シニアに人気のエンタメって?
エンタメと聞いて思い浮かぶものも人それぞれでしょうが、ここでは、何かしら娯楽要素のある楽しみ全般をエンターテイメント(以下、エンタメ)としてとらえ、話を展開していきます。シニア世代の方々にお話を伺って気付くのは、同じエンタメの楽しみ方でも、いくつかの切り口でカテゴライズすると、より具体的に見えてくる傾向があります。その1つを[カテゴライズA]とすると、①若い頃からずっと好きで今も好きなのか、②ライフスタイルが変化した最近になってから好きになったかという切り口です。①の場合は、日常生活に入り込んでいるため、「あって当たり前」の楽しみになっています。一方、②の場合は、何かのきっかけで一気に夢中になるケースが多いのですが、急激に盛り上がったものは覚めるのも早く、次々と新たな楽しみ方を追い求めていく方もいらっしゃるようで。また、別の[カテゴライズB]とすると、①体感+盛り上がる、②観る+心に響く という分け方になりそうです。①は、スポーツ観戦、カラオケ、コンサートのように、自らが興奮のうちに過ごすもの、②は、映画、観劇、美術鑑賞、植物園見学等、心の満足感を得られるものです。この[A]と[B]の要素の掛け算で見てみると、[A]②×[B]①に該当する方が、消費者として一番活動が活発かもしれません。
シニアとスポーツ観戦のいい関係?
スポーツ観戦と言えば若い世代!と思ったら大間違いです。例えばプロ野球観戦に足を運ぶと、客席の風景にまず驚くはず。テレビ中継で映し出される観客席のイメージで判断してはいけません。なるほど、テレビ的には若くてきれいな女性や、お子さん連れファミリーが映しがちな気がしますが、実際にはシニア世代も多い印象です。球場と言えば、階段だらけで移動も大変ですが、それでも行くわけですから本気ですよね。関西のとある球団のホームゲームでは、背番号入りレプリカユニフォームを着て、メガホンを持って応援する60代後半らしき女性グループも珍しくありません。彼女たちは、しっかり食べ、応援し、その隙間におしゃべりして楽しんで過ごします。ちなみに、高齢者・障害者のスポーツ観戦に関するアンケート(第一生命経済研究所ニュースリリース2017年7月10日 /インターネット調査、対象:20~69歳の男女1,600人[うち60代は男性11.0%、女性11.8%])によると「観戦することが好きなスポーツ」は、60代男性では、1位野球、2位サッカー、60代女性では、1位スケート、2位野球との結果に。シニア女性の野球観戦好きの裏付けられています。女性の1位のスケートですが、以前、オリンピックのメダリストが凱旋するショーの会場で、意外にも60代女性の姿が多いのに驚いた記憶がよみがえりました。お気に入りの選手への花束を用意し、応援グッズを手にして瞳はキラキラ輝いていました。これが若さキープの秘訣なの?と思ったほどです。
エンタメ=ストレス発散+達成感?
スポーツとは別の方向ですが、エネルギーが炸裂しているカテゴリーがあります。その一例が、カラオケ。普通にただ歌うだけでは満足いかず、カラオケ教室のようなところで歌唱法を学んだり、カラオケ大会用の舞台衣装を作るような本気度の高い方もいらっしゃいます。また、女性の場合、スーパー銭湯で、お風呂や食事はもちろんのこと、お気に入りのご当地系男性アイドルのショーを楽しむような、形は従来型でも切り口は新しい形のエンタメも人気です。まるで恋する乙女の表情になっている姿は、なんともかわいく見えますね。これらはいずれも、一時的に別世界に没頭するタイプの、現実逃避型ストレス発散の一種かもしれませんが、極端にのめり込まない限りは問題のない現実逃避です。応援して育てていく達成感のような感覚が、クセになるんだそうです。
お得に遊ぶ「技」もおまかせ!
東西の有名なアミューズメントパークの年間パスポート(通称「年間パス」)が、世の中に浸透するにしたがって、この「何度でも好きな時に行ける」という価値に着目した施設が増えています。ネット上で、年間パスというキーワードで検索すると、上位には観光施設がずらり。アミューズメントパークに限らず、美術館や水族館、動物園や植物園にまで広がっています。特に美術館や植物園では、年間パスを購入するシニアもじわじわ増えているようで。しかもこれ、シニアのように時間に余裕があって頻繁に行く方には、かなりお得な価格設定(に見えますし、事実そうですが...)。でも、施設側は損をするどころか恩恵を受けている様相です。例えば、美術館のミュージアムグッズ売り場の賑わいを見れば納得。絵葉書、クリアファイル、ミニふろしき、マグネット、焼き菓子など、限定グッズは飛ぶように売れていきます。ご自身の記念品に加え、ここでも「お土産を買っていこう」という心理が働きやすいシニアに来てもらうのは大歓迎なのだと思います。
人と会い楽しみを共有する=元気のモト
楽しみ方はいろいろあれど、シニアにとって、自らすすんで「行きたい!」と思える場所があることは、喜ばしいことです。定期的に外で人と会い、話をし、笑い合う。年齢に関係なく、周りへの好奇心を持ち続け、ちょっと大げさに言うならば「一度きりの人生だから楽しまなくては!」と思えることは、生きる力の源です。エンタメは、心も体も元気でいられるスイッチなのかもしれませんね。外出するということは、他者と関わる空間に身を置くということ。ですから、人と関わるのが面倒だ、という発想になると、外出もままならなくなります。だからこそ、気軽に会える仲間を持つことが、心身の健康を保つ秘訣になるわけですね。人によっては、一人で楽しむ娯楽もありですが、何かちょっとした感動や気付きをだれかと共有することで、何よりも心の栄養になるのではないでしょうか。
ココに注目!
今回取り上げたシニアとエンタメとの関係については、ついシニアならではの現象を探してしまいがちですが、探れば探るほど、他世代との違いより共通項が印象的でした。あえて違いがあるとすれば、その熱意の濃度ぐらいでしょう。「この年になったら、好きなようにやる!」と、むしろ夢中になりやすいのです。いずれにせよ、アイドルを追いかけるのも、好きなスポーツ選手を応援するのも「楽しいから」以外の何でもなく、楽しみを求める人間の本質は変わらないという再確認となりました。
そこで、シルバ―ラボでは、独自の視点でシニアをカテゴライズし、傾向を割り出していわゆるペルソナ、つまりサービスや商品の典型的なユーザー像をまとめたシートを作成しました。vol.17「シニア×エンタメ」がこちらです。例えば、この分類をベースに、実際には商材によってさらに絞り込んだり、ペルソナを細かく設定したりしながら販促のシナリオづくりをすることで、より現状に沿った施策が可能になります。
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