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2Idea4U vol.192015 JANUARY 当社は本年、長野県からの委託を受け、長野県内の約220軒の有人常設直売所と共同して、「環境にやさしい農業」実践直売所育成事業を進めている。 なかなか農業現場に普及しないと言われる農業生産工程管理=GAP(Good Agricultural Practice)を県内の直売所を拠点にして普及し、それを基礎にして、「エコファーマー」「特別栽培」「有機栽培」などの環境保全型付加価値農業を拡げることが目的だ。 GAPとは、農業生産工程の標準化と自己管理の強化を目指す、いわば農業版のISOのようなもので、欧米の農産物輸出入や、大手食品メーカー・流通業者の取引に関しては、例えば「グローバルGAP」とか「ユーロGAP」、また「イオンGAP」とか「マクドナルドGAP」というような独自の基準が設定されていることが多くなってきている。 基準の厳しさ、手続きの煩雑さなどがあり日本ではなかなか普及が進まないが、「海外輸出」とか「大手との取引」とかの“ビッグ・ビジネス”の観点ばかりでなく、農家が自分自身の生産工程を管理することのメリットの大きさが注目され、普及の拡大が急がれている。 一方、「エコファーマー」「特別栽培」「有機栽培」などの認証制度の整備が進む「環境保全型付加価値農業」とは、基本的には化学農薬や化学肥料などの使用を軽減もしくは取止め、自然環境との共存と、作業者・消費者の健康などへの影響回避を図り、できればそのことにより、通常の栽培方法で栽培された農産物よりもある程度高価格での取引を目指す農業のことである。 「エコファーマー」は、環境保全型の農業へのシフトを計画化した農家を、「特別栽培」は当該地域での化学農薬・化学肥料の一般的使用基準量の30%または50%を削減して栽培された農産物を認証する。長野県では「特別栽培」の農産物を「環境にやさしい農産物」と呼んでいる。また、「有機栽培」は、同じように特定の有機資材以外は使用せず、無化学農薬・無化学肥料で規定の年数以上栽培されている農産物を認める「JAS有機」と、これとは相対的に独自の「無化学農薬・無化学肥料」農業を進める部分とがある。 現在当社が進める「環境にやさしい農業」実践直売所育成事業とは、要するに、GAPの普及を基礎に環境保全型付加価値農業を拡げ、中山間地の直売所から農業を元気にしようという取組みであり、すでにこれまでに、県内直売所220ヵ所の一斉ヒアリングや、10ヵ所での指導者研修、設定した4つのモデル直売所での先進的取組みのサポート、環境保全型農業の産物のテストマーケティングなどを精力的に展開してきているのである。 こうした取組みの過程で、日々明確になってきていることは、「エコファーマー」や「特別栽培」など、国が旗をふり、都道府県が率先して取組んできた認証制度が、その多くの努力にも関わらず、特に消費者にほとんど認知されておらず、単純に「認証を取り、マークを貼って売れば売れる」と言われもし、期待もされてきた成果が得られていないという厳しい現実である。  長野県では、積極的に認証取得に動いた農家の多くが、残念ながら「(エコファーマーや特別栽培の)認証シールを貼っても売上げは何も変わらない」と嘆いており、JAの単組の中には、単組として、「エコファーマー」の更新申請をしないことを決めたところもある。 端的に言って、それらの認証制度が消費者にはほとんど理解されていないのである。当社のヒアリング調査によれば、直売所やスーパーで野菜を買い求めた客の約75%が「エコファーマー」や「特別栽培」という名称さえも「知らない」と答えている(3カ所合計300人にヒアリング)。しかし、他方で、同じ客に、それらの意味や制度を説明し、それが「環境と健産直から見える売りのヒント「できる限り農薬も化学肥料も減らしたい」。それが農家の共通の思い農業生産の行程を標準化することがGAPの第一歩「水と緑と笑顔を守る農業」の挑戦―生産の差別化を欠落させた〝ブランド化〟を超えて―「GAP」「環境保全型農業」を直売所から拡げる取組み「エコファーマー」「特別栽培」など差別化表示の認知度の低さ関係団体プロフィール■(株)産直新聞社 長野県駒ケ根市赤穂497-634 ☎0265-82-1260■長野県農政部農業技術課 環境農業係 長野県長野市南長野幅下692-2 ☎026-235-7222

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