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兵庫県の食材に特化!「おいしい」から始まる新展開 「食卓」と「生産者」をつなぐ新たなビジネススタイル
光岡大介(みつおか だいすけ)氏 ファームアンドカンパニー株式会社 代表取締役
「命を支える食と農」という視点に立って、消費者と生産者、人と自然を丁寧につなぎ、理想の関係を紡ぎ続けるファームアンドカンパニー株式会社。「有機農家のエンパワーメント」「つながりと感動のある食卓の提供」というミッションを掲げ、地域密着型で兵庫県の食材に特化した取り組みを続ける、若き経営者の熱い思いがあふれる新スタイルの企業です。人間が生きていくうえで欠かせない「食」の大切さを、改めて見直す機運が高まる中、単なるトレンドセッター的アプローチではなく、大きな社会的なムーブメントにつながるビジネス視点がそこにあります。
人生を模索していた学生時代の経験が心に火をつけた
今のビジネスのきっかけは、光岡氏が大学生の頃にまで遡ります。当時、難民など地球規模での社会問題に興味があり、自分自身の将来についても思い悩む中、大学3年生で休学して海外へ。メキシコのファストフード店で、ストリートチルドレンが物乞いをする姿に不条理を感じたのが、「自分のためじゃなく何かに役立つ仕事がしたい!」と思った瞬間でした。もうひとつは、休学期間にアルバイトを経験した何社かのベンチャー企業で、「企業家の方々が、意志と意欲をもって信じた道を進む姿がまぶしかった記憶」に影響を受けます。大学卒業後にいったん東京で就職するものの、いろんな思いがつながって有機農業という発想にたどり着き、学生時代を過ごした関西に戻ったのが2003年。一からの立ち上げに際し、何よりも大きかったのは生産者との出会いです。25歳で有機野菜に関わる仕事を始めたときに、"お金も畑もノウハウも納屋も機会もハウスもない"という一番ハードルの高い就農のスタイルで新規就農された同年代の方々の真摯な姿に励まされます。生産者との縁で、野菜のおいしさや、自然の中で生命の源が満たされていく感動に支えられてのスタートでした。
「食」を入口に農業へと関心を促す仕掛けづくり
光岡氏が代表をつとめるファームアンドカンパニー株式会社の前身は、兵庫県有機農業生産出荷組合。兵庫県で有機農業を営む40軒の農家で、生産出荷組合を作ろうと2009年に立ち上がったものです。現在株主60名の3分の1が生産者、兵庫県の有機農業を応援する個人の方からの出資も受けました。 事業の中心にあるのは、西宮北口の「野菜ビストロレギューム」というレストランです。また、神戸市東灘区にあるオーガニック食品販売兼カフェである「愛農人」では、マルシェを開催したり、もともと個人向けだった畑の体験ツアーを企業向け研修や福利厚生的なものにアレンジして展開しています。他に、「デリステール」のブランド名での調味料などの販売も。2015年7月から「兵庫 食べる通信」という食材付きの情報誌もスタート。
[2][3]「ナチュラルかつハイセンスな「野菜ビストロレギューム」店内
[4]兵庫県産食材をたっぷり使ったこだわりメニュー
[5]だれもが笑顔になれる畑の研修風景
[6]「デリステール」ブランドの調味料
[7]有機野菜ピザ
[9]「兵庫 食べる通信」創刊号 表紙
消費者が、生産者のファン、さらにはサポーターとなることを目的に、出会いの場を提供しています。都会に住んでいると、「食」があまりに分業化され生産者との接点がなくなってしまい、これが「食」と一次産業の大きな問題点となっています。一足飛びにサポーターになるのは難しいので、まずは、年間で延べ約3万人の来店がある「野菜ビストロレギューム」を、兵庫県の食材の魅力を知るきっかけの場としてとらえているわけです。視点を変えると、ここは消費者にとって入口であると同時に、生産者にとっては食材の売り先、つまり出口として位置付けています。会社として、生産者も株主であることは先に述べた通りですが、3名の役員のうち1名は生産者。生産者のことをよく理解した上で、だれにとってもメリットがある魅力的なレストラン運営の仕組みを構築しました。
ファームアンドカンパニーでは、様々な事業をやっているように見えて、実は顧客から、サポーターになってもらうため、ちょっとずつのステップで進んでいけるよう、階段を作っているのです。レストランの次のステップは、「愛農人」という店でのマルシェ。マルシェの魅力は、生産者と出会う体験、生産者から直接買う体験です。さらにもう1段階進むと、「兵庫食べる通信」で、作り手の思いや素材を知ること、さらにその次の段階が生産者の畑を訪ねるツアーです。生産者に会い、実際にその食材が作られている現場を知ることで、「食」とその周辺への興味が芽生え、一次産業との関わりも変化する、という流れをイメージしています。
ビジネスとしての有機農業を確立させるために
「生産者が有機農業をビジネスとして成立させるには、パートナーが不可欠です。現在はまだ、都会側からの視点で動いている事業ですが、ゆくゆくはもっと"農業寄り"にしたい」という光岡氏の言葉には、有機農業への期待と熱い思いが込められています。それは、生産者と農業生産法人を作り、共同で畑を運営し、農業で独立したい若い世代の人材育成ができたら、というもの。「都会のファームアンドカンパニーという会社が成功した」ではなく、生産者が主体的に関わった事業の成功事例を作るというわけです。
「食」に関しては、便利ならそれでいい、という話ではありません。畑という生産現場や生産者の思いが置き去りにされると、食べ物は単にお金と交換で得られる商品でしかなくなります。ファームアンドカンパニーは、消費者が畑まで足を運んで生産者と会う機会を提供し、顧客からサポーターになってもらう、いわば橋渡し役でもあります。「これは有機栽培ですよ」とか、「淡路島産玉ねぎですよ」というスペックからは見えてこない、生産者の思いやこだわりを知ることが、"今日食べるもの"とのつながりを感じるきっかけになります。
[8]生産者との対話から食材が生まれる現場を知る
「生産者が有機農業をビジネスとして成立させるには、パートナーが不可欠です。現在はまだ、「食」が生まれる場に携わる人も、都会にいてそれらを消費する立場にある人も、自然環境とのかかわりを含めたひとつのサークルの中にいます。決して別世界ではないと実感できるのが、「食卓」と「生産者」との理想的なあり方です。共に歩んでいる有機野菜農家の方には、30 ~ 40代の比較的若い世代も多く、今後も新規就農を目指す方でも、安心して就農できる仕組みづくりが必要でしょう。「食」という身近な営みを大切にしながら、人と自然とのつながりを発信し続けるイノベーションは、未来を予感させる新たなビジネススタイルと言えるでしょう。
(株式会社フジプラス)
まとめ
■兵庫県の食材に特化し、レストランを基軸にした経営スタイル。
■顧客からサポーターへのステップアップをサポートする仕掛けづくり。
■「食」を入口とし、地域発の農業支援をビジネスとして確立。
「野菜ビストロレギューム」についての詳細は、こちらでご覧いただけます。
https://legumes.jp/
※所属及び記事内容は、2016年7月当時のものです。