オーバースペック推奨でミスマッチ
ズラリと並ぶ最新家電を見るのは、本来は楽しいものです。中には壊れてやむを得ず買いに行くケースもあるでしょうが、「話題のあの実物を見てみたい」と好奇心で店頭に行く方も含め、世の家電量販店は、様々な属性の人でにぎわうお出かけスポットの1つですよね。ところが、その中で、疲れたような、困ったような表情のシニア世代もちらほら。以前、70代らしきシニア女性が電子レンジを探しているシーンで、こんな会話がなされていました。「こういう機能がありまして(あんなことができて、こんなこともできるetc)今ならこのお値段です。かなりお買い得ですよ」と丁寧に笑顔で対応する若い男性店員。しばらくやり取りがあった後、シニア女性が言い放ったのは、「そんなにややこしい機能はいらない。電子レンジはあっためるだけでいいの」。既に問題はお分かりですよね。店員さんは、よかれと思って、コスパの良い多機能機種を勧めたわけですが、そのシニア女性が最優先したいのはわかりやすさだったのです。会話の中で修正しきれずにすれ違った結果、困り顔のシニア女性が「もうちょっと考えてみます」という、実質「買いません」フレーズを残して去っていきました。
初心者前提のトークでミスマッチ
一方で、真逆の現象も起こります。それは、PCやカメラ等のデジタルツールの知識に一定程度自信を持っているシニア男性の例です。現役時代から趣味も含め、「いろいろわかっている自負」のある方に対して、年齢等見た目の印象で初心者扱いしないよう注意が必要なのです。これも、家電量販店での出来事ですが、イライラした様子の60代後半らしき男性の、「だから、それはわかってることなので」「いや、そういうことでなくて」というような声が聞こえてきました。デジタル大好きシニアの場合、既に持っているアイテムも十分ハイスペックなケースが多く、店員さんとの詳しい会話を求めてやってくる方も多いのです。ECサイトでも買える方が、あえてお店に行くのは、そういった理由があるにも関わらず、店員さんの間違った対応によって、「年取ってるから、そういう決めつけた態度なのか?」という不快感からイラついた口調になるのです。うまくコミュニケーションできた場合は、高額の最新機種を買うなど、非常に良いお客様となるはずの方です。補足しておきますが、家電量販店でこういう接客が頻発しているということでなく、テキパキとこなす店員さんたちが大半な中、たまにこういうミスマッチもあるという例にすぎませんので誤解なきよう。
優先事項を理解することの大切さ
このように両極端な2つの事例について述べてみましたが、シニア層の家電ニーズは、キッチンでの作業を楽にするミキサーやコーヒーメーカーのようなツールや、体力的な変化により重くて扱いにくかったものをコードレスタイプへの買い替え(掃除機やアイロンのような)も見逃せないところです。もちろん、経済状況や好奇心(新しいものへの抵抗感のなさ)の度合い等の条件にもよりますが、人気上昇中のロボット型掃除機や、声に反応するAIスピーカーのような、徹底的に便利さを求める最新技術を使ったアイテムも意外にもシニアからの注目度が高いようです。だからこそ、どれが自分の生活にふさわしいのか、便利な毎日にしてくれるのか、しかも扱いやすいのか、判断材料が欲しいわけですね。話を理解してくれて、ふさわしいアドバイスをしてくれる店員さんを求めて、お店に出向くきっかけはここなのです。そこで期待通りにいかない場合、あるいは外出の手間が惜しいという場合に、プロによるわかりやすい解説が強みのテレビ通販に頼っている、という状態なのかもしれません。(※テレビ通販についての詳細はここでは触れません)
家族構成と家電ニーズの関係
買い替えのタイミングというのも、経年劣化による「そろそろ新しいのにしよう」パターンもあれば、子供たちが自立して夫婦二人暮らしになったからとか、家族構成の変化による前向きなダウンサイジングの場合もあるでしょう。最近は、後者のケースもよく見聞きするようになりましたよね。もともと4人家族だった場合、4人向けの冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、オーブンのような、シニア夫婦二人暮らしには大きすぎる家電で不便を感じるようになると、適正サイズのものが欲しくなります。その流れで、お店側から「こういうものをこれに変えるともっと快適になりますよ、といったわかりやすい提案があれば、むしろ感謝されることになるはずです。もっと家事の負担が減る、軽くてコンパクトだから扱いやすい、使い方がシンプルで楽、日々の健康管理に役立つ、といった様々な切り口が、シニアの心をとらえる、ということでしょう。
人生100年時代の着眼点
人生100年時代と高らかに謳われ、これからますますシニアを取り巻く環境もライフスタイルも、どんどん変化し続けるのは確実です。これまでシニアと言えば、これまでは完全なるリタイア生活をイメージしていたはずなのですが、言ってみれば「老後のない人生」、つまり、いくつになっても働ける限り働き続ける人生、となるケースが増えるということ。シニアが働くのが当たり前、という世の中になれば、当然、日々の生活を支える家電に求めるものも、少しずつ変化していくでしょう。より長く健康でいられるよう、健康管理にいっそうシビアになればマッサージ関連や空気清浄機などに注目が集まるかもしれませんし、疲れが出ないよう限られた時間に効率良く家事がこなせる家電は男女関係なく関心が高まるはずです。このように、価値観の大転換が急速に進む中、シニアにとって「使ってみたい」「どうしても欲しい」の鍵がどこにあるのか、想像力を働かせながら、探っていく必要がありそうです。
ココに注目!
今回取り上げたシニアと家電との関係については、いろんな見方がありますが、各自が求める「これぐらいの便利さ」「これぐらいの操作のわかりやすさ」といった基準を会話の中から理解した接客が機能すれば理想的です。さまざまなタイプのシニアに対し、ふさわしい家電とのマッチングが、日常の困りごとの解決の糸口になりそうですね。また、テクノロジーがさらに社会でのシニアにお活躍を下支えする可能性もあると感じました。
そこで、シルバ―ラボでは、独自の視点でシニアをカテゴライズし、傾向を割り出していわゆるペルソナ、つまりサービスや商品の典型的なユーザー像をまとめたシートを作成しました。vol.18「シニア×家電」がこちらです。例えば、この分類をベースに、実際には商材によってさらに絞り込んだり、ペルソナを細かく設定したりしながら販促のシナリオづくりをすることで、より現状に沿った施策が可能になります。
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