Idea4U+

お客様の「感動」を「つくる」ことを目的とした、
旬の情報満載の販促・マーケティング系コンテンツです。

Idea4U コンテンツ

ブランディング NEW2024年7月10日

企業のビジョンとBtoBブランディング③ 大切なのは正しく理解したビジョンを 個人レベルで日々実践すること

 これまでに、BtoBブランディングについては、企業文化の醸成にはビジョンの明確化が欠かせない、さらにそのビジョンの可視化が社内での理解を推し進めるという話を、想像しやすい例えを引用しつつ解説してきました。ところが、「ビジョンの文言には共感できるけど、具体的に私は何をすればいいんだろう?」という現象は、なぜ起こるのでしょう。理論的には、ブランディングと関連して理解すれば生じないはずですが、現実的には途中でブレがちです。仕事として見えやすい範囲に意識が向き、日々のタスクを追いかけるうちに、ビジョンとの関連を見失ってしまうのも一因でしょう。解決には、ビジョンを個人のアクションプランに落とし込むことが不可欠という考えを軸に、お伝えしていきます。

いつもより視点を高くして見える範囲を広げてみる

 BtoBビジネスでは、お客様とその先のお客様、という1つ先のゴール地点を想定して動くべきなのは当然ですが、特に即座に結論を求められる課題に対処する時には「目の前の直接的なお客様」しか見えなくなってしまうのも、経験上理解できます。本来、ビジョンは全てを包摂するものなので、矛盾は生じないはずですが、現実は違います。この乖離は何に起因するのか、把握しておきましょう。通常は、全体のビジョンから落とし込まれた部門別目標が設定され、それを元に個人のアクションプランを構築します。各自が「ちゃんと理解できている」前提でアクションプランを決定し、それを遂行するには、決めた目標そのものだけでなく、常に根っこである全体のビジョンを意識し続けることが欠かせません。つまり、視点を高くすることで、見渡せる範囲を広げること。これによって、会社全体の中で自分が担う役割とその意味を正しく把握できれば、「迷子」にはならないということなのです。

地道な取り組みこそが肝心!習慣化で精度を上げる

 管理職等のマネジメント層はともかく、一般社員にとっては、経営方針やビジョンを、いきなり「自分ごと」として捉えるのは難しいものです。最初のうちは、先にふれた個人のアクションプランに基づき行動するたびに、会社として目指す方向性(事前に文言として理解した内容)に照らして正しいかどうか、確認する習慣化が大事です。この地道な積み重ねこそが、ブランディングを肌感覚で分かるレベルにまで、体に覚え込ませる近道とも言えるのです。「継続は力なり」の実践です。極端な話、感覚的にブランディング感覚を獲得することができれば、新入社員であろうと、経営層や管理職からの指示なしでも、正しい方向に自走できるようになる、という理屈です。個人のアクションプランを遂行し目標達成することも、パーソナルブランディングのひとつのプロセスなのです。

 連載②では、架空企業のビジョンを起点に、エンドユーザーの笑顔を生み出す要素として、「安心感」「幸福感」という2つのベネフィットに着目し、ビジョンを分解して具体化するプロセスから、「自分たちらしさ」の追求についてふれました。とかくブランディングでつきものの「成果が見えない」「達成度が測れない」といった「数字的指標がわからない問題」も、ビジョンから始まる経営的視点で捉えることで、実はそうではない、とも言えるでしょう。今回も引き続き、「フルーツで笑顔あふれる世界を作りつづける」というビジョンを掲げる架空のα社の例で、アクションプランとの関係を解説していきます。組織に所属する個人として自分と向き合い、自身との内なる対話から目標達成に向かう姿勢を、検証例として取り上げてみました。

架空企業の例から考える1
個人への落とし込み その1 顧客接点あり営業部門なら

 1人目は、営業部門のAさんです。小売店舗やカフェやレストラン等の飲食店を担当し、会社のビジョンから自分の役割として具体化し、「継続受注をいただくため」自分ができることとして、必要なことを書き出し整理してみました。そこで気付いたのは、これまで工夫して営業活動をしてきたものの客観的検証が皆無だったこと。過去のやり取りを振り返り、「何をすればお客様に喜んでもらえるのか?」「その先のお客様をフルーツで笑顔にする企画とは?」のヒントを探ることにしました。

