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3Idea4U vol.192015 JANUARY産直から見える売りのヒント康を守るため一手間余分に手をかけたもの」であることが分かると、「そういうことをもっと説明すればよいのに」とか「そういう趣旨なら賛成。これからは注意して、そういう農産物を購入する」と答える人々が70%にも及び、なによりも、こうした環境保全型農業のキーワード、取組み状況や意味がほとんど周知されていない、PRされていないことが、制度が有効に機能していないことの最大の要因であると考えられるのである。 慣行栽培とは異なる環境保全型農業に取組み、生産場面から差別化を図る。そのことを持って付加価値化、ブランド化を図るという取組みは、その良き意図にもかかわらず、制度自体のPR不足という「初歩的失敗」(関係者)によって、思うように功を奏していないのである。 ところが、こうした一つの壁にぶつかっている環境保全型農業の普及とブランド化の取組みに比して、あまりにも安易で、似非(エセ)な、農産物の「ブランド化」の取組みも多々見受けられるようになってきている。 首都圏をはじめ全国各地の「地域物産展」で同時開催されることが多い地域名を冠した産直フェアやマルシェの場合には、「ブランド」とは地域名のことを指しているにすぎず、土づくりや農法、化学農薬や化学肥料の使用の有無、農業者・農業団体の特性や特技、また商品として出す農産物の特徴など、生産工程やそれに密接に関わる部分に関しては、他と変わるところがない場合がほとんどだと言ってよいだろう。 地場産野菜がブームとなっている昨今では、人寄せのために「産直農産物」は不可欠であり、その限りにおいて、当該地域の「地域名」においてくくられる農産物を集めることが必要となっているだけであって、「ブランド」を冠することのできる―言い換えれば、消費者に圧倒的な信頼感を永続的に持ってもらえることのできる―、品質とそれを保証する生産工程自体の特質化・差別化を図ることには、あらかじめ無関心・無責任であると言っても過言ではなかろう。 先に述べたようなこれまでの環境保全型農業の普及・拡大の取組みが、マーケティングの視点のない農業技術向上一辺倒のものだったとすれば、昨今大流行の「地域ブランド産直フェア」なるものの多くは、生産工程の技術化・差別化とは無関係の似非「ブランド」作りだと言っても過言ではなかろう。もちろん、そうではない、地道な地域農業の再創造を基礎にした取組みも多く知っているからこそ、ここで警鐘を鳴らしておきたいのである。 冒頭、GAPや環境保全型付加価値農業の普及は芳しくは進んでないと書いた。年々高齢化が進む中山間地の直売所では、「GAP」とか「特別栽培」だとかと聞いても、言葉さえ初めて聞く農家が多いのが現実だ。 しかし、それは、制度や名称・手順―つまり「形式」を知らないというだけのことだ。この間の取組みを通じてそのことを確信してきている。 自然に負荷がかからないように、栽培している自分たちも、またそれを食べる人たちも、体に安全で安心できるように、化学農薬や化学肥料を控え目にして、できるだけ自然の力を頼りにして、一手間かけて丁寧に農作業をし、その農産物をお裾わけのように直売所に持ち寄って販売してきたのが中山間地の直売所なのである。そこではそもそもの初めから「水源の水と緑と集落の笑顔を守る農業」が取組まれてきたのである。 この直売所が、現代的な農業生産工程管理(GAP)の手法を用いて自分たちの農法を平準化し、「エコファーマー」「特別栽培」さらには「有機」へと質的な純化・発展を進める時、日本農業は、平地ではなく山間地から、新たな制度の導入や押しつけではなく、これまでのものを新たな視点で改良し脱皮・発展させる形で、 新しい展開を遂げるのではないだろうか?いや、そうあって欲しいと望む限りである。毛賀澤明宏(㈱産直新聞社 代表取締役・編集長/地域コーディネーター)代表)※長野県版の新聞「産直新聞」(季刊)、全国版の雑誌「産直コペル」(隔月刊)を発行。直売所・地域おこしのサポートも多数行う (連絡先0265-82-1260 HP:検索→産直新聞)まとめ■生産工程の特化・差別化なしにブランド化はなし。■生産工程管理を基礎にして付加価値農業の創出は進む。生産工程の差別化と無関係の似非「ブランド化」「圃場や管理庫は整備が行き届いていますか?」SAP視察員が巡回「エコファーマー」「環境にやさしい農産物」の認証マーク

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