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2018年9月21日

JAGATinfo記事掲載:社名変更でコミュニケーションビジネスを志向するフジプラスのデジタル活用

弊社代表取締役社長 井戸 剛が「JAGATinfo」から取材を受け、2018年9月15日発行のJAGATinfo 2018年9月号「デジタル印刷最前線」に掲載されました。

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公益社団法人日本印刷技術協会 会員誌『JAGAT info』2018年9月号より

デジタル印刷最前線
デジタル印刷の今日、明日、未来

社名変更でコミュニケーションビジネスを志向するフジプラスのデジタル活用
株式会社フジプラス

今回は大阪の株式会社フジプラスを取り上げる。フジプラスはグーフ(正確にはフジプラスとの資本関係はなく、社長の井戸剛氏が共同出資している会社)やフジプラス・ワン等々、多角的に印刷ビジネス展開している印刷会社である。フジプラスは他社(クライアントを含む)とのコラボレーションを重視しているし、そのような関係上大っピラにできないことも多いのだが、可能な限り情報を盛り込みたいと思っている。

ドラスティックながら地道にビジネスを変化
フジプラス(写真1)は、前社名が不二印刷という印刷会社で、名前のとおりそれなりの決意で名付けられたと思うのだが、前社長の井戸幹雄氏(現フジプラス会長)が1962年に経営を任されたときにはずいぶん大変な状況だったらしい(実質的な倒産状態)。

大変なご苦労をされたと思うのだが(当時は労働運動真っ盛りで、印刷業界は特にすごかった)、幹雄社長は再生のために北米の印刷業の実態を調べるなどしていたのだが、マッキンゼーレポートが目にとまり、印刷業が生き残っていくためには「オフセット輪転機の高生産性を生かす」か、「生産に関する設備投資は最小にして、コミュニケーションビジネスに向かう」の二つに一つということで、幹雄氏はオフ輪の導入に踏み切ったのだ。関西の印刷業はこの路線で成功した会社が多いのだが、その中でも先頭グループで頑張ったのが不二印刷だったと思う。

オフ輪の生産性で競争力を付けた不二印刷は再生し、ついこの間まで私は、「オフ輪の不二印刷」というイメージを持っていた。その路線も現・井戸剛社長(写真2)の代になり(2008年2月就任)、マッキンゼーが出したもう一つの解である「お客さんと密着したビジネス、コミュニケーションに関わるビジネス展開」に路線を変えたのは、皮肉というか必然というか?興味深いところである。

本社は、大阪メトロ南森町駅やJR東西線大阪天満宮駅近くにある。ここも東京・江戸川橋ほどではないが、印刷業が集まっている地域と言える。大阪郊外(いまや郊外ではないかもしれない)の伊丹に生産工場を持ち、生産やデリバリーはこの地域で担当している。天神祭で有名な大阪天満宮の至近にある下町に本社を構えているのだが、営業や企画部門(この辺が重要)やフジプラス・ワンという商社、SE部門などを抱えている。

井戸剛氏は銀行出身なので、急激な変化を急ぐのではなく、現実論者的に会社を変化させている。オフ輪の生産設備を維持しながら、ビジネスの中身を変えていくということを「ドラスティックながら地道に(日本語として変?だが、ニュアンスは分かっていただきたい)」やられている。
現在の伊丹工場(写真3、写真4)にはオフ輪が2台(三菱A列とB列)稼働している。オフ輪も生産性がどんどんアップしていくので、台数を集約して現在は2台で運用している。枚葉は菊全八色(反転機能付き)のKBA(現在は昔の名前に戻ってケーニッヒ&バウア)のRA-106だが、枚葉でも一昔前前のオフ輪くらいの生産性があるので、オフ輪の集約にも役立っているはずである(RA-106はなかなかの優れもの)。ハイデルベルグやコモリは印刷機メーカーのTOP集団の座を常にキープしているが、最近はKBAが先端グループの一角で目立っているようだ。インクジェットヘッドやLED UVを追加搭載するのも手馴れているし、30年で状況は大きく変わるものである。

