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バリューチェーンとスコープ分け 2015年に国連サミットでSDGsが採択されてから約10年、持続可能性への取り組みはもはや待ったなしの状況となり、社会や産業全体の重要課題として認識されています。また、持続可能性に対する企業の取り組みは既に企業の競争力にも影響を及ぼしているため、上場企業はもちろんのこと、中小企業にとっても欠かせない活動になりつつあります。 持続可能性への取り組みは、「気候変動への対応」と「格差や人権への対応」に大別できます。とかくテーマの中心になりがちなのはCO2削減ですが、そもそも持続可能性とは、環境負荷を最小限に抑えながら、すべての人が豊かな生活を送り、公正かつ平等に扱われる未来を目指すもの。差別や不平等のない社会は、持続的な経済成長や社会的進歩を促進すると考えられるため、こちらも忘れてはならない重要なテーマです。 気候変動対応では、CO2削減に向けた第一歩として、企業に対してライフサイクル全体での「見える化」が求められています。自社で燃焼した燃料など直接的なCO2排出量(スコープ1)と、他社から供給された電力などの使用による間接的なCO2排出量(スコープ2)はもちろん、原材料調達・物流・販売などサプライチェーンで発生する間接的なCO2排出量や、販売後の製品の使用や廃棄に伴うCO2排出量(スコープ3)までを可視化することで、自社の事業活動が環境に与える影響を総合的かつ定量的に評価し、改善の機会を特定します(資料1)。 RE100(※1)は、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを宣言する国際的な企業連合で、世界的に影響力のある大企業を中心に、日本では2024年3月時点で85社が加盟しています。RE100は、その加盟条件から中小企業には関係がないと思われがちですが、中小企業が多い日本ならではの取り組みとして、再エネ100宣言 RE Action(※2)があります。これには、企業規模に関わらず、2050年までに使用電力を100%再生可能エネルギーにすると宣言し、取り組む企業や団体の加盟が可能です。 では、なぜこのような可視化や宣言が重要なのでしょうか。近年、とりわけ上場企業においては全ステークホルダー向けに「サステナビリティレポート」などの掲示が求められています。B2C企業にとってのB2B企業、大企業にとっての中小企業、顧客や取引先はすべてスコープ3に該当します。つまり、取引でつながっている企業はすべてひとつのバリューチェーンの中に存在します。スコープ3までの可視化や、RE100/RE Actionへの加盟は、自社が環境課題へ取り組んでいる裏付けとなるため、ホームページやサステナビリティレポートで紹介すれば、それだけでステークホルダーに安心感を与え、このバリューチェーンの中に存在しやすくなります。結果として、こうした活動は企業価値の向上につながり、新たな投資の誘致や、リスク意識の高い取引先とのビジネス機会、採用における興味喚起など、様々な機会創出の可能性をもたらすのです。 環境や社会課題の解決と、企業の経済成長の両立は極めて難しいものですが、これを実現させる成長戦略として注目されているのが、サーキュラーエコノミー(循環型経済)です。これは、商品設計の段階から廃棄の概念を見直し、資源を半永久的に使い続けるという循環型のビジネスモデルです。これまで販売されてきた多くのモノは、定期的な買い替え需要が見込まれ、ある程度の期間使用すると故障や破損が生じて、消費者が修理しづらい構造になっていました。スコープ1、2、3の観点から、今製造業は、設計から廃棄までの責任を持ち、長期間使用できる「捨てられない製品」を最適量で生産すること、さらに使用後の回収方法や再利用までを考え、循環させていくことが求められています。 サーキュラーエコノミーの実例はEUをはじめ多数ありますが、オランダのフィ4Idea4U vol.702024 Summer資料1スコープ1スコープ2 自社活動におけるCO2排出スコープ3 サプライチェーンはもちろん、使用後の処理まで含めたバリューチェーン全体が排出するCO2通勤出張原材料の輸送・配送原材料資本財、スコープ1,2に含まれない 燃料及びエネルギー関連活動、 廃棄物、リース資産その他スコープ3スコープ1スコープ2燃料の燃焼電気の利用製品の輸送・配送製品の利用製品の廃棄その他製品の加工、リース資産、フランチャイズ、投資スコープ31. 企業が考慮すべき 持続可能性への取り組み2.循環型社会と3Rリユース再定義のススメリサイクルだけに迷わされるな!持続可能性に向けて今企業がやるべきこと

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