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概念を変えたファッションショーとその記録としての映画作品資料前回2018年12月に第14回を迎えた兵庫モダンシニアファッションショー。[左の写真は過去の参加者の事例より]ステージ上での輝く笑顔が印象的です。これを題材にした映画『神様たちの街』(2016年田中幸夫監督作品)は、泣いて笑って感動できる名作。ファッション都市神戸から震災を経て発信し続ける意味 神戸市は1973年、全国に先駆け「ファッ ション都市宣言」を行い、ファッション=「衣食住遊」の新しいライフスタイルと定義し、文化の発信を行っています。明治維新の頃から、時代を切り開くきっかけであり続けたファッションの街神戸に、地域連携を重視する神戸芸術工科大学があります。「デザインの力で人々の暮らしを豊かに。アートの力で人々に感動を与える」を掲げる大学こそが、ユニバーサルファッション研究の見寺教授の情報発信の拠点です。 バブル全盛期に、百貨店の商品本部でヨーロッパブランドの世界観に触れ、ライススタイル提案に携わった後、現在の道へ。その矢先に起こったのが、95年の阪神淡路大震災でした。価値観を揺るがす事態に、「おしゃれなんて何の役にも立たない」と絶望したそうです。教えることすら辞めるべきか自問自答の日々が続くも、やがて明るい兆しが。被災者の方から「おしゃれを楽しめる日常に戻りたい」との声があがり、勇気を得たそうです。同時期に、兵庫県立総合リハビリテーションセンターの院長先生から「体の不自由な方のために、おしゃれな服を考えてほしい」と相談され、難しさゆえに躊躇していたところ、「制限があってもおしゃれしたい気持ちに応えてあげたい」との院長先生の熱意に背中を押されたといいます。体の不自由な方、高齢者の方、被災者の方、様々な制限の中でもおしゃれ心が元気の源になる!それを形にしようと決意した瞬間でした。華やかさや高級感とは異なる、機能性、利便性を追求しつつ、おしゃれ心を満たす、という大転換。ライフスタイルとしてのファッションという同一テーマの中で、パラダイムシフトが起きたわけです。ファッションの可能性は無限大!アジアでの連携は未来への懸け橋 先のリハビリテーションセンターで多くの協力を得て調査を行い、快適な服作りに必要なデータを得たことが、結果として博士論文にもつながっていきます。96年には、完成した服を皆さんに着てもらう形で、初めてのファッションショーを開催しました。協力者の方の「この私が人の役に立てて本当にうれしい。先生ありがとう!との言葉に、「お礼を言うのは私のほう。でもこれを機に、前向きになれたならうれしい限り」と。その後は、神戸市兵庫区主催の「モダンシニアファッションショー」への協力を続ける中で、その実録とも言えるドキュメンタリー映画『神様たちの街』(2016年田中幸夫監督作品)も含め、ファッションの可能性を改めて実感したそうです。1着の服との出会いが、その後の人生さえ変えていく。おしゃれしたら人に見せたい、話したいと思うようになり、自治体や企業が、集まる「場」を作れば出かけたくなり、生きる気力がわいてきます。 新しい取組みには予想外の展開が付き物なので、何をどこまで目指し、何ができるのかが肝心です。大切なのは新しいこと、わかりにくいことほど発信し続け、伝える努力を怠らないこと。ユニバーサルファッションを発信し続けた結果、中国・韓国の大学から講演依頼があったり、活動フィールドも拡大中です。2018年11月には、北京服装学院での高齢社会を考えるファッションショーとシンポジウムに参加。これから本格化する中国の高齢化問題に向け、一石を投じるものでした。講演タイトルは、「アジア地域の高齢化社会におけるファッションの役割」。ここで行動を共にした学生たちは、年齢、きっかけとしてのユニバーサルファッション地域からグローバルへとつながる扉ライフスタイル起点で生き方をデザインする年齢や体形に関わらず誰にとっても快適な衣服と、その土台となる生活全般(ライフスタイル)という側面から、ユニバーサルファッション研究の第一線でご活躍されている神戸芸術工科大学大学院見寺貞子教授(芸術工学博士)。ファッション=服飾という狭義の視点でカバーできない、社会的課題を解決するための考え方、さらにその先の「人としてどう生きるべきか、どう社会と関わるべきか」という独自のアプローチの極意、今後の可能性についてお話を伺いました。2Idea4U vol.462019 July

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