれば、自ずと目指すべき方向性が決まります。まず今回の軸は何なのか?ということをデザイナー・クライアント間の対話で見つけ出しておくことで、途中で本質からブレることがなくなります。
 軸を意識することで、デザインの意図を問われたり、途中で多様な意見が出たとしても、その都度本来の目的に立ち返って、相手を納得させる説明ができるはずです。

実際の過程に沿って考える

 では、軸を意識しながら「いいデザイン」をつくるとは具体的にどういうことなのか、制作の準備段階から完成までの過程に沿って考えてみましょう。特に注目すべき3つの段階は「ヒアリング」「プレゼンテーション」「ブラッシュアップ」です。
 案件がスタートすると、まずはクライアントに対してデザイナー側がヒアリングを行います。ヒアリングと言っても、ただ聞いているだけでは本当の課題は見えてきません。ここではクライアント自身も気付いていない潜在的なニーズを引き出し、デザインの軸を捉えることが重要です。そのためにはオリエンシートを活用するのも手段の一つ。販売時期やターゲット、コンセプトなどを1つのシートにまとめて可視化することによって、デザインの目的を双方の間で明確に認識することができます。もし事前情報のみで概ね方向性が見えている場合は、制作物のイメージラフや参考資料を用意することで、よりスムーズに進められるでしょう。
 ヒアリングで得た情報をもとにデザイナーが制作を行うと、次にクライアントにプレゼンテーションを行う段階に進みます。ここでもし複数案を出したいならば、コンセプトに対するデザイン的アプローチがそれぞれ異なるものを提案しましょう。色や書体などの違いのみでパターンを出してしまうと、「軸に沿っているかどうか」という本来の基準ではなく、単なる好みや印象だけで判断されてしまう可能性があるため注意が必要です。
 ベースが決まった後は、双方でやりとりを重ねてデザインをブラッシュアップしていきます。その過程で、さまざまな意見やフィードバックが集まることがありますが、ここでも意識すべきはデザインの軸です。
 例えば、植物を使った天然由来の化粧品のパンフレット制作、という状況であると仮定します。ナチュラルで環境に優しいブランドイメージを伝えるために、自然を連想させるグリーンをテーマカラーとして使用していたところ、突然「テーマカラーをグリーンからレッドに変更してはどうか」という声が上がったら、どうすればよいでしょうか。当然、単に否定しても理解は得られませんから、デザインの軸を根拠にグリーンにすべき理由を説明しましょう。大切なのは「なぜこのデザインなのか」ということを、クライアントとデザイナーの双方が軸に沿って正しく理解していることです。そうすることで初めて、デザインをよくするための良質な対話を行うことができます。
 このように、軸をどの過程においても意識し続けることで、いいデザインをつくりあげることができるのです。

おわりに

 いいデザインをつくり、そして提案を通すためには、デザインの目的と方向性を正しく捉えながら形にしていく過程が重要です。そのために「軸」という共通認識を持っておくことで、デザインに関する議論は、単なる好みの問題ではなく、より深いレベルでのコミュニケーションへと発展します。
 本連載では、デザイン制作のプロセスにおいてコミュニケーションが果たす役割の大きさをお伝えしてきました。いいデザインは、デザイナーとクライアントが共に作り上げていくものです。対面・オンラインを問わず良質な対話を重ねることができれば、最終的に「以前より売上が上がった」「ブランドの認知度が上がった」「サイトへの問い合わせが増えた」といったように、見た人の心を動かし、クライアントの期待に応えられるような、双方にとって満足のいくデザインを生み出すことができるでしょう。

(株式会社フジプラス)

まとめ

■デザインの目的や方向性=「軸」を明確にし、デザインの根拠とする。
■ヒアリング、プレゼンテーション、ブラッシュアップの各段階で軸を意識することで、円滑かつ良質な対話ができ、クライアントの理解を得られやすい。
■軸に基づいたデザインは、より大きな成果を生み出すことができる。

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