idea4u_vol45
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るスタイルが基本でしたが、今やオンラインなど販売チャネルの多様化はもちろん、販売機会を創造する動きを重視しています。若いアーティストにふさわしい内容の仕事を提供し、「食べていける アーティスト」に育てるという発想です。例えば、オリジナル商品のパッケージデザインをアーティストが担当、エンドユーザーとしてはその商品を買うことでアーティストとのつながりを実感してファン化し、売り上げによって会社とアーティスト双方に利益がもたらされ、循環していきます。アーティストは登録制。登録にあたってはスカウトが9割で、①スター性(キャラクターを含む)、②純粋に作品の良さ、という2つの基準で選ぶそうです。アートに対する本気度は、ぎこちなくても自らアクションを起こす姿勢に現れるとのこと。①タイプはイベント向き、②のタイプは商品向き、と目的によって適性があるからです。ちなみに、アーティストとしての独立をサポートするにあたり、「いずれ立派なアーティストになったら、『カワチとこんな仕事しました』と言いふらしてくださいよ、と冗談で言うんです」と河内社長。 もっと身近なところでは、アルバイトスタッフも将来アートのプロを目指す描き手揃いなので、店頭POPのクオリティが高く、毎月河内社長自らPOP賞該当作品を選定し、賞品付きで表彰しているそうです。これも、技を磨くきっかけになっている可能性大です。スタッフに対しては、会社としてアーティスト活動への理解・協力もあり、様々なサポートを実施。スタッフの中から、有名アーティストが生まれる日も近いかもしれません。心斎橋店での大きな挑戦!新たなブランディング戦略拠点へ 活動の一部としてプロのアーティストを対象に行っていますが、全体の中で大きな比重を占めるのは「ふつうの」「一般の」方々です。こうしたことを背景に、「あなたのくらしにアートをプラス」というコンセプトで、自ら絵を描いてアートを楽しむ「DO ART」、美しいと感じるものを飾って楽しむ「ART STYLE」の2本立てで展開中です。絵を描く描かないに関わらず、アートを提供する対象を全て顧客と定義すること。これをベースにしたKAWACHIブランドの象徴としての心斎橋店オープンなのです。実験店舗として挑戦の場であると同時に、お客様に「また行きたい」「ずっと居たい」と感じてもらえる空間が理想。また、アーティストの作品展示スペースを設け、「見せる打ち合わせスペース」も活用し、新たに「アートマッチ」という名前で展開します。アート心に火をつける本来のマッチの意味と、アーティストとつなげるマッチングをかけた造語です。 そもそも新店舗オープンのきっかけは、KAWACHIブランドが揺らいでいるという危機感でした。心斎橋筋商店街の本店クローズの影響か、KAWACHIを知らないという若いアーティストにショックを受け、実店舗でのブランディング強化に出ました。2018年9月に、「作る・造る・創る」をテーマに「大OSAKA画材まつり2018」を開催したのも、同じく危機感からの行動だったのです。東京や京都と比べてまだまだ十分でない大阪でアートを盛り上げ、最終的に大阪のアートカルチャーのレベルを上げていくのも狙い。アートというのは、なくても生きていけるものですが、心の豊かさの指標でもあり、潜在需要は大きいはずです。 今回の河内社長のお話を通じて、大阪の地で創業し3代にわたって愛され続けているKAWACHIブランドが、いずれ、大阪を「アーティストが食べていける街」に育てるムーブメントの象徴になる日がやってくるという予感がしました。同時に、「ふつうの人」が、アートイベントに気軽に参加し、体感し、日常的にアートに親しむことのできる仕掛けを担う企業としての未来に期待します。だれもがアートを通じてSNS等で文化的な情報発信を行い、拡散し、多くの人々を巻き込む形で円を描きながら拡大していく世界がそこにあるはずです。それはやがて、アートの可能性を無限大に広げ、成熟した文化として根付いていくことでしょう。(株式会社フジプラス)まとめ1河内卓也(かわち たくや) 株式会社カワチ 代表取締役社長 23KAWACHIブランドを象徴する心斎橋店イメージ(パース) 4KAWACHI ロゴ 52018年開催のイベント 「大OSAKA画材まつり」会場に設置された顔ハメアートパネル 6アートマッチ ロゴ124563株式会社カワチについての詳細は、こちらでご覧いただけます。http://www.kawachigazai.co.jp/■ 創業の地心斎橋の新店舗発信で、改めて KAWACHIとしてのブランディング戦略 スタート!■ 「アートマッチ」による「食べていけるアーティスト」育成と、楽しめる趣味のアートの両輪が重要。■ 「大大阪」時代から続く老舗洋画材店から、アートカルチャーを創造する企業へと進化中。3Idea4U vol.452019 May

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