ギフト=フォーマルギフト?
ギフトと聞いて、思い浮かべるものも様々。冠婚葬祭のフォーマルギフトを想像する場合、お金を包むイメージだったり、しきたりやマナーとセットの印象を持つ方も多いようです。そして、一定以上の年齢の方は、必ずこうおっしゃいます。「最近は、結婚式に呼ばれる機会はほとんどなくて、行くのは葬式ばっかり」と。また、従来のシニア世代なら「贈答マナーはある程度分かっている」と自信ありだったのが、今では年齢を重ねても、「自信がないので、調べたり人に聞いたり」との答えが多数派です。情報過多な現代は、知れば知るほど迷い自信を失う、という危険性ありなのです。もちろん、地域差、家族構成、ライフスタイル(特に現役かリタイアか)や収入等の条件で、お付き合いの範囲も差が大きくなります。特にフォーマルギフトは、贈るたびに「現代の最新マナー」的なものを気にして悩むのは結構な負担でしょう。裏返して言えば、若い世代も、こうしたシニア世代に「何を送ったらいいのかわからない」と迷うわけで、お互いに同じ悩みをもって、例えばデパートのギフトコーナーに行って、両者ともに最終的にカタログギフトを買うことになる、ということもあり得るわけです。何を選んだら良いかわからない方にとって、ひとつの合理的な解決手段でもありますが、皆さん悩みどころのようです。
ギフトのカタチも千差万別
一方、世の中でギフトとみなされる範囲は、想像以上に広がっています。ここ数年で特に市場の層も厚く充実しているので、これを体感的にとらえているとしたら大正解!大規模イベントとして開催されるギフト関連の展示会でも年々カテゴリーが増えていく印象です。というのも、モノ起点で「これはギフトです」ではなく、コト起点で「こういう使い方をするとギフトです」という見方が広がり、同じ商品・サービスであっても、シーンによって(さらにはプロモーションの仕方によって)ギフトだったり一般の自家需要品だったりと変わるわけです。そういう動きになったからこそ、シニア世代でとらえ方の個人差も生まれているからかもしれません。というのも、「ギフトはあまり贈らない」と答えた方に、対面式で深堀りして質問していくと、「親戚の家に行くときは、必ず決まった手土産を買ってもっていく」「自分が好きな無添加のお出汁パックをまとめて買って、娘や友人にもあげることがある」等の具体的なギフトエピソードが出てきます。そう、しっかりギフトを贈っているのに、その意識がない方も少なくないのです。特にシニアは、感謝や気遣い、ちょっとした気持ち感覚で渡す食べ物ギフトが日常の中に溶け込んでいる印象です。
「孫消費」というギフトの存在感が上昇中
ここで、特にお孫さんがいらっしゃる方に着目してみましょう。彼らにとってのギフトの中で存在感を放つものの1つが、お孫さん関係だからです。「シニアの生活意識調査2019」では「孫消費」と表現されていましたが、この「孫消費」=ギフト、というのが現実的な位置づけです。興味深いデータがあります。最近1年間の「孫消費」で何にお金を使ったかの第1位は「おこづかい・お年玉・お祝い金」、第2位「一緒に外食」、第3位「おもちゃ・ゲーム」、第4位「本・絵本」、第5位「一緒に旅行・レジャー」、また、最近1年間で孫のために使った金額の平均は131,334円で2018年より3,065円増加という結果だったそうです。(「シニアの生活意識調査2019」/2019年9月4日 ソニー生命調べ ※シルバーラボが対象としている65~74歳よりも前後に幅広い50~79歳のシニア男女1,000名にアンケートした内容なので、年齢による多少のブレはあるかと思いますが。)ひとつの参考データとして、納得できるところも多いですね。かわいい孫のことなら、ついつい財布の紐がゆるむ、ということでしょう。
いわゆる贈りものとは違う体験型・共感型に注目!
先の調査結果の中で、何に使ったのかの質問で第1位「おこづかい・お年玉・お祝い金」は、贈る側、もらう側、両方に好都合ということでわかりやすいのですが、特に興味深いと思ったのは、第2位「一緒に外食」と第5位「一緒に旅行・レジャー」です。これらはいずれも、モノではなく、コトを贈っているケース。いずれも、体験型、共感型とも言える内容ですね。男女別に見ると、これら2つの項目で、共通して女性のほうが男性を大きく上回っています。一般的に、女性のほうが、日頃から「共感」重視の傾向があるので、ここにも表れている格好です。逆にモノを贈るケースでは、男性のほうが多いのです。「孫が欲しがるモノを買って喜ぶ姿を眺めたいおじいちゃんと、おいしいものを食べたり出かけたりして一緒に過ごすのを楽しむおばあちゃん」ということでしょうか。「孫消費」の観点から見えてきたのは、何に幸せを感じるか、という価値観の違いでした。その違いに着目することで、同じシニアの孫消費でも、性別アプローチのヒントが見えてくるかと思います。
コミュニケーションを促進するプチギフト
冒頭でもふれた、ギフトという響きがフォーマルギフトをまず思い浮かべる方にとっては、「え?これもギフトになるの?」という感覚かもしれませんが、今では身近な贈り物のほうが、バリエーションもシーンも豊富です。例えば、シニアは旅行好きな方が多いので、お互い負担にならない程度でのお土産のやり取りも盛んで、温泉饅頭だとか、各地の名物だとか、単価でいうと1,000~2,000円ぐらいがお手頃ゾーンです。仲良しシニア女性数名が集まり、お互いにお土産を交換し、お土産を入れて持ってきたサブバッグの量は結局変わらず、というほほえましい光景を目にすることも。そこに必ず旅のエピソードがくっついてきて会話も増え、共通の思い出話まで飛び出して笑いが絶えません。女性同士は特に、ちょっとしたお土産を買うのが好きで、「ついでに買っといたから、どうぞ」というコミュニケーションが得意なので、外に出て友人に会う頻度も高くなり、おしゃべりを楽しんだ結果、また元気になって...という好循環に至りやすいのかもしれません。実際、シニア女性は同性の友人同士で贈り合うケースが多いのは、こういう背景があるのでしょう。
ココに注目!
今回取り上げたシニアとギフトとの関係については、一般的にはどうしても贈られる対象としての議論が中心で、シニア自身が贈る立場という視点は取り上げられることは少ないですね。それに加え、かしこまった印象だったギフトが、もはや、贈りもの、お返しもの、旅行土産、プチギフト、ご挨拶レベルの手土産、はたまた孫とのコミュニケーション手段として独自に進化し、孫かわいさが原動力になりその進化を推し進めた張本人であるというところも理解しておくべきでしょう。
そこで、シルバ―ラボでは、独自の視点でシニアをカテゴライズし、傾向を割り出していわゆるペルソナ、つまりサービスや商品の典型的なユーザー像をまとめたシートを作成しました。vol.16「シニア×ギフト」がこちらです。例えば、この分類をベースに、実際には商材によってさらに絞り込んだり、ペルソナを細かく設定したりしながら販促のシナリオづくりをすることで、より現状に沿った施策が可能になります。
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