3Idea4U vol.152014 MAY商売繁盛の秘訣食事はそれ以上頼まず、デザートで締めるという食べ方が多かったからと判明した。ちなみにバーニャカウダの単価は、約930円。サラダは880円であった。 以上のデータ分析を、簡単にまとめると次の様な結果が得られた。・ディナー売上は減少傾向。・理由は、コースの注文数の減少。・特に以前好調だった2,800円コースの減少幅が大きい。・平日と週末では、平日のコース落ち込みが大きい。・コースの不振をパーティが若干カバー。・バーニャカウダの関連注文率は農園サラダより少なく、客単価向上に寄与しない。 結果報告を聴いた社長とC店長からは、次のようなコメントが聞かれた。 「定期的に店の常連客に対し行うインタビューの中でも、ファミリー層にとって、2,800円のコースでもかなり高いという声があり、それが結果として反映されているのではないか。」 (A社長) 「また目新しさ不足や、メニューブックの読みにくさ、等もあるかもしれません。接客しているとメニュー選びにとても時間がかかっていることがしばしば感じられてはいました。」 (C店長) バスケット分析の結果については、「接客していて、なんとなくそう思っていましたし、日々のランチ後のスタッフミーティングでもその話は出ましたが、やはり数字にはっきりと表れていたのですね。」(C店長)と非常に納得されていた。 A社長からC店長への指示は、コース料理の抜本的な見直し、客単価を抑えつつファミリーやカップル、女性向けのリーズナブルな単品メニューの新規開発、グループで店を利用してもらえる新たな需要創造だった。 命を受けた店長がスタッフと考え、社長に提案した改善案は次の通りだ。①コースメニューの絞込み 3種類あったコースを4,000円の「おまかせコース」1本へ。②リーズナブルな単品メニューの開発 480円~580円の比較的手頃なメニューを新たに開発。仕入れ先契約農家が増え、よりよい条件で仕入れが可能になったことも追い風となる。③「女子会」プランの開発 パーティプランを更に細分化、新たに2,500円、3,500円での「女子会プラン」を開発する。④「レストランウェディング」の開発 店舗が広く趣ある内装であることから、立食80名、着席50名の収容が可能なレストランウェディングを開始。引き出物に、新郎新婦手づくりの野菜の加工品を提供するなど、ユニークでこだわりあるサービスを開発。 その結果、ディナーの実績はゆるやかに回復し、変わらず好調なランチ売上と共に、2012年後半から2013年にかけても黒字化を達成した。 レストランSの成功の背景には、2つの要因がある。1点目は、データ分析という定量的側面からと、スタッフミーティングや常連客へのインタビューといった定性面からの情報の両方を収集することで、問題の真因を探ろうというアプローチを取ったことである。2種類の情報を意思決定材料にしたことで、より仮説に精度が増し成功の実現性の高い提案が可能になったと考える。 2点目は、1つか2つの特定の課題解決に絞り込んでデータ分析に取組む考えを示したA社長の洞察力である。データ分析の経験が乏しい経営者の場合、どうしても、あらゆる種類のデータを取ってやみくもに分析すれば、何かが出るだろうという考えの持ち主も少なくない。一方A社長は前職がエンジニアだったこともあり、自らソフトウェアのプログラミングも出来るスキルを持っていたため、データに対するアプローチが正しかったといえる。故に、最も懸念すべき課題の解決につながった貴重な事例といえる。松原 和枝(株式会社インスティル代表)■同時注文率5%以上、かつリフト値1.5以上図3図4まとめ■売上データの分析と、常連客・スタッフの生の声から問題の真因を探ることが重要である。■闇雲にデータを集めて分析するのではなく、解決すべき問題を絞り込むことが必要。さらに「声」を加えて改善策を策定成功要因は2種類の情報と課題の絞り込み
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