idea4U_vol15
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2Idea4U vol.152014 MAY データ分析には「神話」の様なものがある。データを掘り下げれば全ての問題が解決すると信じられている点だ。だがこれは全くの誤解である。問題の真の要因が、数字化されないところに存在することもあるからだ。 そこで、今回は、定量調査の代表格であるデータ分析とその他の定性情報を組み合わせることでメニュー改善や新たな企画の開発を成し遂げ、開店後3年間黒字経営を続ける農園レストランの事例を紹介する。   農園レストランSは東日本の某県県庁所在地駅から車で15分程住宅街に入った場所にある。農業経営コンサル会社の一部門として2010年にオープンした。 一昨年夏、社長のA氏からPOSデータ分析の依頼があった。背景には、好調なランチタイム時と比べ、ディナー時の売上が芳しくないことから、ディナーメニュー戦略を再構築したいという社長の考えがあった。またそれまで売上データ分析を全く実施したことがなかった故、実際にどこがどの様に問題なのか、今まで数字で掴めていなかったことも理由の1つだとA社長は述べた。そこでレストランSの17ヶ月分のPOSデータを預かり分析に取りかかった。売上減少の要因は何か まず、店全体の売上高の月別推移を出力した。さらにランチとディナーの売上を夫々表示してみると、店全体の売上は12月に最も高く、次いで7月となっている。この傾向は、ランチではなくディナーの売上増によってもたらされていることがわかった。言うまでもなく12月は忘年会やクリスマス、7月は暑気払いの需要を取り込んだ結果といえる。 前年同月比較でみても、ランチは全て前年実績をクリアした一方、ディナーは比較可能な5ヶ月間のうち、2,4,5月に前年割れをしていた。前年に東日本大震災があったにもかかわらず、である。A社長の話の通りであった。 ディナーにはコース、単品、パーティ(団体貸切)と3つのカテゴリがあり、うちコースは、17ヶ月平均でディナー売上全体の約55%を占めていたが、月を追うごとにその構成比は低下、売上も減少傾向だった。単品は微増、パーティは増加傾向にあった。パーティの売上がディナー全体の売上減少に若干歯止めをかけていた。(注:パーティは2011年9月より導入されたため、移動年計は算出できず。) さらに、最も減少幅が大きいコースメニューの実績を深堀りしてみたところ、3種類のコースのうち、一番手頃な「2,800円コース」の注文数が大きく減少。「コースC(シェフのおかませ)」は月により注文数に大きな変動があると判明した。(図1) ディナータイムの売上減少の要因は、コース料理、特に一番安価な2,800円の注文数減少であり、より高いコースも月により変動が大きく、顧客に支持されていない現状が判明してきた。 一方、平日と週末では客層が異なるためそれぞれ分けて売上を比較したところ、平日のコース売上の減少幅の方が週末にくらべ大きい結果が出た。(図2) これまでの分析で、特に平日ディナーのテコ入れは、必須であることが判明してきた。客単価向上に貢献するメニュー 一方でディナー時の単品メニューに改善の余地はないか、と「バーニャカウダ」と「農園サラダ」の2つの人気メニューをキーに、バスケット分析を試みた。 すると、バーニャカウダは、メインディッシュよりも、サイドディッシュやご飯もの、デザートと一緒に注文される一方(図3)、農園サラダは、メイン、サイド、ご飯もの、デザートと、より幅広い単品メニューと共にオーダーされる傾向があるとわかった(図4)。つまり、農園サラダの方がより客単価の向上に貢献するメニューだったのである。これは、バーニャカウダの量がかなり多いため、女性客の場合、食べるとあとはご飯ものを連れとシェアするか又は商売繁盛の秘訣図1ディナー コース別売上点数対前年同月 増減率比較図2 ディナー 平日vs週末 コースvs単品   2012年1-5月移動年計 営業日数調整有売上データ分析からテコ入れ先を割り出すデータ分析でメニュー改善と新企画開発に成功!黒字経営を続ける農園レストランの事例

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