「アクティブシニア」ホントのところ

2019年6月 6日

vol.10
シニア×中食

※写真はイメージです

実は「中食」市場がじわじわ拡大している

最近、「中食(なかしょく)」という言葉を耳にする機会が増えたような気がします。お店で食事をする「外食」でも、家庭で料理して食べる「内食」でもない、調理済み食品を自宅で食べるものを指す言葉です。お惣菜やお弁当、持ち帰りお寿司やサンドイッチ、さらには冷凍食品等さまざま、買うお店も、デパ地下や専門店、スーパー、コンビニ等幅広く、最近では都市部を中心に、エキナカと呼ばれる駅構内のついで買いスポットも増加しています。公表されている「外食市場調査(2017年4月~2018年3月):HOT PEPPER グルメ外食総研」のデータによると、首都圏、関西圏、東海圏の3圏域合計で、「中食」市場規模は前年度比で105.9%。首都圏に限ると、107.0%と増加傾向にあり、単価も上昇傾向です。性年代別の実態として興味深い数字は、20代女性(独身が多い)、40代女性(子育て世代)のほか、50代男性、60代男性の購入回数の伸び。プレシニアからシニアに該当する世代です。一人暮らしの男性が増えて、毎日外食だとお金もかかりすぎるし、かといって自分で料理はできないし、という事情を解決してくれるのが「中食」の位置づけなのでしょう。。

意外?納得?冷凍食品があれこれ「アツい」!

先にも触れた数ある中食バリエーションの中でも、スーパーやコンビニでの売り場スペースが拡大中の冷凍食品は、素材としての商品より、温めてそのまま食べられるものが中心です。かつては、お弁当のおかず用でも何でも、手作りの代替品(やむを得ず)だったという声もありました。ところが今や、冷凍食品のクオリティも上がり、「温めてお皿に盛り付けたら、家族に『今日はいつもよりおいしい』と言われた」と、笑うに笑えない話もあるのだとか。高級路線のパスタなどは、そのいい例でしょう。中にはシニア層の利用者増に合わせ、電子レンジで温めて食べるまでの動作や行動パターンから不便な点を割り出し、容器に工夫を加えるメーカーもあるようです。最近は、一番身近なコンビニでも冷凍食品が相当増えていると実感できます。今やコンビニを利用するシニア層も多く、一人暮らしや夫婦だけの世帯の方が冷凍食品を買っていくような買い方の変化も大きいですね。徒歩圏内のちょこっと買いに便利、という、魅力に気付いた結果とも言えます。

中食の内容も動機も、まさに千差万別!

マーケット全体で見ると、中食ニーズが増す理由として、大人も子供もスケジュールがぎっしりで、家族そろっての食事が難しくなり「個食化」が進んでいることもひとつ。シニア世代に限っては、単身、あるいが夫婦だけの世帯で、そもそもほぼ「個食」が前提のケースも多く、加えて雇用形態の変化により60代でも働き続ける方々も多い(総務省の労働力調査によると、2013年時点ですでに就業者の5人に1人が60歳以上)ことで、少人数の食事の支度に時間をかけるより、多少割高になっても仕事帰りにお惣菜やお弁当を買ったほうが合理的、という発想も当然と言えば当然。無理せず過ごすほうが賢明だと考えるわけです。収入やライフスタイルによって中食のとらえ方も利用動機も様々でしょうが、中食利用の機会は今後も増えていくでしょう。有名店の味を楽しむためのデパ地下のお惣菜から、メニューで悩む手間を省いて1食分カバーできるチェーン店のお弁当、程よい値ごろ感で便利なコンビニの冷凍焼きそば等々、「今の自分にちょうどいい食事」を選ぶにあたり、実食する直前まで決定の選択肢が限りなく広がっているようなイメージですね。

「やむを得ず中食」層にとっての課題解決とは?

料理の手間をなくしてその分何か別のことを楽しむとか、これまでの義務的な料理から解放されたので気分転換に、という方にとっての「中食」は、どこかしら体験型消費に近い感覚があるかもしれません。おいしいものや話題のものを食べる好奇心と、自分の都合がうまく合致して、一番身近な楽しみになっていくというもの。ところが、「持ち帰って食べるほかに選択肢がないから」という方もいらっしゃるわけです。例えば、もともと単身世帯で過ごしてきて、以前は多少自炊もしていたものの、もう面倒で自分ではもう料理しないという、多くはシニア男性のケース。先に若干ふれたように、経済的理由だったり、単に同じようなメニュー続きでは飽きるので外食だけというわけにはいかず、消去法的にスーパーやお弁当屋さんで買って帰る方も少なくないはず。彼らのリアルな価値観や経済状況、行動パターンを正しく理解し、日々の食事の負担が少しでも「楽」になるような環境を作ることで彼らを救うことになれば、新たなビジネスが生まれるかもしれません。

不便を解決してくれる+便利+おいしい=共感の連鎖

都市部でのシニア世代の動きは、雇用延長に伴う「仕事帰りのついで買い」のような利便性に後押しされている側面もあります。一方、地方ではまた別の兆しが見られます。最近になって、商店街にある総菜屋さんや地元密着の小規模食品スーパーが個性を打ち出すことで見直されたり、地方のシニアの間でも日常的なコンビニ利用が増えるなど、徒歩圏内にあるお店が再注目されているようです。都市部では徒歩や自転車でスーパーへというシーンが多い一方、地方は車が一般的ですし、そこは基本的には変わっていません。ところが、シニア層に限ると、高齢ドライバーの逆走や事故の問題もあって、本人、それ以上に家族の不安が増し、移動に関する考え方が根本から変化し始めています。免許返納しても日常生活が送れるようなインフラであるとか、行動範囲の整備に知恵を絞り始めている中で、決して大型スーパーのように「なんでもある」という品ぞろえでなく、最安値でなくとも、シニアが望む商品がある程度揃っていて使い勝手の良いロケーションが、「わかってくれている」→「また行きたい」という共感の連鎖を引き起こすのです。

ココに注目!

今回取り上げた中食については、当然、年齢と共に変わる家族構成やライフスタイル等によって、買うアイテムのカテゴリーやお店、さらには買う単価や頻度にも違いが生じます。シニア向けの中食ビジネスについて考える時、モノ目線で考えると既成概念にとらわれて限界があります。日常の不便をさりげなく解決し、当事者であるシニアがそれぞれ別の立場で「なんとなく便利」「なんとなく楽ちん」と思える状態を追求すること目線が重要だと思います。その商品(手に入れるプロセスを含む)があることで助かる物理的、心理的なポイントから紐解くと、答えに近いものが見つかるかもしれません。

そこで、シルバ―ラボでは、独自の視点でシニアをカテゴライズし、傾向を割り出していわゆるペルソナ、つまりサービスや商品の典型的なユーザー像をまとめたシートを作成しました。vol.10「シニア×中食」がこちらです。例えば、この分類をベースに、実際には商材によってさらに絞り込んだり、ペルソナを細かく設定したりしながら販促のシナリオづくりをすることで、より現状に沿った施策が可能になります。

お問い合わせフォーム

あわせて読みたい記事

シルバーラボのサービス一覧


当HPは様々な方に見やすい配慮をしたデザインとなっています。