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6Idea4U vol.202015 March 個客識別マーケティングは、顧客を識別し、割引等の優先的なサービスによって彼らを固定客化すると同時に、その割合を高めるマーケティングである。 そのためにはポイントカードなどで顧客の購買動向を知る必要がある。これによって、購入額、来店頻度、顧客別粗利率、同一世帯売上などの情報が得られる。 では、この情報を効果的に活用するためにはどのような顧客管理をすればよいのだろうか。 顧客管理の最も単純な方法は、1週間の購入額に応じて顧客を分類することである。たとえば、プラチナ:週5000円以上購入する顧客ゴールド:週2000円以上5000円未満の 顧客シルバー:週2000円未満の顧客ブロンズ:新規顧客 と、いうように4つのセグメントに分けることができる。 年齢・性別・年収などのデモグラフィック(人口統計学的属性)要素に基づく分類は、小売業の顧客分類の主要な基準としてそぐわない。なぜなら、顧客が多様化し、同じ属性でも購入額が様々で、収益性との相関関係が低いからである。たとえば、高齢者の購入額と収益性を見ると、非常に高いところから非常に低いところまで幅広く分布していて、一貫性がない。 このような顧客カテゴリーをつかったマネージメントを実行するためには、組織の管理体制を、顧客カテゴリーを中心に編成することが必要になる。 従来行われてきた商品カテゴリー・マネージメントは既存の商品別の部門構成を細分化したものである。だが、顧客カテゴリー・マネージメントは、すべての商品にまたがって行われる。顧客がどの部門の商品を買ったかではなく、顧客そのものに注目する。つまり、経営の主眼を商品の供給サイドから需要サイドへ移すのである。 その測定指標として、顧客移動レポートが役に立つ。これは、新規顧客がどのカテゴリーに入って来たか、カテゴリー間の顧客の移動、どのカテゴリーから顧客が流出したかを記録するものだ。顧客の動きを把握することは、顧客の購買動向を監視し、それに影響を与えたいと考えるならば特に必要である。 では、具体的に何をすべきか。 企業の最大の関心事は、収益性が高くて購入額の多い顧客を増やすことである。したがって、ゴールド顧客はプラチナに、シルバー顧客はゴールドに、上の段階のカテゴリーに押し上げることが必要である。 一方、プラチナ顧客はいかに長く維持するかが重要だ。 ブロンズ顧客については、収益性の高い固定客を上位3つのカテゴリーへ移行させることが必要だ。新規カードメンバーの数が重要ではなく、そのうちの黒字顧客の数がポイントである。 それらのために、各顧客カテゴリーに責任を持つ、顧客カテゴリー・マネージャーを置くことも一つの方法だろう。 顧客カテゴリー・マネージメントは、各カテゴリーの顧客の行動と収益プロフィールがつかめるため、顧客の行動を目標達成につながる方向に誘導できるような特典の組み合わせを継続的に投入できる。売り場レイアウト変更にも役立つ さらに、顧客カテゴリー・マネージメントによって誰がこの商品を買っているかわかるため、商品の優先順位の設定も、商品の品ぞろえや棚割りも容易に決められる。 たとえば、あるスーパーで売場レイアウトの見直しをする場合、キャンディの棚が1m20cmあった。確かにキャンディの売上は好調だが、このスペースで適切だろうか。そこで、顧客カテゴリー別のキャンディの売り上げ動向を確かめてみたところ、店の売上全体の75%を占める上位30%の優良顧客は、特にキャンディをたくさん買っているわけではないことがわかった。キャンディをよく買う顧客は、中間の顧客カテゴリーから多くなる。その分析結果から、キャンディの棚のスペースを半分にして、その分を優良顧客がよく買っているベビー用品に充てた。このレイアウト変更の後、キャンディとベビー用品のどちらの商品カテゴリーも売り上げが増加した。 顧客カテゴリー・マーケティングは商品管理に置き換わるものではなく、商品管理と統合されるべきものである。カテゴリーからの流出を防止 顧客カテゴリー・マネージメントを効果的に行うためには、日常のオペレーションにも組み入れられる必要がある。 ある小売業では、店の各売り場マネージャーに、担当売場の新規顧客の獲得と顧客流出の責任を持たせている。データベースマーケティングの基本個客識別マーケティングの重要ポイント【第4回】 顧客カテゴリーで顧客情報を活用購入金額で分類することで顧客情報の活用が始まる顧客カテゴリーを利用して売上を増やす

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