idea4U_vol73
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考えながら素早く試行を繰り返す「ラピッドプロトタイピング」オープンイノベーションと日本の現状コーン・フェリー・ジャパン株式会社 ハッピープロジェクト合同会社 横浜国立大学 および 京都外語大学 非常勤講師 京都で生まれ育ち、博覧会等のイベント企画に携わる。24歳で米国リベラルアーツ大学に留学し、大学院でMBA(財務会計)を取得。大手会計事務所でアルバイト中にシリコンバレーのスタートアップ企業に引き抜かれる。2003年帰国後に多数のプロジェクトを立ち上げた後、外資系ホテルの財務部長に就任。2012年、TEDxKyotoの企画・運営に参画。その後、富山県氷見市観光協会で地域振興に尽力。2019年から京都芸術大学准教授を4年間務めた。2024年から横浜国立大学でも非常勤講師、教育・地域・ビジネスの融合に取り組む。Idea4U vol.732025 Spring4 考えながら、チームで意見を出し合い、テストと改良のサイクルを繰り返し、最適化を図る。このスピードを体感すると、参加者に「まずはアクションを起こしてみよう」という意識変化が生まれるという。日本企業には細部までこだわる文化があり、実際のプロトタイプでも高品質が求められる傾向があるが、まず形にすることが大切であると改めて知る。失敗を許容しながら素早く試行する手法は超高速意思決定力を養い、独創的なアイデアや新しい解決策を生み出す。 オープンイノベーションは、外部の知識、技術、資源を活用して新しい製品やサービスを創出する取り組みである。スタートアップとの共同開発や大学との産学連携などがその一例だが、大企業の意思決定の複雑さやリスク回避思考などが課題となり、有益な事業創造に結びついていないのが現状だ。 「オープンイノベーションが注目を集め、企業が専用施設を設けたり、海外からアクセラレーターを招いたりして環境整備を進めてきました。日本でもこの取り組みが広まってきたのは事実です。しかし、実際には『プロトタイプの実践』が欠けているケースが多い。予算を十分に割り当てないまま担当者を配置してイノベーション施設を立ち上げ、わずか1~2年で閉鎖されるという事例も散見しました。施設を作っただけではイノベーションを生み出すことはできません」と川向氏は指摘する。 「ラピッドプロトタイピングでは多く 日本企業の成長鈍化が続く中、イノベーションの創出が急務となっている。一方で、リスク回避を優先した保守的な経営姿勢や、企業に根づいた完璧主義的な思考が新しい挑戦を阻み、変革の波に乗り遅れる企業も少なくない。本記事では、多彩な経験を持つ川向氏の取材を通じて、ラピッドプロトタイピングやリベラルアーツの重要性を紐解き、日本企業が再び成長軌道に乗るための鍵を探る。 ラピッドプロトタイピングは、製品の試作品(プロトタイプ)を迅速に作成し、短いサイクルで試行・検証・改善を行うプロセスだ。変化の激しい市場環境において、アイデアを迅速に形にし、早期に市場の反応を確認できる手法として注目されてきた。 2013年、川向氏は、京都同志社大学のビジネススクールで、Google Glassを開発したTom Chi氏を招いてワークショップを開催。複数チームに分かれ、ごく短時間で試作品を作るプロセスを実践、共有した。この経験をもとに川向氏は、オープンイノベーション施設であるQUINTBRIDGEなどでラピッドプロトタイピングのワークショップを展開するようになる。 「毎回お題を決め、チームに分かれたら、10分でアイデアを練り、10分で試作し、10分でテストを行います。使用する材料は、段ボールや紐、紙、モール、アルミ箔、紙コップなど。これらを使って立体物を作り、他のグループの人に『誰が、何のために使うのか』を伝えて実際に使ってもらいます。使い方を教えないので意図しない使い方をされることもありますが、その過程を観察することで、ユーザーのまだ満たされていない“Unmet Needs”に気付くことができるのです」と川向氏はいう。共感を出発点として実行と検証を繰り返すデザイン思考では、オブザベーションは未知の問題を発見するのに極めて重要だ。「また、日本ではあれもこれもと機能を詰め込む傾向がありますが、ワークショップでは必要最小限の機能に落とし込むことで、コンセプトをその本質のみに凝縮させる思考訓練になります」川向 正明 氏超高速意思決定が成長をけん引するリベラルアーツから学ぶ日本企業に必要なこと

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