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2012年5月10日

日本の印刷2012年5月号「製造業からサービス業へWeb to Printを活用した生き残り戦略」

全印工連 産業戦略デザイン室と全印工連・東印工組教育労務専門委員会が印刷業の業態変革において大きなカギを握るとみられるWeb to Printについて、先進的に取り組む3社の講演会を2012年3月5日~6日にかけて実施し、弊社社長 井戸 剛が講演を行いました。講演会の模様は、2012年5月10日発行の「日本の印刷」2012年5月号に掲載されました。

付加価値創造の一環としてのWeb to Printの取組み

不二印刷(株)

「提案力」「創造力」「技術力」を融合させてお客様の問題解決に取り組む「マーケティング・サービス・プロバイダー」を目指す不二印刷(株)の代表取締役社長 井戸 剛氏より同社のWebto Printの取組みについてお話を伺った。
以下はその要約である。

理念の共有と活発な社内コミュニケーションを重視

当社は1933年創業で、現在グループ会社を含めると約180名の従業員がいる。印刷設備はオフ輪5台とデジタル印刷機で枚葉機は保有していない。事業内容はギフト会社、通販会社、旅行代理店などのカタログ、パンフレット、チラシなどの企画・デザイン・制作・印刷を行っている。
カタログを作る部署の面倒な業務を引き受けるというのをモットーとしており、いわゆるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を狙っている。お客さんと印刷会社との境界線をいかに相手側に持っていくかを試行錯誤している。
システム開発系(SE、SI)が全従業員の3分の1、デザイナーなどのクリエイティブ系も3分の1程度いる一方で印刷現場は加工も含めて30名くらいである。印刷機を保有している制作会社という表現が感覚的には合う。
社員の有資格者にはITパスポート(旧:初級シスアド)取得者が30名、DTPエキスパートが21名いる。
クレドと呼んでいる会社の信条(価値観を20項目にまとめたもの)を全社員で共有して社員のベクトルを合わせているほか、社内コミュニケーション活性化のためにさまざまな取組みを行っている。一例としてシャッフルランチという制度がある。これは毎月1回会社が1人1,500円を支給して、普段接点がない相手と1時間かけてランチをするというものである。ランチの相手は会社がランダムに選ぶようになっている。
また、サンクスカードという制度がある。これは普段なかなか言葉に出していえない感謝の気持ちを一声添えてカードで渡すというもので、基本は役職が上の人が下の人に渡すものである。役員は必ず月に20枚使うことが義務付けられている。カードのデザインはクリエイティブ部門の社員に仕事の合間にお願いしていて現在は300種類くらいある。
そして、年に2回全社員が集まる社員大会を実施している。工場も止め東京支店や関連会社の社員も全員集まり、会社の基本方針説明にはじまり各種表彰、外部講師の講演、懇親会など12時間かけて行う一大イベントとなっている。

前段の仕掛けがカギを握るデジタル印刷ビジネス

当社ではWeb To Printを2006年に導入した。オフセット印刷の将来に不安を感じたからである。
導入にあたってアメリカに視察に行ったところ、結局ハードはどこのメーカーでもよくて、前工程のソリューションが重要だということがわかった。
そこで、デジタル印刷機よりも先にPressSense社(現PageFlex社)のWeb To Printのシステムを導入した。

Web To Print は工程の自動化とセットで考える

Web To Printの定義はさまざまであるが、狭義ではWebで受注した後、印刷・後加工まで自動化された仕組みととらえており、当社のWeb To Printはそこを目指している。営業、工務の伝票入力をなくすことまで含め、極力人が関わる部分をなくしていきたい。
一方で顧客窓口としてのWeb To Printは、24時間文句を言わず計算ミスもしないで営業マンの代わりに働く一つのインフラとして考えている。 Web To Printの品目としては、バリアブルのDMやカレンダー、フォトブック、在庫レス再版システムなどがある。 システムの選択肢として、自社開発、パッケージソフトを購入してカスタマイズという二つがある。当社ではほとんど買ってきたものを使っている。外部のツールを組み合わせて、つなぎの部分だけ社内開発というパターンが多い。ツール同士をつなぐことで効率化が図れる。開発には専任のSEを5名置いている。市販のツールは印刷品目の向き、不向きがあるので、お客様によって使い分けており、現在5~6のシステムが稼働中である。 日本語化されているツールは少ないので、海外製品をそのまま導入することもある。当然、設定や操作に関する質問は英語でのやり取りとなるが、最近はインターネットの自動翻訳機能が向上していることもあり、語学力がなくてもやってみればなんとかなるという印象である。

営業のフックとして機能するWeb to Print

Web to Printのビジネスは当初の見込みよりも早く立ち上がった。売上の絶対額としてはまだ大きくはないが、営業のフックとして大いに機能している。最近は「印刷の仕事ありませんか?」だけでは営業トークが続かないし、お客様に会ってもらうことも難しい。こうした提案を仕掛けることで、ソリューション志向の強い会社として認知してもらえる。またローカル局ではあるが「ネーム・イン・フォトカレンダー」がテレビ取材を受けるなどパブリシティの効果も大きい。

今後は海外進出も視野に

今後の展開としては、アジアなど海外へのサービス展開を視野に入れている。印刷業と海外との関係でいえば、DTP作業など仕事の依頼先という印象が強いが、Webという特性を活かしつつ海外の仕事を取りに行きたい。
また、Facebookと連動した印刷サービスを提供していきたい。Facebookにアップロードされた画像データをポストカードなどに印刷する。それから、最近同業者からのWeb to Printサービス立ち上げの相談が増えているので、このサポートをビジネスとして立ち上げる。さらに自社コンテンツ(BtoCサービス)の強化、設備ではデジタル印刷のさらなる強化を行っていく。
これらの取組みにより製造業からサービス業への転換を進め、マーケティング・サービス・プロバイダとしての地位を確立していきたい。