身近で頻度も高い買い物といえば食品
食品スーパーと聞いた時、例えばエリア限定の小規模店、品ぞろえが自慢の大型チェーン店、こだわり食材が多く揃う高級路線のお店まで、頭に浮かぶお店のスタイルも様々でしょう。ただし、目的は、あくまでも食品を買う、ということで共通。(日用品等の関連アイテムはありますが商品はあっても、食が基軸)。生きていく上で食べることと無縁でいられませんから、食品を買うという消費行動は、何より身近で頻度が高いものだと、数字が物語っています。内閣府の『平成30年度高齢者の住宅と生活環境に関する調査』(全国の60歳以上の男女3,000人が対象)によると、外出の主な目的は男女ともに「近所のスーパーや商店での買い物」が最も多いという結果に。複数回答形式で、男性71.5%、女性88.7%にのぼります。年代別に細かく見た場合、特に65~69歳が男女ともに最多で、男性78.5%、女性95.2%。女性の場合、70~74歳でも91.7%という驚きの結果です。この数字には食品スーパー以外のお店も含まれているでしょうが、食品を買いに外出するという行動を数値化したものとして注目に値します。
シニアだからって同じじゃない!それぞれのニーズ
同じシニアでも、居住エリア(都市部か地方か)、アクセス手段、家族構成等の事情によって、食品を買うシーンも様々です。彼らの行動を想像する時、都市部に住む人には都市部のシニアの行動はイメージしやすくても、地方の状況は見えにくく、逆もまた然りです。見えにくい部分こそ丁寧に見ていかない限り、真の姿は見えてこないので、マーケティング施策を検討する際は「思い込み」で動かないことが大切です。まずは事実を理解して、あらゆるケースを想定してから、具体的に絞り込むのが正攻法です。例えば、都市部で徒歩圏内に食品スーパーが複数ある場合、通常はA店に行くけど、たまにちょっと離れているB店にも行く、という方もいらっしゃいます。アクセス的にも品揃え的にもA店のほうが都合が良いけど、「これだけはB店にしかないから」というのも動機になるからです。一方、地方で買い物は必ず車で行くという場合、そもそも買いまわりが基本であることも。それこそ、夫婦のみの世帯なら量も知れていますが、三世代同居世帯で家事分担がある場合の買い物の量は相当多くなるでしょう。「シニアだっていろいろ」というリアルな姿を把握することが「こうすれば心に響く」というツボを見つける近道なのです。
単身世帯に対してこういうイメージできてますか?
こんなところにも注目してみましょう。平成27年国勢調査によると、「65歳以上の者のいる世帯の世帯構造の年次推移」で、平成元年と比較して大きく増えているのは、単独世帯、夫婦のみの世帯、親と未婚の子のみの世帯。逆に3世代世帯は4分の1程度にまで減少しています。詳しく見てみると、高齢者の単独世帯のうち、男性32.6%に対し女性67.4%と、女性が圧倒的に多いのがわかります。これをヒントに施策を検討する際、先ほどのデータと合わせて「60代後半のひとり暮らしの女性」をターゲットにするのもありですが、あまり料理をせず総菜を買うことが多く、栄養に関する知識に疎い方が多い「65歳以上のひとり暮らしの男性」のほうが、課題への対応が差し迫っていると判断するのもありです。買って帰ってそのまま食べられるもの、レンジで温めるだけのものが好まれるので、売り場に健康意識を高めるPOPがあったり、体を労わるお惣菜をアピールするコピーなど、店頭でのおすすめ感があると選びやすく、来店頻度も高まるかもしれません。
同居世帯でも過去と同じとは限らない
また、3世代同居も全体としてはかなり少数派とはいえ、地方では、都市部に比べ割合的に多いことも忘れないようにしたいですね。ただ、みんなが揃って囲む食卓、という過去の大家族イメージを想像すると、これまたズレてしまいます。もちろん、昔ながらの形もありつつ、例えば二世帯住宅での緩やかな同居スタイルもあったりして、一律ではありません。同じキッチンを使って食事の支度をするかどうかで、買い物の選択肢も左右されるでしょう。その家で中心的な主婦の役割を担うのはだれなのか、が大きな分岐点なのです。同居するのが息子夫婦か娘夫婦かで「主婦の役割分担」も影響を受けます。また、買い物に伴う負担を軽くするために、生協をはじめとする様々な宅配サービスを利用して、日々の買い物は補足程度というケースもあるので、食品スーパーに求める役割も様々なのです。
シニア層の消費者にとっての快適さは?
人口構成比の劇的変化やテクノロジーの進化等、世の中が如実に変化をとげている中で、食品スーパーもひと昔前とは格段に違っていますよね。商品のことで言えば、以前ならば高級スーパーでしか取り扱ってなかったようなオーガニック製品が増えたり、夕食にも使えそうな贅沢な冷凍食品が登場したり、地産地消発想で一部産直品を扱ったり、リーズナブルなオリジナル商品が自慢のチェーン店が出てきたり、主にシニア向けに少量パックのお肉や野菜等の生鮮食料品や、小分けパックの加工品が増えたもはニーズに合わせた変化です。一方で、ポイントシステムや電子マネー、セルフレジの導入という必ずしもお客様起点ではない、販促的な動きや合理化対策のような変化は、快適かどうかの評価は人ぞれぞれ。セルフレジも、使いこなすにはシニア層には厳しい場合が多いこともあって、支払いだけセルフという形もじわじわ増えていますね。合理化される部分は仕方ないにしても、お店のスタッフとの会話だったり、コミュニケーションの大切さが普遍。当たり前の話ですが、真の快適さ、利便性とは何かの見極めを誤ってはいけないということです。
ココに注目!
今回取り上げた食品スーパーについては、居住スタイルや、その背景である家族構成によって全く異なるニーズがあり、多い方だと週に5回も足を運ぶわけです。顧客満足のツボはいろいろですが、当然安かろう悪かろうでは見向きもされません。「普通に愛され続ける」ために、いかに努力が必要か。いかに良い品があり、きれいなお店だったとしても、スタッフが正しく対応できなければ台無しです。どの分野でもそうですが、最終的に買うところに最も近い「人」が左右することになります。
そこで、シルバ―ラボでは、独自の視点でシニアをカテゴライズし、傾向を割り出していわゆるペルソナ、つまりサービスや商品の典型的なユーザー像をまとめたシートを作成しました。vol.11「シニア×食品スーパー」がこちらです。例えば、この分類をベースに、実際には商材によってさらに絞り込んだり、ペルソナを細かく設定したりしながら販促のシナリオづくりをすることで、より現状に沿った施策が可能になります。
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