PROFILE株式会社三井住友フィナンシャルグループ/株式会社三井住友銀行デジタル戦略部 上席部長代理組込み系カーナビゲーションやデータ暗号開発の ITエンジニアを経て、消費財メーカーで業務用セールス、海外事業のM&A、事業経営、酪農・乳牛・ワインの新規事業立ち上げ後、グループIT戦略の企画立案やモダナイズアーキテクチャ戦略をリード。現在は三井住友銀行にて、デジタルIDを中心とした新規事業開発やオープンイノベーション施設の運営に従事。株式会社三井住友フィナンシャルグループ/株式会社三井住友銀行デジタル戦略部 上席部長代理2024年株式会社三井住友銀行入行。生成AIをはじめとしたデータプラットフォーム領域を中心に、マーケットインテリジェンス(市場戦略情報)の調査や、ビジネスエコシステムの構築を推進。入行以前は、外資系コンサルティングファームや外資系シンクタンクにて、ITアナリスト として十数年間活動。講演・執筆の実績多数。- 4 -注1) 『オズの魔法使い 』(1900年 L.F.ボーム著)はパブリックドメイン作品です。鳥巣 そうですね。少なくとも現時点では人がコントロールするしかない。清水 生成AIを使うにしても、「人が関与する 」ことに、やはり重要な意味があると実際にやってみて思います。土管から出てきたものに対して人が仕上げをするから、そこでぐっとクオリティが上がる。視聴いただけるとわかると思いますが、音楽の質もかなり高い。逆に、元となる素材や表現の種類をたくさん出すのは、生成AIにサポートしてもらえばいいのです。——プロジェクトの途上で当初の想定と違って戸惑ったり、苦労した点はありますか。鳥巣 完成した映像を「公開 」に持っていくのに非常に苦労しました。当初から映像はWebサイト上で公開し、一般の方々も見られるようにしようと考えていたのですが、行内に説明していく中で、金融機関にとって「信用 」は何より大切であり、前例のない取り組みだったとしても、それによってこれまで培った「信用 」を損なうことがあってはならないという、金融機関と しての原点に改めて気づかされました。例えば、生成された映像が著作権を侵害しているリスクはないか、公開映像を見た人がネガティブな評価を下すリスクはないか。それについてさまざまな部門から細かな確認が入りました。例えば、映像にはブリキやライオンなどが登場しますが、それらが著作権を侵害していないか見極めるため登場シーンを一コマずつチェックするなど、事前に予想していなかった作業が大量に発生しました。そこで、チェックのための仕組みやプロンプトの保存など、新たなルール作りにもトライしました。——法とルールを守り、信用を損なわないようにするために大変な苦労があったようですが、想定外の事態に直面して挫折しそうになったり、公開を諦めようとは思いませんでしたか。鳥巣 困難は多かったのですが、各メンバーの強い信念とチームワークが、それを乗り越える力になりました。——プロジェクトの成果は今後、ビジネスや社会にどのように波及するとお考えですか。鳥巣 プロジェクトを成し遂げたこと自体が、行内の生成AI活用を一段と推し進めることになったと捉えています。SMBCにはすでに行内の専用環境上で構築した「SMBC GAI 」という全従業員が使える生成AIツールがあり、AIの業務活用が進みつつありますが、清水 博 氏(編集部)今回のプロジェクトにより、クリエイティブな場面でも生成AIを利用していく潮流を創っていくことができたと思います。ゆくゆくは行内だけでなく、さまざまな業種で有効な生成AI活用法を提案したり、さらには少子高齢化対策や 日本の再成長といった社会課題を、生成AIを活用して解決していく、そこでSMBCが中心的な役割を担うことを 目指したいですね。清水 プロジェクトを通じてSMBCが未知なる技術に積極的にチャレンジし、世の中に届けていこうとする姿勢を見せることができたと思います。映像を創って終わりではなく、今後も生成AIに限らない新しい技術に触れ、SMBCがテック企業に生まれ変わっていくというメッセージを、実を伴いながら継続的に発信していきたいですね。鳥巣 悠太 氏SMBC発の生成AI活用技術を社会に広げたい生成AI活用の課題とは
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