ゲノムとは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)が組み合わさってできた言葉。DNAの文字列(塩基)に表された全ての遺伝情報を指す。遺伝子とは、細胞の働きを決める設計図のようなもので、DNAが記録している遺伝情報のこと。つまり、ゲノムのうち、タンパク質等に関する情報が記録されているDNA領域を、遺伝子と呼んでいる。用語解説〜基本情報〜ゲノム遺伝子 遺伝子という言葉は、頻繁に耳にするものの、一般感覚からすると「説明できないけれど会話の中には使いがち」という位置付けでしょうか。それがゲノム解析ともなると、「なんだか難しそう」「ちょっと怖い気がする」等、事実とは別にイメージ先行で印象も様々です。そんな中、このゲノム解析が、身近なところで注目され始めているのをご存知ですか。今回は、株式会社Zene 取締役 有地正太氏に、現在の日本が抱える健康課題との向き合い方、BtoBビジネスモデルでの展開に至った背景を含め、ゲノム解析活用の可能性について語っていただきました。 アメリカでは既に一般化している一方、日本では普及には程遠いゲノム解析(遺伝子解析サービス)。Zeneは、ゲノム解析 技術で疾病リスクを見える化し、日本の健康課題を解決すべく設立されたスタートアップ。ヤフーのデジタルヘルス分野で遺伝子解析サービスに携わっていたメンバーを中心とした、真のプロフェッショナルで構成されています。「個々人のDNA情報を 読み取り情報を解析することで、それぞれ体質や、どんな病気になりやすいかの傾向がわかるようになりました。最終的には、日本の健康課題解決と医療費削減を目指してサービス提供しています」と有地氏。 誤解のないようお伝えしておくと、例え ば何かの病気になりやすいとの結果が出ても、生活習慣を見直し、リスクを把握し正しく対処すれば防げることも多いの です。ゲノム解析でわかるのは、絶対的に決まっている将来ではなく、将来のリスクにどう備えるかの対処法。病気のなりやすさも、「遺伝子要因」と日々の生活による「環境要因」が、複雑に影響を及ぼし合って変化するそうです。 「つまりこれは、知り得たリスクの高さか ら個々人の生活習慣で特に気を付けるべきは何なのか、課題を抽出するプロダクト です。どこにどうアプローチすれば、社会的意義を持たせて日本の社会構造の中で遺伝子検査ビジネスを発展させることができるのか?行きついた答えは、予防に対し最も価値提供できる健康保険組合で した」。しかも、そこには技術的なこだわりも欠かせません。例えば、多因子疾患(様々な要因が複雑に絡み合って発生する疾患)の一つである2型糖尿病のリスク予測はかなり困難。1つ2つ遺伝子を見ても予想できないため、最新AI技術を使った最も高精度な方法を取り入れたそうです。ほかならぬ受益者に対する価値ある情報提供が、新たなビジネスモデルの軸になったということです。 日本国内のヘルスケア事業は、アメリカに比べ伸びにくい環境にあります。主な原因は、医療保険制度の違い。国民皆保険制度で医療福祉が充実していて自己負担額も少ないため、「病気になったら病院に行けばいい」との考え方が一般的なのです。厚生労働省の調査でも、予防意識が希薄な日本人像が明らかに。とはいえ、2030年まで医療費が膨張し続ける試算もある中、日本の財政を圧迫する状態を解決するには、病気にならない仕組みの構築が喫緊の課題なのです。 毎年の健康診断で数値が悪くても、何度か続くと慣れて気にしなくなる方も少なくありません。例えばメタボ検診と呼ばれる特定健康診査の対象項目で問題があった方は、特定保健指導プログラムで生活改善施策を行う流れですが、指導を受ける方は全体の20%程度と言われて います。血圧やBMIが少し高め等、現時点では病気とは言えない方が大半で、リスクを自分事としてとらえにくいわけ です。「結果を見ても生活改善の動機につながらない状況で、将来を予測できるゲノムの強みを活用していただけたら、という思いです。遠い将来の『もしかしたら』という漠然とした可能性の中から、自分にとって最もハイリスクなところを知ることができるのです。具体的なリスクを知ったら、日々気を付けようと思いますよね。だからこそ、課題に直面しながら具体策が見つからず困っている健康保険組合に対して、ゲノム情報という今までにないソリューションを提供することで、日本の医療費の最適化に貢献していきたいと考えています」との説明に納得しました。 そもそも、高額でも自費でゲノム解析の2Idea4U vol.632022 Autumn高精度なゲノム解析による疾病リスク情報の提供を手掛ける健康保険組合が抱える課題その解決に向けた切り札として「手ざわり感」も大切なポイント紙で届くパーソナル診断情報の意味遺伝子を切り口に「予防」意識改革ゲノム解析というソリューション提供で日本の健康課題を解決に導く!
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