idea4u_vol50
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歴史を物語るもの資料1明治から令和までの堅実な歩みが「100年超え企業」としての誇り 1911年(明治44年)、大阪・阿波座にて創業。正規氏の曽祖父にあたる健三郎氏による、株券や文具を扱う活版印刷所が始まりです。後に業務拡張で移転するも、1945年(昭和20年)の大阪空襲で家も工場も焼失。出征していた信男氏(正規氏の祖父)の帰還後、落胆する両親を前に、「これからは復興しかない!豊かになれば果物も食べるようになるはず!」と、果物用木箱に付けるラベルに注目し、農業資材に参入します。当時のラベルは、独特のイラストが魅力。自社製以外も数多く集めたコレクションは、今や貴重な資料です(※下記参照)。木箱が段ボールへ、わら紐がネットへと、農産物の包装資材も変貌していく中、1990年に健男氏(正規氏の父、現会長)が一大決心しました。食べ物は安心安全、安定供給が重要!と、メーカーへと舵を切ったのです。仕入先や協力会社との関係を解消し、自社工場を作りました。その後のバブル崩壊やリーマンショックも、二度の大戦やオイルショックに比べると影響は少ないという感覚だそうです。「本業に専念し、堅い経営を続けてきたから今があるんです」という言葉は、何よりも説得力がありました。素材の機能研究・開発はもちろん鮮度保持×プラスアイデアで勝負 売り上げの内訳は、農産資材関係80%、一般食品雑貨用その他15%、包装機械とデジタル印刷の合計5%。軟包材と呼ばれるフィルム素材の、特にポリプロピレン(以下PP)が主原料ですが、日本フィルム工業会のPP出荷トン数から計算して、概ね25~26%、4分の1程度のシェアです。PPは、燃やしてもエチレンガスを出さないため、燃えるごみとして捨てることができる素材。また、PET、ポリエチレン、ポリエステルと多様な素材の中でも特に透明度が高くコシがあって、包装資材に適しています。さらに、鮮度保持の機能面の改良に利用しやすいのも特長と言えるでしょう。 野菜は収穫された後も、追熟して成長しようとしますが、根がない状態では単に体力を消耗し、鮮度が落ちていく だけ。そのため、酸素量のコントロールで成長を抑制しつつ、鮮度保持にちょうど良い呼吸量に保つ工夫が欠かせま せん。さらに、いかに新鮮な状態で消費者に届けるかという視点で重要なのが、「目指すのは『畑と胃袋を最短距離(時間的に)でつなぐこと』。農家にとっては、野菜=畑で採れたての味であって、流通して数日経った味ではありません。農家には鮮度保持の大切さを伝え、消費者にはなるべく早く食べてもらうきっかけづくり をしていきたい」ということ。また、作業効 率面で課題のある高齢就農者に対して、包装の効率化策も提案しています。手が届きやすい価格の機械を使い、高機能な包材で包むことで、より新鮮な状態での流通が可能となれば、大きな進化です。農産物そのものを高付加価値化し指名買い促進も欠かせない戦略 同じ農作物の産地同士が互いにライバル視し、売り場での産地間競争が常態化しているのも、商材としての差別化が進まない要因の1つです。「パッケージを印刷媒体として使い、指名買いしてもらうのが理想。おすすめレシピやキャンペーン応募を付けることで、購買に結び「包む」安心・安全で課題を解決!農産物の鮮度保持を起点に「食」「農業」のイノベーションの扉を開く突然ですが、消費者としてスーパーで食材を買う行動は、ありふれた日常のひとつですよね。その中で、特に野菜や果物は、どんな存在でしょうか。スーパーの「一等地」に並ぶ当たり前のものだけに、意識したことがない方が大半でしょう。ましてや、農産物の包装や流通についてはなおさらですね。この当たり前を日々支えているのが、株式会社精工です。100年を超えて歩み続ける、農産物包装業界のパイオニアです。社会構造の転換期とも言える昨今、農業を取り巻く環境変化への対応を迫られる中で、今後何を見据えていくべきか、さまざまなビジネスアイデアや未来イメージについて、林正規代表取締役社長に語っていただきました。■ みかん入りの木箱が縄で縛られていた当時の貴重な写真。■ 木箱に貼るラベルも、農産物ごとに、独特の趣のあるイラストが魅力。株式会社精工の歴史を感じるアイテム。2Idea4U vol.502020 March

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