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通販に関する史実資料わずか30数年前の日本は通販はまだまだ未開拓な時代 20代でコンサル業務に携わった後、さらに大学で学んだのがきっかけで通販の世界に足を踏み入れることになった柿尾氏。大手シンクタンクに就職予定だったものの、指導教授の「通販は、アメリカではすごい勢いの業界!日本ではこれからまだまだ伸びる」という後押しを受け、1986年4月JADMAに入局します。しかし、当時は通販と言えば、周囲や家族から心配されるような時代だったそうで、隔世の感があります。小さな事務所で研究員としてスタートした当初は、データも揃っておらず、国の小売業統計に、通販は含まれていないのが実情でした。つまり、業界団体がデータを取らない限り、客観的分析ができないわけです。「この解決が、自分の使命だと感じました。正直大変だと思いましたが、アメリカやヨーロッパでの成功事例もあり期待感も大きく、とにかくやってみようと」。当時は、まだまだルールが整備されておらず、法律はあれど実際の運用が追いついてない、という状態です。例えば商品コピーは、消費者の目に留まりやすい大げさな表現も多く、法律に対する意識も薄かったよう。「世の中に対して信用の土台を築くことが業界団体としての急務だ」と悟ったそうです。通販の概念の広がりと日本市場の独自性 やがて、通販にとって大きな転換期が訪れます。ネット通販の本格化の波が押し寄せた1997年から2000年頃に、今で言うプラットフォームという概念が出現。通販絡みでは日本独自の展開であるECモール登場です。何でも専門分化していて自己責任で選ぶ文化のアメリカとは異なり、「ここなら大丈夫」というお墨付きがあれば納得する日本人のメンタリティにはまり、やがて巨大ECモールに成長します。「ここで売ってる商品なら安心」という評価を得た結果です。売り場としてのお膳立てがあったからこそ、多くの消費者がネット通販の世界に安心して入っていけたということです。とはいえ、通販がインターネット一辺倒になったかといえば、そうではありません。既存の紙媒体の通販は、別の価値観で信頼され支持され続けています。言うまでもなく高齢者の紙媒体への信頼度は高く、さらに年代に関わらず、紙媒体に宿る感情的な伝達力や質感は高評価のままです。日本ダイレクトメール協会が実施した若年層のDM意識調査(2018年4月)にも、デジタル慣れした20代の若年層には、紙はむしろ新鮮で特別感が伝わると記されています。既存通販とネット通販のどちらか一方が良いという話ではなく、パラレルに動いているという感覚でしょう。顧客中心主義を正しく実行感情に訴求するのも正解 また、取扱い商品やカテゴリーを限定した日本独自の「単品通販」では、健康食品や化粧品等で定期購入モデルを作ったものの、ここにきて「仕組み」で売るのも限界が見えてきました。売り手都合の定期購入では、消費者の心が離れていくだけ。消費者自らネット検索し、ユーザーの口コミを含め、容易に情報入手できるからこそ、「仕組み」から「顧客中心主義」にシフトする必要があります。「CX(顧客経験価値)を重急速に買い物チャネルの多様化が進む昨今、通販の形もさまざまな進化を遂げ、 電車で移動中にスマホでTシャツ購入、という買い方も当たり前の風景になりま した。そんな流れの中、30年にわたって通販業界に携わってこられた経験を活かして情報発信を行っておられる柿尾正之氏。長らく日本通信販売協会(JADMA)にて発展・進化の現場に立ち会ってこられた柿尾氏ならではの視点から、通販を取り巻く大きな変化と現状の課題、これから進むべき方向性等について語っていただきました。通販を見つめ続けて30年以上通販が発展し続けるための切り札は正しい「顧客中心主義」へのシフト19世紀後半当時のアメリカは、まだまだ産業の中心が農業。広大な国土に点在して暮らす農業従事者を対象にしたカタログ販売は、都市部 から離れたエリアに暮らす多くの人々に支持された。1876年(明治9年)に、農業専門誌『農業雑誌』において、アメリカ産トウモロコシの種子を販売されたのが始まりとされている。当時は通信販売という表現はなく、「郵便注文営業」と呼ばれていた。これは、英語の「メールオーダーサービス」の日本語訳として名付けられた。通販の始まりは、やはりアメリカ!日本で最初の通販は意外にも…その1そののののののののののの22Idea4U vol.442019 March

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