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2Idea4U vol.302016 November 日本の社会が直面している超高齢化問題。厚生労働省の「人口動態統計」によると、65歳以上の高齢者数は、 2025年に30%超えの予測です。諸外国に比べ、例のないスピードで進行する中で、シニアマーケットの存在感も増すばかり。そんな中、注目したのが、1903年(明治36年)創業、医療用ゴム製品からスタートした宇都宮製作株式会社です。いわゆる「100年企業」として社会の変化に細やかに対応し、医療、介護分野を含む幅広い事業展開を背景とした商品開発から、ツールとしてのカタログ制作へのこだわりまで、 独自のビジネススタイルに定評があり ます。ストーリー性のある情報発信で、未来の日本を元気にする本質的な切り口を探ります。 創業当時、「くすりの町」として知られる大阪・道修町に店を構え、商品を買い求める客のリヤカーの行列ができるほどだったという。医療用ゴム製品に始まり、大正時代にはゴム製水枕の販売を開始した歴史が語るのは、医療用ゴム枕の締め金を開発した創業者の信念から続く、新しいモノをゼロからつくりだす確かな技術です。 現在は、メディカル、サニテーション、工業用品、量販、医療介護の5つの事業部で構成されています(図1参照)。うち、シニアマーケットとの関連で、メディカルと介護分野を合わせると、売り上げの約43%。介護単体では 15%ほどで、ここを今後伸ばしていきたいとのことです。 宇都宮製作の名刺で、ロゴマーク横で存在感を放つ、『まもる』を製つくる!という力強い文字。これは、創業110年の節目にあたる2013年に生まれた、新たなスローガンであり、安全・清潔を まもる企業としての意思表明とも言えるもの(図2参照)。当然、今後の急速な高齢化への対処という意味において も介護分野での重要なファクターです。 「宇都宮製作は、平たく言えば、『ま もる』を製つくる屋さんです」とやさしい眼差しで語る大西副社長。高齢者をビジネスターゲットとして見るだけの企業とは一線を画す風格があります。医療介 護事業では、「高齢者が生き活きとした暮らしを送るための製品を開発し、商品を提供する」という目標に向かっており、メディカル事業では、感染管理に役立つ製品開発など、会社全体として『まもる』を製つくる屋さんとして胸を張っていける、というわけです。現在、医療介護分野でも「卸からメーカーへのシフト」が進行中。2025年の高齢者30%超えを前に、健康寿命を延ばすことに寄与する視点です。実績のある施設向けディスポーザブル製品と、新たに予防医療にも注力し、医療介護分野を充実させて、高齢者がイキイキとした社会の実現に貢献できる、というわけです。これまでの介護製品の発想は、「歩けないから杖を使う、体が動かないから電動ベッドを使う」等の不満足要因をどう解消するか。しかし今後は、「健康維持、あるいはよりおしゃれに見える」といった満足要因を満たす製品づくりの時代。介護される側も世代交代する中で生まれる新しいニーズを見逃さないことが、本当の意味で新たなシニアマーケット創出につながるのです。 新たなスローガンができた2013年以降、製品企画のメンバーが営業に同行し、お客様から直接ヒアリングを行い、モノづくりや商材の選択、カタログづくりに反映する取り組みがスタートしました。一方で、大学や病院との共同開発にも積極的に取り組み、その代表例 が、国立循環器病研究センター、工業デザイナーと共同開発した防曇アイガー超高齢化大国ニッポン! シニアビジネス「これから」の形図1.■メディカル事業部  感染管理に役立つ医療用衛生資材をトータルに提案■サニテーション事業部  食品産業の衛生・安全管理をトータルにサポート■工業用品事業部  得意な産業分野で素材×加工技術提案によるお役立ち■量販事業部  ワークシーンからホームユースまでプロフェッショナル品質を提案■医療介護事業部  高齢者が生き活きした暮らしを送るための製品開発と商品提供■身の回りの清潔を衛る ※感染、汚れ、異物混入■目に見える資産を護る ※身体、食品、商品■目に見えぬ価値を守る ※信頼、安心、環境  企業リスク守護衛図2.シニアマーケットのとらえ方で可能性も大きく変わる!モノづくりの新たなスタイルとアイデアから見えてくる未来全てはモノづくりから始まった『まもる』を製る!アイデンティティシニアマーケティングの本質を探る

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