さまざまな「学び」に関心を持つシニアが増加中!
近年、「人生100年時代」とうたわれるようになり、長い老後をどう過ごすのか、という議論が盛んです。いわゆる現役をリタイアした後が、これまでより長くなることで、「なにかもう一つこれからできることを探そう」「これまで時間がなくてできなかったことをやる良い機会だ」という考え方が広がっています。「学び」というと、これまでは学生ぐらいの年代をイメージする方がほとんどだったはず。ただ、最近は社会人のリカレント教育(大人の学び直し)への動きも見られ、大人にとっての「学び」も一般化されつつあります。そしてさらに、仕事をする現役世代を終えたシニア層が、生きがいに近い感覚で「学び」に関心を持つ時代を迎えました。「学び」という言葉の定義も、大きく変容したと言えるでしょう。学生のようないわゆる「学習」でないところもポイント。生きがいにつながるのは同じでも、本格的な資格取得から、いわゆる習い事的なものまで、「学び」の形は様々です。
すでに拡大路線?シニアが求める「学び」あれこれ
わかりやすい例で言うと、美術館や博物館で行われるような、学芸員や外部の専門家による講座の参加者は、シニアの方々が中心ですね。テーマによって男女比の違いはあっても、平日は特に顕著です。しかも、その多くの方が、熱心にメモを取る姿からわかるように学びの意欲は非常に高いのです。これはほんの一例ですが、シニアが興味を持つ「学び」のパターンは、大まかに4方向に分類されているように思えます。
①資格取得のように試験対策が必要な本格的なレベルの学び
②長年憧れを抱きつつ実践できなかった夢をかなえるための学び
③好きでやっていたものの中断していることをもう一度やり直すための学び
④今だからこそ自分と向き合う手段としての学び
といったところです。シニアが学びたい気持ちになる切り口は、それまで歩んできた人生や価値観、自らの自己実現イメージによって、マトリックス的に果てしなく細かく散らばっているような印象です。
それぞれの「学び」の分類別注目ポイントとは?
①は、一生学び続けることで自らを高めたい欲求が強く、経済的にも比較的ゆとりがある方が中心でしょう。高度な資格取得を目的にしたり、中には、リタイア後に大学院進学まで希望する方もいらっしゃるものの、全体から言えば少数派。②は、ちょっとしたチャレンジカテゴリーです。度合いも基準も人それぞれですが、今まで踏み切れなかったことに挑むという共通項があります。スポーツや英語、料理など、「今さら習うなんて...」という気持ちから解放され「始めるのに遅すぎることなどない」と一歩踏み出せたら、さらに視界が広がっていきます。③は、ライフステージの中で、他を優先するため封印していた趣味だけに、いったんリスタートすると夢中になりやすいのも特徴でしょう。「学び」だけでなく「趣味」感覚が加わるからでしょうか。④は、自らの人生を振り返り「ココが苦手」と自覚していることの克服、解決が動機になりますが、やはり成果がわかりやすいものほど長く続くようです。
学びだけでないコミュニケーションの「場」として
この当事者の方とお話をして見えてきたことがあります。4種類の中では上記②に分類される方ですが、シニアの「学び」をビジネスとして考える上でのヒントとなりました。専門職として定年まで勤め上げた後、家庭の事情で日々の家事に多くの時間を費やすことになった60代女性のお話です。曜日感覚の欠如で体のリズムが崩れたこともあり、週に2日休みを設定し、自分のためだけに使う数時間を作ったそうです。その時間を使って学び直したかった英会話スクールへ。すると気持ちにメリハリができて笑顔が増え、英語自体も楽しくなり、数年続いているそうです。よくよく聞くと、英会話スクールの最初のカウンセリング時に彼女の思いを正しく汲み取り、ふさわしい学び方を提案したスタッフによるところが大きいのです。もちろん事後の細やかなサポートも重要。特にシニア層に対しては、個々人の事情を考慮した対応が、継続して学びたい気持ちと環境を整えることになるはずです。定期的になじみの顔のスタッフと会話を交わす、先生から英語を学ぶ、わかるとうれしい、気持ちもリフレッシュできる、ずっと来たくなる、という具合にぐるぐる回り続けているわけです。
「学び」から地域コミュニティが生まれ「生きがい」につながる
「学び」については、「ここまでやった!」という達成感や「ライバルは昨日の自分!」という追及の仕方で継続していく自己完結型が大多数だと思います。しかしながら、学んだことが自分の中で正しく機能し始めると、それを広めたい、友人にも薦めたい、もっと広くつながりたい、というコミュニケーションへの方向に目覚める方もいらっしゃいます。一人では行動が起こせなくても、発揮できる「場」さえあれば気軽に参加できる、というのが大切な視点。例えば地域のコミュニティの繋がりがあるところでは、住民交流イベント等も実施しやすいですね。企業という立場でシニアのためにできることの1つが、こうした「場」を設けることだと思います。「学びの場=共感+コミュニケーション+社会貢献の実感」。この公式を理解しておくことで、何かしら社会的課題を解決するきっかけになるはずです。シニア自らが「生きがい」を見つけ、それが原動力になって地域の絆を作り、新たなビジネスの芽が出てくるのは理想的ですね。「これをシニアに買ってもらおう!」という物売り発想では、なかなかうまくいきません。同じ目線になって初めて見えるもの。そこにヒントがあるのではないでしょうか。
ココに注目!
今回取り上げた学びについては、アクティブシニアの心の葛藤から積極的なチャレンジまで、あらゆる動機から行動につながっているのが特徴だと思います。ある程度の年齢以上になると、どうしても「残りの人生」という発想になるという意見が多くありました。ただ、それが行動の原動力になるのであれば、悪いことではありません。「これだけはやっておきたい」「今からでもちゃんと学びたい」という気持ちは、以前より長くなった老後を精神面でも充実させる切り札になるものです。漠然とした思いの背景にあるものを明確にして導く役割の「人」がすべての基軸になるのは確実です。シニア向けの学びに関わるサービスを考える上で、コンテンツの差よりも、対応のクオリティ、つまりはスタッフ力の影響力が大きいわけです。生きがい、共感、コミュニケーション、地域コミュニティ等がキーワードになってくると思います。
そこで、シルバ―ラボでは、独自の視点でシニアをカテゴライズし、傾向を割り出していわゆるペルソナ、つまりサービスや商品の典型的なユーザー像をまとめたシートを作成しました。vol.9「シニア×学び」がこちらです。例えば、この分類をベースに、実際には商材によってさらに絞り込んだり、ペルソナを細かく設定したりしながら販促のシナリオづくりをすることで、より現状に沿った施策が可能になります。
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