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コンセプトは「自分の足でしっかりと」 「元気になりたい」を引き出し原動力に! デイサービスによる「自立支援介護」という挑戦
森 剛士(もり つよし)氏
株式会社ポラリス 代表取締役
世界でも類を見ない超高齢社会を迎え、今後もさらに加速する日本において、社会保障の課題は山積みとも言える状態です。高齢者福祉が岐路に立つ中、住み慣れた地域で元気に暮らすための「自立支援介護」をテーマに掲げる、株式会社ポラリス。自分で立って歩ける毎日を目指す、という取り組みによって高齢者と家族に笑顔をもたらす、慢性期リハビリ実践の先駆者としての姿をご紹介します。
動機は慢性期リハビリへのテコ入れ まさに高齢者福祉のイノベーション!
2000年にリハビリ特化型クリニック創業の後、2002年に設立された株式会社ポラリス。宝塚市の本社内に、通所介護事業本部、PPS(FC)事業本部を置き、医療法人社団オーロラ会等各関連事業、グループ施設を展開しています。医師でもある代表取締役・森剛士氏は、「祖母の脳梗塞をきっかけに、慢性期リハビリの未成熟さに直面しました。リハビリを打ち切られ、家に閉じこもり歩けなくなる多くの高齢者を救いたくて・・・」という思いからの起業でした。「意志の強さと行動力が型破りな父方祖父の、『世の中に本当役立つことをやれ』という言葉に導かれたのでしょうかね」とも。そのポラリスが提供するデイサービスのコンセプトは、「自分の足でしっかりと」。6つの特長は、「自立支援介護への取り組み」「パワーリハビリテーションの導入」「歩けるようになるための歩行プログラム」「プロの介護職による専門性の高いケア」「医療法人が母体のグループ体制」「学術研究に基づいたケアの実践」です。介護・ケアマネジメントの第一人者、国際医療福祉大・竹内孝仁教授の理論を参考に実践すると、すぐに成果が出たことが何よりも驚きでした。イノベーションが起こる!と実感した瞬間だったそうです。

[2]ポラリス デイサービスセンターの一例(外観)
具体的な目標設定からスタート! 介護保険卒業を目指す歩行・リハビリ
ポラリスは、要支援1~2、要介護1~5の方が利用可能なデイサービスを提供。歩行・リハビリを中心に、自立した生活のサポートを目的としています。歩けなくなるのは筋力の衰えでなく、「歩く」という動作を繰り返す習慣の欠如によるもの。運動回路は、やめると消えるので元に戻すには、習慣的に動かすことが必要です(運動学習理論)。病気にアプローチするのでなく、あくまでも歩行・リハビリ。ところが、慢性症状を持つ利用者の主治医が驚くほど、成果が出ているのも事実。要介護高齢者のほとんどが脱水症状による倦怠感から、家に閉じこもりがちになるそうです。だからこそ、ポラリスでは、十分な水分の摂取を重視。「簡単に言うと、水を飲んで、ごはんを食べて動いたら、元気になれるということです」という言葉にも納得です。

[3-①]、[3-②]デイサービスでのパワーリハビリ用スペース
[4]デイサービスでは常に水分補給を重視して近くにお茶をスタンバイ
ここで、ポラリス利用者のリハビリによる改善例の中から、いくつかご紹介しましょう。交通事故で脳挫傷による歩行困難、記憶障害と対人恐怖症も発症した69歳の男性は、娘さんの結婚式でバージンロードを歩くのを目標にリハビリを開始。歩行器を使った状態から始めて3か月後には自力で歩けるようになり、4か月後には娘さんと共に見事に目標を達成。また、寝たきりだったパーキンソン病の70代女性は、ご主人のお墓参りに行きたい一心でリハビリを開始。当初は無理だと思われた急な階段を上り下りして、家族に見守られながらの目標達成です。さらに、脊椎損傷で一生寝たきりを覚悟していた70代男性は、リハビリにより、一度失っていた尿意と便意が戻り、第1目標をクリア。続いて、ゴルフをしたいという第2目標も叶い、「障がい者ゴルフの大会に出たい」というさらなる目標ができたそうです。要介護の方はどうしてもあきらめがちですが、「また元気になれる!」という前向きな気持ちを、スタッフがサポートします。こうしたことから、要介護度の改善率も、国も認定調査を受けられた一般的な方々との違いは明らかで、介護保険を卒業する方も少なくありません(下記資料参照)。

