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2Idea4U vol.282016 July 「命を支える食と農」という視点に立って、消費者と生産者、人と自然を丁寧につなぎ、理想の関係を紡ぎ続けるファームアンドカンパニー株式会社。「有機農家のエンパワーメント」「つながりと感動のある食卓の提供」というミッションを掲げ、地域密着型で兵庫県の食材に特化した取り組みを続ける、若き経営者の熱い思いがあふれる新スタイルの企業です。人間が生きていくうえで欠かせない「食」の大切さを、改めて見直す機運が高まる中、単なるトレンドセッター的アプローチではなく、大きな社会的なムーブメントにつながるビジネス視点がそこにあります。 今のビジネスのきっかけは、光岡氏が大学生の頃にまで遡ります。当時、難民など地球規模での社会問題に興味があり、自分自身の将来についても思い悩む中、大学3年生で休学して海外へ。メキシコのファストフード店で、ストリートチルドレンが物乞いをする姿に不条理を感じたのが、「自分のためじゃなく何かに役立つ仕事がしたい!」と思った瞬間でした。もうひとつは、休学期間にアルバイトを経験した何社かのベンチャー企業で、「企業家の方々が、意志と意欲をもって信じた道を進む姿がまぶしかった記憶」に影響を受けます。大学卒業後にいったん東京で就職するものの、いろんな思いがつながって有機農業という発想にたどり着き、学生時代を過ごした関西に戻ったのが2003年。一からの立ち上げに際し、何よりも大きかったのは生産者との出会いです。25歳で有機野菜に関わる仕事を始めたときに、“お金も畑もノウハウも納屋も機会もハウスもない”という一番ハードルの高い就農のスタイルで新規就農された同年代の方々の真摯な姿に励まされます。生産者との縁で、野菜のおいしさや、自然の中で生命の源が満たされていく感動に支えられてのスタートでした。 光岡氏が代表をつとめるファームアンドカンパニー株式会社の前身は、兵庫県有機農業生産出荷組合。兵庫県で有機農業を営む40軒の農家で、生産出荷組合を作ろうと2009年に立ち上がったものです。現在株主60名の3分の1が生産者、兵庫県の有機農業を応援する個人の方からの出資も受けました。 事業の中心にあるのは、西宮北口の「野菜ビストロレギューム」というレストランです。また、神戸市東灘区にあるオーガニック食品販売兼カフェである「愛農人」では、マルシェを開催したり、もともと個人向けだった畑の体験ツアーを企業向け研修や福利厚生的なものにアレンジして展開しています。他に、「デリステール」のブランド名での調味料などの販売も。2015年7月から「兵庫 食べる通信」という食材付きの情報誌もスタート。 消費者が、生産者のファン、さらにはサポーターとなることを目的に、出会いの場を提供しています。都会に住んでいると、「食」があまりに分業化され生産者との接点がなくなってしまい、これが「食」と一次産業の大きな問題点となっています。一足飛びにサポーターになるのは難しいので、まずは、年間で延べ約3万人の来店がある「野菜ビストロレギューム」を、兵庫県の食材の魅力を知るきっかけの場としてとらえているわけです。視点を変えると、ここは消費者にとって入口であると同時に、生産者にとっては食材の売り先、つまり出口として位置付けています。会社として、生産者も株主であることは先に述べた通りですが、3名の役員のうち1名は生産者。生産者のことをよく理解した上で、だれにとってもメリットがある魅力的なレストラン運営の仕組みを構築しました。 ファームアンドカンパニーでは、様々な事業をやっているように見えて、実は顧客から、サポーターになってもらうため、ちょっとずつのステップで進んでいけるよう、階段を作っているのです。レストランの次のステップは、「愛農人」という店でのマルシェ。マルシェの魅力は、生産者と出会う体験、生産者から直接買う体験です。さらにもう1段階進むと、「兵庫食べる通信」で、作り手の思いや素材を知ること、さらにその次の段階が生産者の畑を訪ねるツアーです。生産者に会い、実「食卓」と「生産者」をつなぐ新たなビジネススタイルレストラン野菜ビストロレギューム兵庫食べる通信生産者の畑を訪ねるマルシェ1 2 3 4 サポーター顧 客「食」を入口に農業へと関心を促す仕掛けづくり人生を模索していた学生時代の経験が心に火をつけた兵庫県の食材に特化!「おいしい」から始まる新展開

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