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6Idea4U vol.192015 JANUARY 個客識別マーケティングで顧客の差別化実現のために利用される主な手法は以下の10種類に分類できる。  1 価格  2 購入総額特典  3 ポイント  4 パートナー  5 懸賞、くじ引き  6 社会貢献  7 特別待遇  8 個人対応  9 顧客参加 10 スピード これらは特徴が異なり、顧客に対応して異なる影響力を及ぼす。その中で注目される購入総額特典、ポイント、特別待遇について説明する。 いくつかの商品を選んでカード・メンバー向けの特別価格を設定することは、スーパーなどでの個客識別マーケティング導入の典型的な第一歩だが、もう少し進んだ企業では、カード・メンバーの一定期間の購入累計額に応じた割引や特典を与えることで、来店頻度が高く、購入額の多い顧客に、より大きな特典を提供している。 アメリカのスーパーでは、感謝祭(2月の第4木曜日)に七面鳥のプレゼントが行われることが多い。感謝祭までの6~10週間の間に、カード・メンバーが一定金額以上購入すると、七面鳥が無料で提供されるのである。 マスマーケティングの従来型小売業は、七面鳥を原価割れで販売し、顧客が他の商品もついでに購入することでそのロスを埋め合わせようと考える。しかし、期待どおりの効果があるとは限らない。 一方、個客識別マーケティングの小売業は、無料で七面鳥を提供する顧客が収益性の高い顧客であることを事前に承知しているばかりか、どの顧客の購入額が増え、どれだけ粗利に貢献したかも把握できている。七面鳥以外のプログラムに関しても、それが個々の顧客に与えた影響をしっかり把握できるのだ。 購入総額特典の二番目の方法は、一定期間の購入総額に応じて、次回の買物時に割引が受けられるクーポンなどを提供するというものだ。 購入額が大きく、より収益性の高い顧客に即座に特典を与えるこのアプローチは、顧客の浮気防止対策として利用できる。また、購入総額が増えるほど割引率が大きくなるため、競合店への完全乗り換えを防ぐバリアの役割も果たす。 そして、購入総額を増やしてワンランク上の割引段階に早く到達するために、顧客はいつでもカードを提示するようになる。これにより、小売業は顧客の購買行動の詳細な記録を入手できる。購入総額特典の欠点 しかし、購入総額特典には運用コストがかかる。プログラムを魅力あるものにしようとするほど、高い特典を設定する必要があるからである。 コストの総額を最小限に抑えるためには、提供する特典を購入額が多く収益性の高い顧客に集中させる必要がある。特売品を減らしたことによる節約分を、このプログラムのコストに充てるべきだろう。 小売業におけるポイント・プログラムは業種を問わず普及している。その優位点と欠点を理解しておく必要がある。ポイント・プログラムの優位点●単純明快さ ポイントを使えば、特典のハードル設定や購入額に応じた段階的な特典設定が簡単に導入できるので、優良顧客の優遇に都合がよい。 また、一回の購入額や、来店頻度、累積購入額などに応じた顧客差別化も、ポイントなら簡単にできる。●価格競争の回避 ポイントを活用すれば、競合店との価格競争に巻き込まれずに、より大きなバリューを顧客に提供できる。特定商品を競合店の価格に合わせて販売するとき、これと別にさらにポイントも提供すれば、競合店を一歩リードできる。●売上増加に貢献 3か月間の購入総額が2万5000円以上の場合、次の3か月間の買物の際には、ポイントを通常の2倍提供するというように、過去の購入総額に基づき、次の買物時にボーナス・ポイントを提供する方法で、売上げを増加させることができる。●顧客の流出(ディフェクション)防止 ポイントを使って顧客の他店への流出を防止できる。ポイントが貯まるほど、より上の段階の魅力的な特典をもらおうとする意識が働いて、他の店で買物をしようと思わなくなるからだ。データベースマーケティングの基本購入総額特典で優良顧客に大きなメリットいろいろ活用できるポイント・プログラム個客識別マーケティングの重要ポイント【第3回】顧客差別化のための具体的手法

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