●自らの気付きを機に、ビジョンに基づく年間のアクションプランに反映。過去の検証から得た課題に対応するため、進捗の可視化を兼ねてタスク管理表を作成し、着実に進める仕組みを構築。(資料1参照)

 お客様が新アイデアを出し続ける負担感の話をされていたことを思い出し、これを解決すれば信頼度も高まると考えました。ネット検索に加え、自ら街を歩いて調べた情報から提案資料を作成しました。以前は良かれと思って、集めたそのままの状態でありったけの量の資料を渡していましたが、今思えば情報過多はかえって不親切でした。むしろ、お客様に合った内容を個別に抽出して、商品情報の先にある「売り方提案」に徹したことで、「ここまで考えてくれたのか」という信頼感につながりました。

架空企業の例から考える2
個人への落とし込み その2 人事・管理部門なら

 2人目は、人事・管理部門の管理職Bさんです。これまでは、事務処理や採用関係の対応で手いっぱいだったのですが、自社のビジョンについて理解する機会を得て視点が変わりました。自分が果たすべき役割のゴールイメージは、各部門のメンバー個々人が、ビジョンを自分ごととして捉え行動できる「環境」を整えることでした。社内で聞こえてくる「大きな目標を持ちたいけど、目の前の仕事だけでキャパオーバー」という声も、なぜそういう発想に至るのか探ってみようと思いました。

●日々の業務に溺れがちなメンバーに対し、前向きな思考が持てるよう促すことを優先。個別面談や定期的なビジョン説明会を実施し、各自が中長期のキャリアプランを意識する大切さを発信。(資料2参照)

 自走できるメンバーは、既に自走して自分なりにビジョンを嚙み砕いて具体化し、課題抽出しながら個人のアクションプランにつなげる一方で、スタートすら切れず立ち止まっているメンバーには早急な対応が必要でした。何名かのヒアリングから、何が「壁」なのか理解したことで、「できない言い訳」ができない仕組み作りの必要性を感じました。Bさんが個別面談や説明会を実施し、直属の上司とは違う視点からのアドバイスで、自走する力を押し上げることができる確信を持ちました。

[終わりに]

 仮に一般社員が「会社全体としてのビジョンを実践するのは経営層の役目だ」と誤解したまま実務対応している場合は、自分たちが経営方針にどう関わり、どう貢献できているのか意識が及びません。せっかく仕事を頑張って、実際には日々貢献している事実があっても実感できないのは、会社にも本人にも非常にもったいない話です。逆に、関連付けを正しく理解できれば、成果に対して敏感になり達成感も芽生え、結果として会社全体の力になってブランド力も強まるはずです。

 一般社員も管理職、さらには経営層も、ビジョンに基づく各自のパーソナルブランディングを確立すれば、それらを束ねた時に「らしさ」の輪郭がはっきりし、だれが見ても解釈が同一化されます。社会の変化に伴い、企業に様々な意識改革が求められる中、「こういう企業と取引したい」という条件を明示する企業も少なくありません。これも、BtoBブランディングと絶妙な形で連動するため、BtoBブランディングの重要度はさらに高まるはずです。日々の積み重ねとして、お客様及びその先のお客様に対し正しい行動をした結果、目に見える成果となり、全員の力で社会から信頼される会社になれるのが理想です。ビジョンを具体的なアクションプランに反映させることも、ブランド力という「らしさ」をまとった強い組織になる手段と受け止め、胸を張って地道に取り組んでいきたいものです。

(株式会社フジプラス)

まとめ

■BtoBブランディングには、お客様とその先のお客様を意識する視点が欠かせない。
■各自の役割を明確にし、ビジョンとの関連を意識することが本来の仕事の質を高める。
■お付き合いするに値する企業として認められるためのブランディングという位置付けが重要。

あなたにオススメのコンテンツ