idea4u_vol22
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3Idea4U vol.222015 July買いたくなるポイントを探る種類が沢山あればある程迷ってしまうと言っても過言ではないだろう。今のままだと価格以外に決め手がないのである。 このように沢山の種類がある商品については、商品ごとの特徴(それぞれどのように違うのか)や、こんなふうに食べると美味しい、この料理にはこの商品がおすすめという、もう少し突っ込んだ情報や提案が欲しいのである。このような情報こそが歓迎される情報であり、消費者は待っているのである。 このように売り手側が出したい伝えたい情報と、買い手側が知りたい受け取りたい情報には、まだまだ大きな隔たりがあるようだ。 お店の店頭はもちろん、商品自体(パッケージ)にも多くの情報が盛り込まれている。メーカー側はその商品に込めたこだわりを伝えるため、より多くの情報をパッケージに載せようとする。「こんなこだわりの製法で作っています」「新しく開発した、こんな製法で作っています」「この材料で作っているのはウチだけです」と言った具合である。しかしここでもメーカー側が伝えたいことが消費者にきちんと伝わっていないことが少なくない。 例えば、とある漬物を見てみよう。これは「手作りべったら漬け」という商品であるが、パッケージの目立つところに『全糖』という文字が書かれていた。『全糖』とは、原材料にステビアや天草、サッカリン等の人工甘味料を使わず、白砂糖100%使用ということ、上質な材料を使っているということである。しかし、多くの消費者はその意味が分からず、「砂糖をとても沢山使っているのかと思った」「とても甘そうだと感じたけれど、食べてみたらそうでもなかった」との声が寄せられたのだ。 スーパーに流通する一般的な漬物の多くは、砂糖と他の甘味料との併用が今も主流であり、「全糖」といえば、漬物業界では最高の材料を使っているという意味なのに、残念ながら一般の消費者には全く伝わっていなかった例である。 このような例は決して少なくない。例えば焼海苔。この焼海苔は非常に味がよく、売れ筋商品のひとつでもある。まずパッケージを見てみると、「酸処理をしていません」との文字が。しかし消費者の多くは、大きく書いてあるにもかかわらず、この「酸処理」の意味がわからない。海苔の作り手の人にじっくりと話を聞いてみると、「酸処理」とは海苔の病気を防ぐために海苔網を酸性の液に浸し、その後、海に戻す作業のことで、「酸処理」を施すと色・ツヤなど見た目はよくなるけれども、本来海苔が持つ香りや味は損なわれてしまうこともあるそうだ。また、酸性の液を使うことで海水の汚染に繋がることも容易に考えられる。 しかし実際の店頭では、このようにじっくりと作り手から話を聞くことは出来ないので、「酸処理」と表示されていてもピンとこないのである。「酸処理」とは一体なんだろう? という疑問を抱えたまま、何となく商品を選んでしまうことになるのだ。これでは商品の本当の価値を知るチャンスが訪れない。しかし、こういう情報こそが消費者にきちんと伝えるべき情報であり、消費者が商品の本当の価値をきちんと知るチャンスなのである。 このように作り手や売り手が伝えたい情報を消費者に正しく伝えるためには、受け手の立場になって情報を見つめ直すことが重要となってくる。例えば言葉を選ぶ際にも業界特有の言葉や専門用語はなるべく使わない等、いわゆる情報の「翻訳」作業が必要なのだ。いいものを作れば必ず売れるというのは大間違い、商品の持つ、真の価値を伝えるためには、中身よりもむしろPOPや表示ラベルが重要なこともある。消費者にとっては、それらも含めて全てが商品であることを忘れてはならない。 (編集部)まとめ■売場のPOPに書かれた「今、話題の○○」 「健康によい!」などの安易なメッセージ は本当に売り上げ増加に役立つのか。■消費者は商品の特徴、食材のおいしい食 べ方、使い方などの詳しい情報を求めて いる。■商品の材料や製造方法をアピールするに も、それについて消費者が知らないと意 味がない。売り場に様々な種類が並んでいるタマゴ。だが、どれが良いのか消費者にはわかりにくい。結局は、値段で決めてしまっているのが現状だ。良さが伝わらなければ良い商品も意味がない

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