2Idea4U vol.242015 November ピザや丼などの宅配ビジネスは、各店舗ごとに配達エリアが限られている商圏確定型のビジネスだ。注文の獲得手段としては、Web告知、チラシのポスティング、新聞折込チラシによる新規顧客の獲得がメインであり、どちらかというとダイレクトマーケティングよりもエリアマーケティングがよく行われている。 だが今回はあえて、ダイレクトマーケティングに取り組むピザ宅配会社の事例を紹介する。この会社では以前から、エリアマーケティングを通じて新規顧客の開拓に力を注いでいたが、既存顧客育成の大切さに改めて気づき、現在はDMにも力を注いでいる。 ある日、ピザ宅配会社(以下では、A社と呼ぶ)の販促担当者(以下では、Bさんと呼ぶ)から、販促コンサルタントのK氏に連絡が入った。電話は、販促手法について相談したい、という内容であった。 実は約1年前に、K氏は既存顧客育成のためのDMの提案をA社に行っていた。だがその当時、A社では「ポスティング(エリアマーケティング)を定期的に行うだけで十分に新規顧客が集まり、費用対効果も高い」という状況にあったため、BさんはそのDMの提案にほとんど興味を示さなかった。 ところが1年が経過して、状況が一変した。ポスティングの効果が薄れ始め、エリアマーケティングだけでは売上げが伸びなくなってきたのだ。困ったBさんは、以前の提案を思い出し、K氏に電話してきたのである。 K氏はBさんと会い、現状のヒアリングを行い、以下の状況を確認した。(1)顧客データの管理システムは導入されているが、活用されていない A社では、注文を受けた顧客のデータをシステムに蓄積しており、一定の条件に合致した顧客だけを抽出する機能(たとえば、RFM分析機能など)を利用しようと思えば利用できる環境にあったが、実際には販促部でも店舗でもほとんど活用されていなかった。(2)3ヶ月前に一度ダイレクトメールを 実施していた A社は主にポスティングを活用してきたが、実は3ヶ月ほど前に一度DMを実施したことがある。その時は、ポスティングに使うメニューチラシを3つ折りにして、長3サイズのビニール封筒に入れて郵送した。 その時のDM発送条件は、以下の通りであった。・顧客の抽出条件:最近6ヶ月以内に 購入した顧客・DMの封入物:メニューチラシのみ・DM送付数:約8,000通・特典:Mサイズ以上のピザの注文には 500円引きクーポンを提供 上記のDMを行ったものの、残念ながら満足できる結果を残すことが出来なかった。そのため、BさんはK氏に白羽の矢を立てたのである。 状況を把握したK氏は、さっそくBさんに次の提案を行った。 「前回と同様、メニューチラシを送付するDMを実施しましょう。実施する店舗も特典も前回と同様でいいと思います。ただし、2つだけ変更しようと思います」 K氏がDM販促のレスポンスを上げるために提案した2つのポイントは、以下の通りであった。(1)RFMによる顧客のセグメント化 RFMとは、顧客の最終購買日(Recency)、購入回数(Frequency)、購入金額(Money)の3つの軸で顧客セグメントを行う分析方法である。 K氏は、RF分析により顧客をセグメント化するために、1人当たり購入回数の理想値をBさんに尋ねたところ、「年4回」との回答があった。そこで、過去1年間の顧客データを使って実際の購入回数を分析した結果、年4回をクリアする顧客は全体の約3割であった。 次に、DMを送付するターゲットを決めた。一人当たりの購入回数の理想値である「年4回」購入に引き上げられる可能性が高いのは、現在年2〜3回の購入者で、かつ、Rが前回と同様6ヶ月以内の顧客(図1のC参照)であると想定した上で、次の提案を行った。 「DMの費用対効果を考えると、RとFが高い上得意客にも送るべきです。高いレスポンス率が見込めますから。」 この提案にもとづき、図1の通り、RF表をA〜Dの4つのブロックに分け、ピザ宅配会社がDMを活用するようになった背景DMの効果を高めるために行われた提案内容新規客開拓だけでなく、既存客の育成にも力を注ぐ宅配ビジネスのダイレクトメール戦略販売促進最前線
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