イメージ これまでに、BtoBブランディングについては、企業文化の醸成にはビジョンの明確化が欠かせない、さらにそのビジョンの可視化が社内での理解を推し進めるという話を、想像しやすい例えを引用しつつ解説してきました。ところが、「ビジョンの文言には共感できるけど、具体的に私は何をすればいいんだろう?」という現象は、なぜ起こるのでしょう。理論的には、ブランディングと関連して理解すれば生じないはずですが、現実的には途中でブレがちです。仕事として見えやすい範囲に意識が向き、日々のタスクを追いかけるうちに、ビジョンとの関連を見失ってしまうのも一因でしょう。解決には、ビジョンを個人のアクションプランに落とし込むことが不可欠という考えを軸に、お伝えしていきます。BtoBビジネスでは、お客様とその先のお客様、という1つ先のゴール地点を想定して動くべきなのは当然ですが、特に即座に結論を求められる課題に対処する時には「目の前の直接的なお客様」しか見えなくなってしまうのも、経験上理解できます。本来、ビジョンは全てを包摂するものなので、矛盾は生じないはずですが、現実は違います。この乖離は何に起因するのか、把握しておきましょう。通常は、全体のビジョンから落とし込まれた部門別目標が設定され、それを元に個人のアクションプランを構築します。各自が「ちゃんと理解できている」前提でアクションプランを決定し、それを遂行するには、決めた目標そのものだけでなく、常に根っこである全体のビジョンを意識し続けることが欠かせません。つまり、視点を高くすることで、見渡せる範囲を広げること。これによって、会社全体の中で自分が担う役割とその意味を正しく把握できれば、「迷子」にはならないということなのです。 管理職等のマネジメント層はともかく、一般社員にとっては、経営方針やビジョンを、いきなり「自分ごと」として捉えるのは難しいものです。最初のうちは、先にふれた個人のアクションプランに基づき行動するたびに、会社として目指す方向性(事前に文言として理解した内容)に照らして正しいかどうか、確認する習慣化が大事です。この地道な積み重ねこそが、ブランディングを肌感覚で分かるレベルにまで、体に覚え込ませる近道とも言えるのです。「継続は力なり」の実践です。極端な話、感覚的にブランディング感覚を獲得することができれば、新入社員であろうと、経営層や管理職からの指示なしでも、正しい方向に自走できるようになる、という理屈です。個人のアクションプランを遂行し目標達成することも、パーソナルブランディングのひとつのプロセスなのです。 連載②では、架空企業のビジョンを起点に、エンドユーザーの笑顔を生み出す要素として、「安心感」「幸福感」という2つのベネフィットに着目し、ビジョンを分解して具体化するプロセスから、「自分たちらしさ」の追求についてふれました。とかくブランディングでつきものの「成果が見えない」「達成度が測れない」といった「数字的指標がわからない問題」も、ビジョンから始まる経営的視点で捉えることで、実はそうではない、とも言えるでしょう。今回も引き続き、「フルーツで笑顔あふれる世界を作りつづける」というビジョンを掲げる架空のα社の例で、アクションプランとの関係を解説していきます。組織に所属する個人として自分と向き合い、自身との内なる対話から目標達成に向かう姿勢を、検証例として取り上げてみました。 1人目は、営業部門のAさんです。小売店舗やカフェやレストラン等の飲食店を担当し、会社のビジョンから自分の役割として具体化し、「継続受注をいただくため」自分ができることとして、必要なことを書き出し整理してみました。そこで気付いたのは、これまで工夫して営業活動をしてきたものの客観的検証8Idea4U vol.702024 Summerいつもより視点を高くして見える範囲を広げてみる地道な取り組みこそが肝心!習慣化で精度を上げる個人への落とし込み その1 顧客接点あり営業部門なら架空企業の例から考える1企業のビジョンとBtoBブランディング③大切なのは正しく理解したビジョンを個人レベルで日々実践すること
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