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「印刷ジャーナル」記事掲載:「紙×デジタル」の進化で高まるダイレクトマーケティング
2019年4月25日発行の「印刷ジャーナル」第785号の記事「ダイレクトメール制作関連市場は1214億円」に、当社社員の寄稿記事が掲載されました。
「紙×デジタル」の進化で高まるダイレクトマーケティング
フジプラス
デジタルイノベーショングループ 部長 江藤 直軌氏
■実践することから学ぶマーケティング
当社は、これまで様々な取引先に対してマーケティング支援を行ってきた。例えばBtoBでの通信販売では、商品在庫の一掃も兼ねた「決算セール」における紙DM作成・発送業務がある。商品のスペックや写真を短時間で準備・制作・印刷・発送するのはもちろんのこと、それよりも予算や客単価、想定受注数による売上・利益予測のほうが重要だった。実際にはDMを3万通実施し、商品掲載は10点、最終購入日から2年以内、注文2回以上、注文金額5万円以上の顧客をターゲットにして実施した。結果、レスポンスは約2・7%で売上は約1500万円、粗利益は約600万円だった。もちろん、ほぼ想定内の結果となり、以後も定期的にDMを実施されている。
ほかにも、BtoCのメーカーでは、新製品の予約注文を加速させるためにティーザーDMの作成・発送業務がある。新製品発表の1ヵ月前に送付したが、その製品には愛好者がいるため、ティーザー内容が瞬く間にSNS上で話題になった。さらに、その1週間前にもロイヤル顧客に向けて商品情報を掲載したDMを発送し、愛好者のロイヤリティを強く刺激することに成功した。結果として、1つの指標であるFacebookのフォロー数は、ティーザーDMで1・2倍に、先行発表DMで1・5倍になり、予約注文数も当初の予定を大幅に上回る数となった。
これらの事例にあるように、モノづくりは当然として、我々の本来の使命は、「いかに取引先の売れるお手伝いができるか」である。そのためにも、取引先の顧客を理解し、顧客データを把握した上での提案ができるかに尽きる。顧客と結びつく複数のデジタルチャネルにおける連携も進んでいるので、取引先と一緒になってどう駆使するか。クラウドによるプラットフォーム化が進むと、取得できるデータも幅が拡がっているので、どう掛け合わせて顧客分析に活用するか。当社も新規顧客獲得や既存顧客維持のための自社マーケティングを行っているが、外部データも取り入れつつ、マンネリ化しないように常にシナリオや施策を少しずつ変え、その結果数字の把握に努めている。
■デジタルと連動した紙DMの模索
今でもビジネスの主軸はチラシ・カタログ・パンフレットの制作〜印刷だが、ここ数年で紙DM受注も活発化している。少し前だが、数千人規模でのBtoB向けイベントで、Eメールと並行して紙DMでも招待状を送付する支援を行った。Eメールはもうしこみ締切時に即座に送信されるのだが、イベント全体の締切の翌日には申込内容や当日の受付に必要なQRコードがパーソナライズされた紙DMをスピード対応で発送。イベント数日前の対応にも関わらず、来場者の54%が紙DMを持参していて、紙の有効性を改めて感じることができた。
ただ、こういった支援に辿り着くまでにも数々の模索がある。MindFireを導入して、紙DMでも顧客の反応が取得できるようにPersonalized URLを駆使してWebへの誘導を試みたり、ほかにもDirectSmileを導入し、イメージバリアブル機能を駆使して従来の印刷技術では考えられなかった感情訴求を試みたり...。マーケティング・オートメーションのMarketoを導入してからは、顧客エンゲージメントについて一層考えるようになり、改めてデジタルと紙がそれぞれの利点を生かして使い分けられる機運が来たことを実感しつつあった。それもこれも、技術が進化し続けるなかで、様々なデバイスやシステムが柔軟に連携できるようになり、いよいよ今の時代の多様化したコミュニケーションが本当に繋がり、本来あるべき偏りのない施策が実現しはじめている。
また、デジタルマーケティングやデジタルコンテンツにはできない紙DMの優位性も整理しておく必要がある。紙DMは、形として手元に残りやすいし、クリエイティブを工夫すればデジタルでは到底できない特別感を表現できる。そのことを踏まえて、この紙の優位性をデジタル(システム)とどう掛け合わせるか。例えば、初来店されたお客様が次回も確実に来店していただくために、顧客から得た情報を元にオファー付きの好みそうなコンテンツを個別印刷してサンキューレターとして自動的にタイミング良くDM送付するなどは有効だろう。ほかにも、ECサイトの「カゴ落ち」と呼ばれる購入一歩手前の状況に対して、紙DMを送付することで購買率アップにつながる可能性がある。仮にEメールやSNS等のデジタルチャネルで発信したとしても、タイミングが悪いとすぐに埋もれて目につかなくなる欠点がある。そのコミュニケーションを補完できるのが紙DMであり、効果を最大化する役目として威力を発揮しはじめている。
■デジタルマーケティングに対応する工夫
ここから少し業界向けの話になるが、プロダクトアウトとマーケットインとが対比されるように、今日の紙がデジタルチャネルと対等に語られるためには、これまでの印刷における既成概念を見直す必要がありそうだ。例えば、今朝入ってきた紙DMデータを、その日の夕方には配送手続き(投函)をしないといけない。もちろん、DMが100通であっても100万通であっても同様である。これを可能にする工夫が求められている。
これから必要とされる紙DMは、大ロットで同一内容のバラマキ型でなく、個々の情報印刷や反応が取得できる小~中ロットのものがもっと増えるだろう。かつ、デジタルマーケティングと同等に扱われるために、マーケティングシステムと連携できる仕組みの用意とスピード対応ができる工場対応が求められる。さらにはボリューム対応するために協力してもらえる印刷会社、適正コストで配送対応ができる発送代行会社とのパートナー連携も必要である。
当社では、工場における生産のスピード化に対応するため、まずデジタル印刷による一部分の案件は工場ダイレクトの方式に切り替えた。取引先からの依頼はすべてデータ化されたものが直接入ってくるので、工場主導でその情報を読み取って作業進行し、これまで営業が担ってきた受注管理という概念をなくしている。これにより、営業がやるべきことは仕事(言い換えると印刷物の受注情報)のコントロールではなく、取引先に対してどんなビジネスやマーケティング支援ができるか、取引先との約束ごとを契約書(SLA)としてどう締結するか等であると思う。
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最後になるが、新元号が「令和」と発表され、大手飲料メーカーや食品メーカー等が新元号の名称を印刷したマーケティングも瞬時に行えるような時代である。改めてリアルにダイレクトに届けられる力強さを感じたが、我々もその動きに応えられるようにしたいと思う。