HP Indigoも2台あったものをHP Indigo 12000一台に集約している。デジタル印刷機はIndigoの他にRISAPRESSが三台(カラー×1、白黒×2)稼働している。大量生産からコミュニケーションサービスプロバイダーへ大きく舵を切っているので、デジタル印刷機の活躍の場も広い。その他は後加工機等の設備を一式持っている。

社名変更は単なる印刷会社からの飛躍を体現
ドラスティックな展開の一つの意思表示として、不二印刷の商号をフジプラスに変えたことが挙げられる(2015年10月)。単なる印刷会社からコミュニケーションサービスプロバイダーへ変革しようとする意気込みが感じられる。

フジプラスの関連会社で一番有名なのが前述した「グーフ」だが、井戸剛社長が共同出資者というだけで、フジプラスとは資本関係はないが、フジプラスの東京支店の中にグーフは存在しているし、セミナースペース(ルームというよりはスペース)は共有している。フジプラスはグーフ機能を最大限活用している。逆に印刷会社としてのノウハウをグーフ側にも注ぎ込んでいると言える。フジプラスはMA(マーケティングオートメーション)のMarketoユーザーであり、印刷ビジネスでMAを実践しているので、生データをグーフに提供できるのだ。欧米ではプリプレスが斜陽になった今も、製版会社が成功しているケースが多いのだが、成功している製版会社は、オーナーが広告代理店を経営していたり、SE会社を経営していたりと、オーナーを中心としたファミリー企業で印刷ビジネスを拡大しているのだ。フジプラスの場合はこの欧米型に近いのかもしれない。グーフはもともと「Web to Print」を専門としていたが、今やMA、バリアブル、等々、多岐にわたっているのはフジプラスのノウハウも大きな+要因になっている。

フジプラスの多角化について説明しよう。例えばシルバーラボ(https://fujiplus.jp/silverlab/)という称号でシルバービジネス展開(お手伝いビジネス)を考えているのだが、推進者の営業本部 営業第5グループ 次長/プランナーの藤江洋子氏(写真7)にはJAGAT夏フェス2018「シニア層とコミュニケーションの最適解」というセッションに登壇いただいた。シルバーラボとは、シルバー層の絡むマーケティングリサーチから高齢者のリアルな声を反映した「売れるカタログづくり」などを行っている(印刷)ビジネスの総称である。こういうようなビジネスにデジタル印刷機は手探りでトライできるので、非常に向いている。大量部数になれば、高生産性の枚葉機があるし、その上だってオフ輪があるので大丈夫である。先ほども申し上げたように効率よく設備を使い切るという姿勢がフジプラスには強く感じられ、設備重視で仕事を大量に集める方向性とはまったく異なっているので、JAGATの目指す「デジタル×紙×マーケティング」のお手本のような会社である。

関連会社としてフジプラス・ワンがあるが、この会社は一言で表現すると商社であり、アパレル等の商品を企画して百貨店等に提供している。写真8をご覧いただきたい。左から二番目の列(電話台のすぐ左隣の棚)にアパレルカタログが上下に並んでいるのが分かると思うが、フジプラス・ワンはアパレル商品を企画して販売店に提供しているので、カタログ製作の仕事もフジプラスに入ってくるという具合だ。これぞ究極のコミュニケーションサービスプロバイダーということなのだろう。かつて生産性を追求した印刷会社が、今や印刷周辺の仕事でビジネスをしている。

電話を挟んで、その右にあるIdea4Uがクライアント向けの情報誌なのだが、井戸社長も説明されているが、最近の号(隔月発刊)は結構良いレベルで(「独自取材記事が満載で)クライアントが読んでも面白いものになってきました」とのことである。こういう活動が印刷会社の営業になるわけで、「飲ませ食わせ」「ゴルフ」だけで営業をしてきた時代とは大きく変わってしまったわけである。JAGATとしては、バックアップできるならこういう会社をサポートしていきたい。実際には逆に教えていただくことばかりだが・・・。
(JAGAT専務理事 郡司 秀明)