国としての方向性も大きく変化 「自立支援介護」へとシフトする!
ポラリスとして大きな転機を迎えたのが2015年。厚労省から弊社を視察に来られた後に、社会保障費の見直しに関連して「自立支援介護」をめぐる国の動きも活発化しました。「未来投資会議」では、2016年11月に「要介護者減少に向け、自立支援に向けた取り組みの強化」として、首相自ら初めて「自立支援介護」について言及。いわば「これから介護保険はパラダイムシフトをおこします!」という宣言です。戦後始まった日本の医療保険は、だれでも等しく受けられるメリットはあるものの、急性期医療中心のため、慢性期医療がやや置き去りに。結果、リハビリ専門スタッフも、急性期リハビリの専門職のような状態です。慢性期には、急性期と同じことをやっても効果はありません。この手つかずの分野だからこそ、一石を投じたいと強く思ったそうです。
「自立支援介護」は、要介護の人が元気になるのに加え、実は医療まで踏み込める可能性があります。例えば下剤や眠剤等の薬が必要なくなると、医療費も削減。「自立支援介護」のデイサービスと、要介護の方を診察する往診専門医、かかりつけ薬剤師が提携すると、理想的な世界が作れそうです。
介護ノウハウのアジア輸出からAIまで 従来の「枠」を超え、可能性が広がる!
これから高齢化を迎えるアジア各国が、超高齢大国であり、介護保険制度を有する日本に注目する中、日本政府としてもアジア健康構想の関連で「介護」の輸出に着目し、特に「自立支援介護」中心に取り組むことになりました。ポラリスは、企業単独型の技能実習制度を牽引すべく、ベトナムを皮切りに、以後、中国、ミャンマー、台湾でも展開予定。現地での研修実習を経て、半年後から日本で本格的な「自立支援介護」を身に付けるという流れです。また、2019年4月には、地元宝塚に企業主導型保育園をオープン予定。医療・介護で働く女性のコミュニティを作って、地域を活性化するのが目的。保育園の上にシェアハウスをつくり、10年を限度に暮らしてもらいながら、会社で積立てて資金を作り自立を手助けするというシングルマザー対策も兼ねています。さらに、日本の大手電機メーカーと共に、介護分野でのAI(人工知能)活用施策もスタート予定。このように、未来に向けた動きが、大きなうねりとなって押し寄せています。
「自立支援介護」を日本国内はもとより国境を越えて広める、プラットフォームのような存在であるべき、とのこと。極端な話、同業他社やライバルにもノウハウは原則公開するそうです。土台を用意しても、のせるサービスが優れたものでなければ同クオリティにはならない、と自負するがゆえ。また、言葉だけが独り歩きしないよう、正しい情報を広く発信する責任もあると語る森代表。高齢者が最後まで元気に暮らし、寿命を迎えて穏やかに人生を終えるための「自立支援介護」である、という根本を忘れないことが大切でしょう。つまり、「自立支援介護」というのは、残りの人生を楽しく有意義に過ごしてもらうプロデュースにほかならないのです。
(シルバーラボ/株式会社フジプラス)
まとめ
■「自立支援介護」は、「こうなりたい!」という目標設定から。頑張る力を引き出すのもスタッフの使命。
■要介護の高齢者の方も、歩行・リハビリによって、介護保険からの卒業が可能に。
■ポラリスで築き上げてきたノウハウを、日本からまずはアジアへと広げていく。
株式会社ポラリスについての詳細は、こちらでご覧いただけます。
http://www.polaris.care/
※所属及び記事内容は、2017年9月当時のものです。
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